イチョウ
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イチョウの種子は、銀杏(ぎんなん)といい、硬い種皮の内表皮(殻)の中に含まれる胚乳(さね、核、仁)が食用となる[5][7][20]。実と説明されることもある[6] が、果実ではない[113]。これを食用とするのは日本や中国など、東アジアにおける習慣である[114]。これは中国の本草学図書である『紹興本草』(1159年)にも記載される[11]。薬用(漢方)として利用されていたことが、代の?廷賢が1581年に著した『萬病回春』に記されている[11]。鎮咳作用があるとされる[52][115]

仁は直径1 cm程度の紡錘形[9] で、新鮮な状態では光合成色素クロロフィルの存在により緑色を呈するが、収穫後は殻付きで保存しても常温に置くと短期間のうちに黄色に褪色化する[116]。加熱により半透明の鮮やかな緑色になるが[117]、加熱を続けると微酸性である死んだ細胞の内容物との作用でクロロフィルのマグネシウムがはずれ、黄褐色のフェオフィチンとなる[116]

食材としてのの時期は秋(9?11月)で、雌株の下に落ちているイチョウの実(正確には種子)を拾ったら、周囲の外種皮部分を取り除き、よく洗って乾燥させる[118]。旬に先走って収穫される「走り」のぎんなんは、翡翠に似た鮮やかな緑色を呈し、やわらかく匂いも少ないことから通常の時期に収穫されるものより高級とされる[119][120]茶碗蒸しおこわなどの具に使われたり[11]、煮物や鍋物、揚げ物炒め物など広汎な料理に用いられ[121]としても用いられる[117][122]。和食料理のあしらいとして欠かせない食材で、殻は割り、渋皮は弱火で炒るか、ゆでるときれいにむける[117]。韓国では、露店でも炒った銀杏を販売している。加工品としては砂糖漬やオリーブ油漬、水煮などの瓶詰や缶詰が売られている[121]。ただし、独特の苦味[121] および種皮の外表皮には悪臭[9][14] がある。秋の食材だが、加熱して真空パック詰めにした商品は年中手に入る。銀杏を保存するときは殻付きのままビンや袋に入れて、冷蔵しておけば数か月は保存できる[118]

栄養素としてデンプンが豊富に含まれ[121]、モチモチとした食感と独特の歯ごたえがある。ほかにもレシチンやエルゴステリン、パントテン酸カリウムカロテンビタミンCビタミンB1も含有している[121][123][118]。銀杏の食用部分にはメチルピリドキシンという成分が含まれていて、大量に食べると、まれに食中毒による痙攣を引き起こすこともある[118]。このため、銀杏を食べ過ぎないことと、5歳以下の幼児には食べさせないように注意喚起されている[118]

銀杏は古くはの凶作時の備蓄食糧に使われたといわれており、今日では日本全土で生産されているが、特に愛知県稲沢市(旧:中島郡祖父江町)は銀杏の生産量日本一である[123][124]。ぎんなん採取を目的としたイチョウの栽培は1841年天保11年)、祖父江町に富田栄左衛門がのちの「久寿(久治)」となるイチョウ苗を植えたことに始まるとされる[123][125]。愛知県ではぎんなん収穫用に畑で低く仕立てられ、栽培される[14]。佐賀県でも嬉野市塩田町ウンシュウミカンからの転作としてよく栽培される[115]。ぎんなんの収穫・流通を目的とした栽培品種があり、大粒晩生の「藤九郎」、大粒中生の「久寿(久治)」(くじゅ)、大粒早生の「喜平」、中粒早生の「金兵衛」(きんべえ)、中粒中生の「栄神」などが主なものとして挙げられる[125][118]。「藤九郎」は岐阜県瑞穂市(旧穂積町)、「久寿(久治)」「金兵衛」「栄神(栄信)」は愛知県稲沢市(旧祖父江町)、「長瀬」は愛知県海部郡発祥の品種である[126]

イチョウの種子が熟すと肉質化した種皮の外表皮が異臭を放ち[127]、素手で直接触れるとかぶれやすい[118]。異臭の主成分は下記の皮膚炎の原因となるギンコール酸である[127]。異臭によりニホンザルネズミなどの動物は食べようとしないが、アライグマは食べると言われている[128]。この外表皮を塗ると黒子が取れるとする薬効が『昭興本草』(1159年)にある[29]。また銀杏にはアナカルド酸が含まれ、Nostoc 属シアノバクテリアの糸状体に対して強力な殺菌活性を有しながらも、毒性を示さない極低濃度では明瞭なホルモゴニア分化誘導活性を示す[129]

仁を銀杏として食すイチョウの種子

素揚げされた銀杏

松茸ご飯に入った銀杏

銀杏とココナッツを甘く煮た中国のデザート

毒性

イチョウの種子は皮膚炎及び食中毒を起こすことが知られている。1379年の『種樹書』にはすでに銀杏に毒性のあることが記載されている[11]。銀杏中毒になる危険性があるため、日本では「歳の数以上は食べてはいけない」という言い伝えがある[114]
皮膚炎

種皮の外表皮には乳白色の乳液があり、それにはアレルギー性皮膚炎を誘発するギンコールやビロボールといったギンコール酸(ギンゴール酸)と呼ばれるアルキルフェノール類の脱炭酸化合物を含んでいる[44][110]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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