イアン・カーティス
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残った3人のメンバーは(だれか1人でもメンバーが欠けたらバンド名を変更することになっていたため)バンド名をニュー・オーダーと変更し、イアン・カーティスの自殺を知らされた日のことを歌った「ブルー・マンデー」は世界的な大ヒットとなった。
人物

「狂わんばかりの風車へと変化していくあの様」(スティーヴン・モリス)[3]というステージ上の顔は、公務員としての顔とあまりにもかけ離れていた。気性の差が激しく、実生活でも、普段は穏やかで優しく、礼儀正しいが、突如逆上して激情を露わにすることがあった。てんかんの治療で大量の投薬を受けるようになってから、とくに躁鬱の差が激しくなり、バーナード・サムナーは、てんかんの薬が結果的に精神状態に悪影響を及ぼしたのではないかと指摘している[4]。また、周囲に気を遣い、周囲に合わせて無理をするところがあり、期待に応えられないことがプレッシャーになったのではないかとメンバーは語っている[5]

勤め先の障害者のための求職センターでは、障害者たちに懸命につくし、同時に、彼らから強い影響を受けていた。「シーズ・ロスト・コントロール」は、職安に来ていたてんかんの少女が死んでしまったことにショックをうけて書いた詩である。

愛犬家で、飼い犬キャンディの写真を持ち歩いていた[6]
ボーカルスタイル

ステージでの激しく痙攣した動きと取り憑かれたような表情で、観る者に強烈な印象を与えカルト的な人気を得たが、それらのパフォーマンスはてんかんの発作の前駆症状に酷似していた(ステージ上でそのまま発作を起こしたこともあった)。

詩作を好んだ文学青年らしく、インスパイアされた文学作品を髣髴させる歌詞が多い。「デッド・ソウルズ」はニコライ・ゴーゴリに同名の小説(邦題『死せる魂』)、「アトロシティ・エキシビション」はJ・G・バラードに同名の短編集(邦題『残虐行為展覧会』)がある。「インターゾーン」はウィリアム・バロウズの『裸のランチ』において、対立する世界の中立地帯として位置づけられている都市の名称(のちにバロウズは『インターゾーン』のタイトルで小説も書いている)である。この他に、T・S・エリオットジョセフ・コンラッドが好きな作家として知られている。

自己の内面を執拗に問いかける詩は、孤独、不安、絶望の感情に満ちている。体制への怒りを表現したパンクに対し、カーティスの詩には、自分自身に対する怒りが強く表れている。

自身をとりまく世界の崩壊が暗喩を駆使した文学的な表現で冷徹に描かれる一方で、悲嘆を率直に吐露する表現もみられ、デジタルで無機的なフレーズと情緒的なフレーズが拮抗するジョイ・ディヴィジョンのサウンドと相まって、理性と激情が葛藤する独自の内面世界が描き出されている。

インタビューでは自身の詩について、特にメッセージなどはなく、どうとでも好きなように解釈してもらえればいいと語っている[7]

周囲の人々は、詩の内容についてあまり気にとめず、詩に表れている苦悩がカーティス自身のものであるとは思っていなかった。『クローサー』の歌詞があまりにも鬱々とした暗いものであることに不安を感じていたアニック・オノレに対し、所属レーベルの社長であったトニー・ウィルソンは、詩はあくまでもアートなのだから、恐れる必要はないと話したという[8]
演じた俳優

ショーン・ハリス24アワー・パーティー・ピープル ( ⇒24HOUR PARTY PEOPLE)/2002年 マイケル・ウインターボトム監督- 所属レーベル、ファクトリー・レコードの盛衰を描く。前半の物語はジョイ・ディヴィジョンが中心となる)

サム・ライリーコントロール (Control)/2007年 - 日本では2008年に公開。アントン・コービン監督-妻デボラの著書、タッチング・フロム・ア・ディスタンスをベースにイアン・カーティスの半生を描く)

脚注^ “ ⇒Rocklist.net...Q Magazine Lists..”. Q - 100 Greatest Singers (2007年4月). 2013年5月21日閲覧。
^ Stevens, A. (2007年11月5日). “Where are rock's working-class intellectuals?” (英語). the Guardian. 2018年7月25日閲覧。
^ ジョン・サヴェージ Akiyama Sisters Inc.訳「Good Evening We’re Joy Division」(『ハート・アンド・ソウル』所収ブックレット p13)
^ デボラ・カーティス『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』p87、David Nolan Bernard Sumner Independent Music Press 2007 p65
^ バーナード・サムナー、ピーター・フック、スティーヴン・モリスによる回顧録(『クローサー』コレクターズエディション版所収)
^ デボラ・カーティス『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』p79,p128,p129、Mick Middles & Lindsay Reade Torn Apart The life of Ian Curtis p191,p204,p207頁
^ デボラ・カーティス『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』p90
^ Mick Middles & Lindsay Reade Torn Apart The life of Ian Curtis p245、ドキュメンタリー映画『ジョイ・ディヴィジョン』

参考文献・フィルム

デボラ・カーティス著 小野良造訳『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』 蒼氷社 2006年(妻デボラによる伝記。未発表のものも含めた全詩集を収録)

行川和彦「ジョイ・ディヴィジョン・ストーリー」(『ミュージックマガジン』2005年6月号)

保科好宏「ジョイ・ディヴィジョン・ストーリー」(『ストレンジデイズ』2008年4月号)

Middles, Mick (1996) From Joy Division to New Order, Virgin Books; .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}
ISBN 0-7535-06386


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