イチョウ
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

中国でも10世紀以前に記録はなく[29]、古い記録としては、欧陽脩が『欧陽文忠公集』(1054年)に書き記した珍しい果実のエピソードが確実性の高いものとして知られる[15][29][84]。それに先立ち、現在の中国安徽省宣城市付近に自生していたものが、11世紀初めに当時の北宋王朝の都があった開封に植栽されたという李和文による記録があり、中国でイチョウが広くみられるようになったのは、それ以降であるという説が有力である[84]。中国の安徽省および浙江省には野生状のものがあり、他の針葉樹・広葉樹と混生して森林を作っている[7]

その後、仏教寺院などに盛んに植えられ、日本にも薬種などとして伝来したとみられるが、年代には古墳飛鳥時代説、奈良平安時代説、鎌倉時代説、室町時代説など諸説あるものの、憶測や風説でしかないものも混じっている[15][28]六国史平安時代の王朝文学にも記載がなく、鶴岡八幡宮の大銀杏(「隠れイチョウ」)を根拠とする説も根拠性には乏しいため、1200年代までにはイチョウは日本に伝来していなかったと考えられている[28][29]。行誉により1445年頃に書かれた問答式の辞書『?嚢鈔』には深根輔仁『本草和名』(914年)にも記述がないとある[29]

1323年至治3年)に当時の寧波から日本の博多への航行中に沈没した貿易船[註 16]の海底遺物のなかからイチョウが発見されている[15][29][84]1370年頃に成立したとみられる『異制庭訓往来』が文字資料としては最古と考えられる[29][84]。そのため、1300年代に貿易船により輸入品としてギンナンが伝来したと考えられる[29]南北朝時代近衛道嗣の日記『愚管記』(1381年)には銀杏の木について[84]、室町時代の国語辞書『下学集』(1444年)にも樹木として記載がある[29]。また、15世紀の『新撰類聚往来』[86] には、果実・種子としての銀杏(イチャウ)が記載されている。室町中期にはイチョウの木はかなり一般化し、1500年代には種子としても樹木としても人々の日常生活に深く入り込んでいったと考えられる[29]

幹周 8 m 以上の巨樹イチョウの日本列島における分布は、東日本89本(雄株81・雌株8)、中部日本21本(雄株15・雌株6)、西日本50本(雄株24・雌株26)となっている[87]

ヨーロッパには1692年、ケンペルが長崎から持ち帰った種子から始まり、オランダのユトレヒトやイギリスのキュー植物園で栽培され、開花したという[88]1730年ごろには生樹がヨーロッパに導入され[89]18世紀にはドイツをはじめヨーロッパ各地での植栽が進み、1815年にはゲーテが『銀杏の葉 (Gingo biloba)』と名付けた恋愛詩を記している[35]
利用
木材イチョウの年輪

木材としての知名度は低い[12]。組織は針葉樹のものと似ている[12]。材は黄白色で、心材と辺材の色の差はほとんどない[7][12]。早材と晩材の差が少ないため、年輪ははっきりとせず広葉樹材のようであり、材は緻密で均一、柔らかいため加工性に優れる[12][77]。肌目は精で、木理は通直で、反曲折裂および収縮が少なく、歪みが出にくい良材である[7][12][77]。木材の中に異形細胞をもち、その中に金平糖型のシュウ酸カルシウムを含む[12]。気乾比重は0.55で、やや軽軟で、耐久性は低い[12]。器具・建具・家具・彫刻[7][12][77]、カウンターの天板・構造材・造作材・水廻りなど広範に利用されており、碁盤将棋盤にも適材とされる[9][12]。ただし、カヤに比べ音が良くないため評価は低い[12]。その他、古くは鶏屋のまな板に好まれた[12]。用材はほかに和服の裁ち板としても使われる[14]
植栽イチョウの盆栽

土地を選ばず生育し、萌芽力がさかんで、病虫害が少なく、強い剪定にも耐えるため、庭園樹、公園樹、街路樹、防風樹、防火樹などとして植栽される[77]。日本では庭園や公園に植栽されたり[67]、寺社の境内にも多く植えられる[7][9] が、大規模な造林地になっているものはない[12]。古い社寺の境内には樹齢数百年を経たと称される「大銀杏」が多くみられる[68]。外国の植物園でもよく見られる[7]盆栽にも利用される[9][74][77]。盆栽は実生または挿し木によって作られる[74]チチイチョウはよく盆栽につくられる[74]。高木になるため庭木としての利用は少ないが、成長が遅いチチイチョウは庭木としても用いられる[14]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:356 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef