イチョウ
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この外表皮を塗ると黒子が取れるとする薬効が『昭興本草』(1159年)にある[29]。また銀杏にはアナカルド酸が含まれ、Nostoc 属シアノバクテリアの糸状体に対して強力な殺菌活性を有しながらも、毒性を示さない極低濃度では明瞭なホルモゴニア分化誘導活性を示す[129]

仁を銀杏として食すイチョウの種子

素揚げされた銀杏

松茸ご飯に入った銀杏

銀杏とココナッツを甘く煮た中国のデザート

毒性

イチョウの種子は皮膚炎及び食中毒を起こすことが知られている。1379年の『種樹書』にはすでに銀杏に毒性のあることが記載されている[11]。銀杏中毒になる危険性があるため、日本では「歳の数以上は食べてはいけない」という言い伝えがある[114]
皮膚炎

種皮の外表皮には乳白色の乳液があり、それにはアレルギー性皮膚炎を誘発するギンコールやビロボールといったギンコール酸(ギンゴール酸)と呼ばれるアルキルフェノール類の脱炭酸化合物を含んでいる[44][110]。これはウルシウルシオールと類似し、かぶれなどの皮膚炎を引き起こす[127]。イチョウの乾葉は、シミなどに対する防虫剤として用いられる[77]。これは、ギンコール・ギンコール酸が葉にも含まれているからである[110]
食中毒(銀杏中毒[114]

食用とする種子にはビタミンB6の類縁体4'-O-メチルピリドキシン (4'-O-methylpyridoxine, MPN) が含まれている[127][130][131] が、これはビタミンB6に拮抗して(抗ビタミンB6作用)ビタミンB6欠乏となりGABAの生合成を阻害し、まれに痙攣などを引き起こす[127]。銀杏の大量摂取により中毒を発症するのは小児に多く、成人では少ない[114]。大人の場合かなりの数を摂取しなければ問題はないが、1日5?6粒程度でも中毒になることがあり、特に報告数の70%程度が5歳未満の小児である[132]。小児では7個以上、大人では40個以上の摂取で発症するとされる[114]

太平洋戦争前後などの食糧難の時代に中毒報告が多く、大量に摂取したために死に至った例もある[114]。1960年代以降銀杏中毒は減少に転じ、1970年代以降死亡例はない[114]。上記の通りビタミンB6欠乏により中毒が起こるため、食糧事情の改善に伴う栄養状態の改善により減少したと考えられている[114]

症状は主に下痢嘔気嘔吐等の消化器症状および縮瞳眩暈痙攣振戦等の中枢神経症状で、加えて不整脈発熱、呼吸促拍等の症状も報告されている[114]
イチョウ葉の薬理効果ドイツではイチョウの成分が医薬品と認められているギンコライドの構造式

イチョウ葉にはフラボノイドテルペノイド、アルキルフェノール類が含まれる[110]

主要なフラボノイド成分はビフラボン、フラボノールフラボンであり、このうちイチョウ葉エキスのビフラボン含有量は僅かである[110]。ビフラボンはアメントフラボン、アメントフラボンの誘導体であるビロベチン、ギンクゲチン、イソギンクゲチン、シアドビチシン、5'-メトキシビロベチンが含まれている[110]。フラボノール及びフラボノール配糖体は約20種が含まれており、主要なアグリコンケンフェロールケルセチンイソラムネチンミリセチンなどで、配糖体の糖部に多いのはグルコースラムノースルチノースなどである[110]。また、2種類のプロアントシアニジンも報告されており、イチョウ葉エキスには約7%含まれている[110]

テルペノイドにはともにイチョウに特有な物質であるギンコライドおよびビロバライドがあり、イチョウ葉エキス中には前者2.9%、後者3.1%が含まれている[110]。ギンコライドはtert-ブチル基を持ち、6個の5員環からなる「籠型構造」を有するジテルペンである[110]。これまでにギンコライドA、ギンコライドB、ギンコライドC、ギンコライドJ、ギンコライドMの5種類が見つかっている[110]。ただしこのうちギンコライドMは根皮のみから見つかっている[110]。ビロバライドもtert-ブチル基を持つが、4個の5員環を持つセスキテルペンである[110]

アルキルフェノール類であるギンコール酸は葉にも含まれる[110]。ギンコール酸はヒトの癌細胞に対する増殖抑制作用が知られている[110]
生理作用

イチョウ葉エキスの生理作用は主に抗酸化作用と血液凝固抑制作用、神経保護作用、抗炎症作用であり、その他、血液循環改善作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用の報告もある[110][133]

イチョウ葉エキス中のフラボノイド類には、脂質過酸化、血小板凝集、炎症反応などに関係する活性酸素フリーラジカルの消去作用、血小板凝集の阻害効果、炎症細胞からの活性酸素産生の抑制作用が認められる[133]。イチョウ葉エキスEGb761はヒドロキシラジカルペルオキシラジカルスーパーオキシドラジカルに対して消去作用を示すことが知られている[110]

また、イチョウ葉エキスの中のギンコライドBは特異的な血小板活性化因子の阻害物質ということが確認され、脳梗塞動脈硬化の予防の効果が期待されている[133]
有効性

中国では古くから薬用に用いられていたが、イチョウ葉エキスが現代医学において効果があると示されたのは1960年代、ドイツの製薬会社で開発されたイチョウ葉エキスが脳や末梢の血流改善に使用されたことに端を発する[110]


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