緊縮財政に対応するため、2010年のStrategic Defence and Security Reviewでは大幅な軍縮がおこなわれることになった。海軍においては人員を5,000人削減し30,000人規模に、2014年に退役する予定であった「アーク・ロイヤル」は直ちに退役、全てのハリアー IIも直ちに退役、「イラストリアス」はヘリ空母に転換した後2014年に退役、「オーシャン」はこの時点では維持することになった。また、4隻の戦略弾道ミサイル潜水艦はイギリス唯一の核戦力として引き続き維持し続ける方針で、クイーン・エリザベス級航空母艦と7隻のアスチュート級原子力潜水艦は計画通り建造される。
2023年1月時点のイギリス海軍は10隻の原子力潜水艦(4隻の戦略原潜と6隻の攻撃原潜)、18隻の水上戦闘艦(6隻の駆逐艦と12隻のフリゲート)を含む艦艇および航空機と海兵隊から構成されている。緊縮財政の流れを受けて、以前より艦隊の規模がかなり縮小されたが、地球規模で展開出来る世界有数のブルーウォーター・ネイビーである立場には変わりはない。イギリスの法令は、すべてのイギリス籍船舶を海軍に徴用できる権限を政府に与えており、戦時の海上輸送システムは万全である。
ただし、長年の予算削減によってイギリスは領土が侵攻された場合、アメリカやフランスなどの同盟国の協力が必要であるとの指摘もある。[7]1988年には対GDP比4.1%だった海軍予算は、2010年には2.6%にまで削られている。また、2000年の時点で3万9000人だった海軍将兵は、2015年には2万9000人にまで落ち込んでいる[8]。
イギリス連邦加盟国であるオーストラリア海軍、カナダ海軍、ニュージーランド海軍、インド海軍、パキスタン海軍(英語版)に対して同型艦や旧式艦を売却・譲渡しており、かつて英植民地であった国々と軍事的に結びつきが強い。
習慣と伝統キングジョージ5世号でのラム酒の支給(1940年)
イギリス海軍には、海軍旗とシップス・バッジズの使用に関して、正式な習慣と伝統が存在する。航海中の時と港では、海軍艦艇はいくつかの海軍旗を掲揚させる。就役した艦艇と潜水艦は、日中の間、ホワイト・エンサインを艦尾に掲揚し、航海中の間はメインマストに掲揚する。国旗(国旗はユニオン・フラッグだが海軍ではユニオン・ジャック)は艦首に掲揚されるが、これは軍法会議が進行中であることを合図している場合か、ロード・ハイ・アドミラルを含み司令官が乗艦していることを示す場合のいずれかである[9]。
フリート・レビューは、君主の前に艦隊を整列させる観艦式で、不規則な伝統である。公式に行われた最初のものは、1400年であった。その他に続いている伝統は、オーストラリア海軍と行うクリケット試合のジ・アッシズがある。
第二次大戦終結までは飲酒に関して寛容であり、特に水兵らに支給されていたラム酒(後にはグロッグ)に関する逸話が多い。また軍艦の進水式には国内で蒸留されたウィスキーが使われることもある(クイーン・エリザベスなど)。その他の食文化については近世イギリス海軍の食生活を参照。
海軍カレーやウィスキーなど一部の文化は、大きな影響を与えた大日本帝国海軍を経由し海上自衛隊にも受け継がれている。
組織機雷掃海のためペルシャ湾へ展開する艦隊
イギリス海軍の儀礼上の長はロード・ハイ・アドミラルであり、2011年から2021年まで、エディンバラ公がこの地位にあり、それ以降は空席となっている。この地位は1964年から2011年まではエリザベス女王が就いていた。イギリス海軍の事実上の長は、英国国防会議のメンバーであるファーストシーロード(海軍参謀総長)。国防会議はアドミラルティ・ボード(海軍委員会)に海軍の管理を委託している。アドミラルティ・ボードは艦隊を管理するネイビー・ボード(海軍会議)を指揮する。これらはロンドンのホワイトホールにある国防省舎 (MoD Main Building) に所在している。
指揮系統
2023年1月現在
ロード・ハイ・アドミラル:該当者なし
ファースト・シー・ロード(第一海軍卿・海軍参謀総長):サー・ベン・キー大将(英語版)
セカンド・シーロード(第二海軍卿・海軍参謀次長):マーティン・コネル中将(英語版)
艦隊司令官:アンドリュー・バーンズ中将(英語版)
准士官:カール・スティードマン准尉(英語版)
人員
海軍はイギリス海軍とイギリス海兵隊から成り、2019年9月の時点で教育訓練を経た正規兵は、29,090名(定員30,600名)であった。