こうした点からイタリア系アメリカ人たちはそれまで民族自決に貢献してきた人々という好意的イメージから、貧しく無学な移民集団という固定観念で見られるようになった。イタリア系と同じく後発移民でありながらグレートブリテン連合王国出身で英語の技能に長けており、軍人・警官・消防士などの下級公務員で栄達を目指したアイルランド系とも格差が付いてしまっていた。それでも移民1世の中に肉体労働から脱して理髪店や料理店、小売店など小規模な自営業を営んで身を立てる者達も現れたが、今度は移民斡旋や商業の仲介で暗躍していたイタリア系マフィアがみかじめ料の徴収などで力を伸ばした事で、「マフィアの集団」という別の悪感情で見られてしまう事態に陥った。
1891年3月14日にはイタリア系アメリカ人がニューオーリンズの警察署長であるデヴィッド・ヘネシー殺害に関与したマフィアという嫌疑をかけられ、11人がリンチを受けて殺害された(1891年3月14日のリンチ事件)。
映画「ゴッド・ファーザー」には、イタリア系アメリカ人が背負ってきた負のイメージが描かれている。 第一次世界大戦の戦勝国となった事で、イタリアは欧州列強の一員として国際的な権威を持つようになり、それまで貴族や知識人階級が中心であった民族主義も総力戦や塹壕戦を通じて大衆への広がりを見せた。本国の動きはイタリア系アメリカ人社会にも影響を与え、それまで出身地別に分かれていた共同体を統合する動きが盛り上がりを見せた。こうした流れは本国でベニート・ムッソリーニ率いる国家ファシスト党が独裁政権を獲得するとピークに達し、北米移民のイタリア・ナショナリズムを鼓舞するべくイタロ・バルボ空軍大臣による大西洋無着陸飛行、北米ファシスト協会の結成などが行われ、イタリア本国に戻ってファシスト党に入党する者もいた。経済階級的にも移民2世になると流暢な英語を用いて、公教育を受けて弁護士や銀行家など上流階級へ立身を果たす人物も現れ始めた。 1941年よりアメリカも参戦した第二次世界大戦では、イタリアとアメリカが敵同士となったが、イタリア系の多くはイタリアと同じ枢軸国となった日本にルーツを持つ日系アメリカ人の強制収容のような悲劇には見舞われなかった。しかし、危険分子と見なされた3200人のイタリア系が逮捕され、そのうち320人は強制収容されるという事件が起こった。また、それ以外にも市民権を取得していないイタリア移民は“敵性外国人”と見られ、様々な規制が加えられた。一方で少なくないイタリア系は日系人がそうであったように、祖先の土地ではなく自らの故郷である合衆国への忠誠を選び、前線で従軍した。イタリア系の軍人からは13名の名誉勲章受勲者が記録されており、太平洋戦争で3000名の日本軍を一個分隊で足止めしたジョン・バジロン海兵軍曹が特に有名である。これらの行動は戦後にイタリア系への偏見を拭うのに大きく貢献した。 またファシスト党はマフィア組織を徹底して弾圧した事から、イタリア系アメリカ人マフィアのラッキー・ルチアーノらは現地のマフィアと連絡を取り、連合軍に協力している。 1990年代、イタリア系の3分の2がホワイトカラーであり、マフィア構成員は数千人程度まで減少したとされる。異人種間結婚も交え移民4・5世まで誕生している現在の彼らは、アメリカ社会の主流(mainstream)への同化が進んでいる。2000年、上院から第二次世界大戦中の敵性外国人指定に関するイタリア系アメリカ人社会への謝罪と補償の決定がなされている[3]。
二度の世界大戦
現代のイタリア系アメリカ人
著名なイタリア系アメリカ人
政治
フィオレロ・ラガーディア:第99代ニューヨーク市長
ルドルフ・ジュリアーニ:第107代ニューヨーク市長
ビル・デブラシオ:第109代ニューヨーク市長
ウィリアム・パカ:第3代メリーランド邦知事
アルフレッド・スミス:第42代ニューヨーク州知事、アイルランド系・イタリア系・イギリス系・ドイツ系のクォーター
マリオ・クオモ:第52代ニューヨーク州知事
ジョージ・パタキ:第53代ニューヨーク州知事
アンドリュー・クオモ:第56代ニューヨーク州知事、マリオ・クオモの息子、クリス・クオモの兄
クリス・クリスティ:第55代ニュージャージー州知事、アイルランド系・イタリア系のハーフ
ジャネット・ナポリターノ:第3代国土安全保障長官、第25代アリゾナ州知事
ナンシー・ペロシ:第60・63代下院議長
リック・サントラム:2012年大統領選共和党予備候補者
マイケル・ポンペオ:第70代国務長官
実業界
アーロン・マリーノ:アルファ・エム創業者
アンソニー・ロッシ:トロピカーナ創業者
リー・アイアコッカ:クライスラー会長
ギル・アメリオ:AppleCEO
ポール・オッテリーニ:インテルCEO
アンドリュー・ビタビ:クアルコム創業者
ロバート・ベネデット:ベネデット・ギター創業者
ロバート・モンダヴィ:ロバート・モンダヴィワイナリー創業者
ボブ・グッチョーネ:ベントハウス誌創業者
マリオ・セガール - 不動産開発事業者
軍事
ジョン・バジロン:海兵隊軍曹、太平洋戦争での名誉勲章受勲者、硫黄島の戦いで戦死
サルヴァトーレ・アウグスティノ・ギュンター
ドミニク・サルヴァトーレ・"ドン"・ジェンティーレ(英語版):空軍少佐、第一次世界大戦のエース・パイロット