アンモニウム塩
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液体アンモニア

アンモニアは液化しやすく、20℃ では、0.857 MPa(8.46気圧)で液化する。また沸点が −33℃ と高いので、寒冷地では冬季に自然に液化することもあり得る。液体アンモニアの性質は水と似ている。例えば、様々な物質を溶解し、液体アンモニア自体も水溶液と似た性質を示す。

液体アンモニア中では弱い自己解離があり、−33℃(沸点)におけるイオン積は次のとおりである[5]。 2 NH 3 ↽ − − ⇀ ( NH 4 + ) + NH 2 − , {\displaystyle {\ce {2NH3 <=> (NH4^+) + NH2^- ,}}} K s = 10 − 32.5 {\displaystyle \quad K_{\mbox{s}}=10^{-32.5}} 液体アンモニアの白色ボンベ。日本においては内容物によって塗装色が定められている。

液体アンモニアには単体アルカリ金属アルカリ土類金属およびユウロピウムなどを溶解する性質がある。アルカリ金属、特にセシウム溶解度は非常に大きく、これらの金属の希薄溶液は溶媒和電子によって青色を呈するが、濃厚溶液は金属光沢ブロンズ様の液体となる。液体アンモニアに溶解した金属ナトリウムは、バーチ還元などの有機反応に利用される。さらに、金属溶液は高濃度で金属的な伝導挙動を示すことが知られている。

比誘電率は −33℃ において 22.4 であり、水に比べてはるかに低い。無機塩類の液体アンモニアに対する溶解度は一般的に低いが、アンモニアの配位能力によってヨウ化銀(AgI)などは非常によく溶ける。
毒性

粘膜に対する刺激性が強く、濃度 0.1% 以上のガス吸引で危険症状を呈する。悪臭防止法に基づく特定悪臭物質の一つであり、毒物及び劇物取締法においても劇物に指定されている。日本では高圧ガス保安法で毒性ガス及び可燃性ガスに指定され、白色のボンベを用い、「毒性」などの注意書きは赤で書くように定められている。液体状のものが飛散した場合は非常に危険で、特に目に入った場合には失明に至る可能性が非常に高い[6]。高濃度のガスを吸入した場合、刺激によるショックが呼吸停止を誘発することがある[7]。生体において、血中アンモニア濃度が高くなると、中枢神経系に強く働き、意識障害が生じる。

急性毒性[7]

吸入 ラット LC50 2000ppm/4hr

吸入 マウス LC50 4230ppm/4hr

吸入 ウサギ LC50 7 mg/m3/1hr

吸入 ネコ LC50 7 mg/m3/1hr

経口 ラット LD50 350 mg/kg

人体においては、摂取した蛋白質肝臓で分解される過程でアンモニアが生じ、さらに尿素へと変化する。肝機能が低下するなどしていると「がアンモニア臭い」と感じられることがある[8]。またアンモニアを吸引するなどした場合は量によっては危険であるため、中アンモニア濃度を測定する。また、魚介類などの人間以外の生体については、環境水における濃度を測定する。
燃焼

通常の状態における空気中での引火性は知られていない。発火点は651℃で空気中のアンモニア含有量が16–25%で爆発性ガスができる。液体アンモニアはハロゲン強酸と接触すると激しく反応して爆発・飛散することがある。酸素中では燃焼し、窒素酸化物を発生する[9]
アンモニア水「水酸化アンモニウム」も参照

アンモニアの水に対する溶解度は気体としては非常に大きく濃厚水溶液が存在し、また密度は濃度と伴に減少し、市販の濃アンモニア水は25 - 28%程度のものが多く、26%(d=0.904 g cm-3)のものはモル濃度は13.8 mol dm−3である。アンモニアは水に対しかなり発熱的(すべての気体の溶解熱は発熱的であるが)に溶解し、また溶解に関するギブス自由エネルギー変化も負の値を取るため[10]、水に非常に溶けやすいことになる。これは極性のアンモニア分子が、より極性の強い水分子と水素結合を形成するためである。 NH 3 ( g ) ↽ − − ⇀ NH 3 ( aq ) {\displaystyle {\ce {NH3(g) <=> NH3(aq)}}}

Δ H ∘ {\displaystyle {\mathit {\Delta }}H^{\circ }} Δ G ∘ {\displaystyle {\mathit {\Delta }}G^{\circ }} Δ S ∘ {\displaystyle {\mathit {\Delta }}S^{\circ }} Δ C p ∘ {\displaystyle {\mathit {\Delta }}Cp^{\circ }}
アンモニアの溶解-34.13 kJ mol-1-10.05 kJ mol-1-81.2 J mol-1K-159 J mol-1K-1

またアンモニア水は一部電離し、 NH 3 ( aq ) + H 2 O ( l ) ↽ − − ⇀ NH 4 + ( aq ) + OH − ( aq ) {\displaystyle {\ce {NH3(aq) + H2O(l) <=> NH4^+(aq) + OH^{-}(aq)}}} , K b = 1.8 × 10 − 5 {\displaystyle Kb=1.8\times 10^{-5}} p K b = 4.75 {\displaystyle {\mbox{p}}K_{b}=4.75\,}

酸塩基平衡反応によってアンモニウムイオン NH4+ と水酸化物イオン OH- が生じ塩基性を示す。かつてアンモニア水の塩基性は水酸化アンモニウム NH4OH が生成し、これが電離すると考えられていたが、水溶液中にはそのような化学種は認められず、また低温ではアンモニア一水和物 NH3·H2O が生成するが、これはアンモニア分子と水分子が水素結合したものであり水酸化アンモニウムの構造ではない[11]

また、弱塩基のアンモニアを中和した塩であるアンモニウム塩は弱酸性を示すが、これはアンモニウムイオンの酸解離による。塩基の強度は共役酸酸解離定数で表記する場合が多い。 NH 4 + ( aq ) ↽ − − ⇀ H + ( aq )   + NH 3 ( aq ) {\displaystyle {\ce {NH4^+(aq) <=> H^+(aq)\ + NH3(aq)}}} ,   K a = 5.6 × 10 − 10 {\displaystyle \ Ka=5.6\times 10^{-10}} pKa = 9.25 {\displaystyle =9.25}


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