イヌ
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嗅覚は鼻腔の嗅上皮(英語版)にある嗅覚受容神経(嗅覚細胞)によって感受されるが、ヒトの嗅上皮が3 - 4cm2なのに対し、イヌの嗅上皮は犬種によって異なるが15 - 150cm2である[13]。また、嗅覚受容体遺伝子は、ヒトで396個、イヌで811個であり嗅覚受容体の種類の豊富さにより匂いを感じ取るレパートリーが人間より広い[13]

嗅上皮の粘膜を覆う粘液層中に分布する、「嗅毛」と呼ばれる線毛は、においを感覚受容器に導く働きをするが、イヌの嗅毛は他の動物のそれより本数が多く、長い。嗅細胞の層も、ヒトでは1層であるのに対して、イヌでは数層になっており、ヒトの500万個に対し、2億5千万から30億個あると推定されている。鼻腔の血管系もよく発達している。ヒトが顔や声について特別な記憶力をもつように、イヌは匂いについての優れた記憶力を持ち、久しぶりに会うヒトやイヌなどの個体識別ができる。イヌを含む動物群の鼻先のいつも湿っている無毛の部分を「鼻鏡」と呼ぶが、これもイヌのすぐれた嗅覚を保つのと同時に風の向きを探る働きをすると考えられる。

イヌが嗅覚に優れていることは事実であるが、イヌ同様に探索目的での使役が多いブタイノシシ類)も引けを取らないと考えられているし、クマの研究者によればクマ類の嗅覚はイヌ(イエイヌ)の約7倍とされている。ゾウは嗅覚細胞の総量から言っても、能力においてイヌやクマを遥かに上回る動物として知られている。なお、魚類ではウナギの嗅覚がイヌの嗅覚に匹敵するとされる[14]

一方、イヌの嗅覚は人間の抱えるストレスを人間の汗や息の中に含まれる物質の変化から嗅ぎ分けることが可能である事実が、英国クイーンズ大学ベルファスト校ニューカッスル大学の研究者たちの調査と研究で明らかにされている。この新研究の発表はオンライン科学雑誌『プロスワン』に掲載されている[15]
熱感知

2020年の研究で、犬の鼻に熱源を感知する能力が発見された[16][17]。哺乳類としては、吸血蝙蝠として知られるナミチスイコウモリに次いで二例目となる[18]
聴覚

イヌは聴覚も比較的鋭い。また可聴周波数は40から47,000Hzと、ヒトの20から20,000Hzに比べて高音域で広い。超音波を発する笛である犬笛(約30,000Hz)はこの性質を利用したもの。聴力において、犬種による違いはほとんど見られない。ただし人間同様に加齢によって聴力が衰える事は一緒である。
視覚犬の眼球

優れた動体視力を持っており、1秒間に30フレームを表示するテレビ画像などはコマ送りにしか見えない。たとえばフリスビーなどを跳び上がってキャッチできるのは、四肢の運動能力と動体視力ゆえである。一方、イヌの眼には赤色に反応する錐体細胞の数が非常に少ないといわれ、明るいときには赤色はほとんど見えていない可能性が高い。色の明暗は認識できるが、全色盲に近いと考えられている。交通信号機だけは識別できるとされていたが、実はこれも灯火の点灯順序と人間の動きを関連づけて学習していたに過ぎない事が確認されている。ネコやキツネの瞳孔が縦長であるのに対し、イヌの瞳孔は収縮しても丸いままである。人間には存在しない神経回路として、視覚野と嗅覚葉を直接つなぐ回路が発見されている[19]

眼底には輝板(タペタム層)があり、入射した光と眼底で反射した光を受け取れることから暗所では人間より物が見えやすい[20]

1909年の研究結果から近視とされていたが、その後の研究からほとんどの犬は正視から、やや遠視だという研究結果が優勢である。しかし、その一方、ジャーマンシェパード、ロットワイラー、ミニチュアシュナウツァーは近視が多いという研究もある[21]

視野は、人間では両目で約200°とされるのに対して、中頭種の犬では視野は240‐250°で、視角で狩りを行うサイトハウンドのような顔や鼻の長い長頭種はより広い視野角を持ち、パグのような短頭種は人間に近い視野であると推測されている[21]
味覚・舌

味覚として、甘味・酸味・塩味・苦味を知覚するが、味蕾は人の約1万個に対して、1700‐2000個程度で味には鈍感とされている[22]。その一方、水のイオン濃度は感じ取れ、獲物から摂取した塩味を調整するために水を飲み調整する必要から発達したと考えられる[23]

同じ食肉目のイエネコと違い砂糖などの「甘味」を感じることが出来る。サツマイモなどの甘味のあるものを好み、人工甘味料のような苦味を伴うものは毒と判断して苦手とする。


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