アートロックは、日常の美学とアートポップによって具現化された使い捨ての美と区別して、ロマンチックで自律的な伝統を強調していく [2]。ラリー・スターとクリストファー・ウォーターマンの『アメリカン・ポピュラー・ミュージック』は、アート・ロックを「ロックの要素とヨーロッパのクラシック音楽を融合したロック音楽の形態」と定義し、英国のロックバンド、キング・クリムゾン、エマーソン、レイク&パーマー、ピンク・フロイドを例として引用している[3]。共通の特徴としては、歌ではなく作曲を重視したアルバム指向の音楽が含まれ、大抵は複雑で長い楽器セクション、交響的オーケストレーションを用いる[4]。その音楽は伝統的にコンセプト・アルバムの文脈の中で使われ、その叙情的なテーマは「想像力」と政治志向の傾向があった[4]。
プログレッシブ・ロックは、古典的訓練を受けた演奏技術及び哲学性に重点を置くように特徴付けられており、交響曲的要素をもつが[5]、一方アート・ロックは「より挑戦的で、ノイズが多く、型にはまらない」「古典的な影響が少ない」、前衛音楽に重点を置いている[5]。類似点は、どちらもロック音楽を芸術性の高いレベルに引き上げる試みを行っていることであり[5]、コンセプト・アルバムやロック・オペラの発想へと結びついた[6]。アートロックは、クラシック要素を持つロック、または上記のプログレッシブ・ロックを指すこともある [7]。ブルース・エダーのエッセイ「アート・ロック/プログレ・ロックの初期の歴史」では、「『プログレッシブ・ロック』は『アート・ロック』または『クラシック・ロック』としても知られています」とし「バンドはスイートを演奏しているのではなく、チャック・ベリーとボー・ディドリーの代わりにバッハ、ベートーベン、ワーグナーからリフを借り、そしてカール・パーキンスやウィリー・ディクソンよりもウィリアム・ブレイクやT・S・エリオットに近い言語を使用している」[8]としている。
1970年代にはドイツのクラウトロックも注目された[9]。アート・ロックとポップ・ミュージックの境界は、20世紀後半にますます曖昧になる [10]。メリアム・ウェブスターオンライン辞書には、1968年以降に勃興したポップ・ミュージックの潮流としてシングルよりもアルバム制作を重視する[* 4]多くのロックバンドが、アート・ロックが目指す壮大な芸術的意思表示をすることを目的として創造した音楽ジャンルとしている[12]。1960年代後半に進行するにつれて、プログレッシブ・ロックの誕生と並行して、アート・ロックは実験的なロックとして評価を獲得していった[13]。アート・ロックでは、1970年代前半にキング・クリムゾンやクイーンなどのイギリス人アーティストが人気を得た[14]。