イギリスの欧州連合離脱
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4月に入りメイ首相はEUに対して離脱の再延期を要請し[32]、4月10日、EU首脳会議で最長10月末までの離脱延期が承認された[33]。しかしメイ首相は協定案の議会承認を果たせず退陣に追い込まれ、7月24日に離脱強硬派のボリス・ジョンソン前外相が後任の首相に就任した。

ジョンソン首相は2019年10月末の離脱を目指し議会の長期休会や解散総選挙の提案などあらゆる方策を駆使したものの事態を打開できず[34][35]、期限直前の10月28日にEUは最長2020年1月末までの離脱延期を承認した[36]
離脱前時点での、その影響の予測

2016年時点で経済学者はブレグジットが中長期的に英国の一人当たりの実質所得を減少させる可能性が高い、と分析した。そして、国民投票自体が英国経済を損なった、と見た[37]。国民投票以降の影響に関する研究では、平均的な英国世帯のインフレ率上昇による年間404ポンド(およそ6万円)、およびイギリスのGDPの2 - 2.5パーセントの損失が示された[38][39][40]。ブレグジットは欧州経済領域(EEA)諸国から英国への移民を減らすと予想され、英国の高等教育および学術研究にも課題を投げかけた。英国の「離脱清算金」の問題も生じた。イギリスとEU加盟諸国との関係、さらにイギリスとEU加盟国であるアイルランドの関係も、複雑で不透明なものになった。

英国経済への実質的な影響は「ハードブレグジット」になるのか、「ソフトブレグジット」になるのかによって異なると見られていた。(離脱前から)HM財務省(英語版)による分析では、英国の経済状態を改善すると予想されるブレグジットシナリオは存在しないことが判明していた。2018年11月の財務省の出版物は、EUに留まった場合と比較してGDPの3.9%悪化を見積もった[41][42]
離脱によって現実に起きたこと

#離脱によって実際に起きた影響の節で解説。
用語解説

2016年6月23日の国民投票を契機にブレグジットに関連する専門用語が新たに英国で一般的に使用されるようになった。
ブレグジット―Brexit
「ブレグジット」
[注 1] Brexit (初期には Brixit [44]とも)は、英国を表す形容詞 "British" と退出を意味する "exit" の混成語で、英国のEU離脱を指す用語。オックスフォード英語辞典によれば、この語が初めて使用されたのは、2012年5月15日付のピーター・ワイルディングによるブログ投稿だとされている[45][46][47]。ギリシャがユーロ圏(さらにはEU)を離脱するという仮定の話題に言及して、2012年2月6日に初めて使用されたとされる "Grexit" (グレグジット)にたとえて造語された[48][49][50]。なお、英国人の一部ではexitを「イクシット」と濁らず発音する者もおり、こうした人々はBrexitも「ブレクシット」と濁らず発音する。
合意なき離脱―No Deal Brexit
イギリスとEUとの離脱交渉が合意に至らないまま離脱が起きること。この場合、EU加盟国としての立場から通商協定等のない第三国としての立場に移行するため、通商や市民権への影響が懸念される
[51][52]。→合意なきブレグジット(英語版)
ブラインド/目隠しブレグジット―Blind/Blindfold Brexit
英国が将来の貿易協定の条件を明確にしないままEUを離脱するというシナリオを説明するために2018年9月につくられた用語
[53][54]。EUと英国の交渉担当者は離脱後も2020年12月31日まで将来の貿易協定を承認しなければならず、その間英国は事実上EUの加盟国であり続けるが、議決権は持たないものとされている[55][56]
ハードブレグジットとソフトブレグジット―Hard and soft Brexit
「ハード・ブレグジット」と「ソフト・ブレグジット」はいずれも、EU離脱後の英国―EU間に見込まれる将来の関係性を説明するために報道機関がよく使用している
[57]非公式の用語である。かなり混乱してしまったBrexitに関する議論を(マスコミ流に、単純化して)整理するために、「ハード / ソフト」という単純なひと組の反意語で2分類してみせた、マスコミ用語。「ハード・ブレグジット」は「ノーディール・ブレグジット(no-deal Brexit)」 のほうを指し、通例、EUとの間で(通商その他の)取り決め (deal) がほとんど、あるいは全く用意されないまま英国がEUおよび欧州単一市場を離脱することを指し、貿易は世界貿易機関のルールに従って行われることになり、航空安全などのサービスがEUの専門機関から提供されなくなることを意味する[58]。「ソフト・ブレグジット」のほうは、@欧州単一市場への加盟を維持すること に加え、A 欧州経済領域 (EEA) のルールに従って少なくともいくらかは人々の自由な移動を維持することに関係する何らかの取り決め(合意内容)も包含しているようなBrexitを指す[59]。メイ政権の白書「チェッカーズプラン」はソフト・ブレグジットのいくつかの側面を取り入れている[60]。欧州経済領域およびスイスとの協定は人々の完全に自由な移動を含んでおり、EU側はそれと同様の内容を完全に自由な貿易に関する英国との協定にも含めることを望んでいる。
バックストップ―Backstop
ベルファスト合意 (Good Friday Agreement) を危うくせず、アイルランド島にハード・ボーダー(厳格な国境管理)を再び敷かずに済むよう、北アイルランドを部分的にEU関税同盟と欧州単一市場(英語版)の域内に保とうとする英国政府の提案を指す用語(アイルランド国境問題(英語版)も参照)。原則としては、英国が明らかな国境管理のインフラを設けることなく、関税、物品税およびその他の規制をEUとの間で行えるような技術的方法を開発し、確立するまでの一時的な措置であるとされる。これは「南北協力の継続と新たな国境協定の防止」に関する欧州連合離脱法2018第10条に準拠するものである。
離脱派―Brexiteer/Brexiter
ブレグジットの支持者は「ブレクシティア」Brexiteers
[61][62] または「ブレグジッター」Brexiters[63] と呼ばれている。代替的に「リーヴァー」Leavers という用語もメディアで使用されている[64][65]。反対語は「リメイナー」"Remainers" である。
カナダプラス―Canada Plus
英国がEUを離脱し、
自由貿易協定に署名するモデルを指す省略表現である。これにより、英国は非EU諸国との間で独自の通商政策を取ることができるが、英国―EU間の貿易については原産地規則協定が合意に達することが求められる。このため、欧州自由貿易連合 (EFTA) に参加するよりも「自由」ではなくなり、追加の国境管理が必要となる可能性がある点で、特にアイルランド島では論争の的となっている。カナダ―EU間での交渉はおよそ7年を要したが、英国―EU間では既に規制基準が調整されているので、交渉期間ははるかに短縮されるだろうと離脱派は主張している[66]
チェッカーズプラン―Chequers plan
チェッカーズプラン (Chequers plan
) とは、「英国と欧州連合の間の将来的な関係の枠組み」と題してチェッカーズ[注 2]で起草され、2018年7月12日に刊行された政府白書に対してメディアが付けた簡略な呼称。


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