アンドレ・ブルトン
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本来の書名は『シュルレアリスム宣言・溶ける魚(Manifeste du surrealisme/Poisson soluble)』となっており、『宣言』に『溶ける魚』を併収する形をとっていた。しかし、後に出版される、いわゆる『宣言集』などでは『第二宣言』『第三宣言か否かの序』と、『シュルレアリスム宣言』を『第一宣言』として併収し、『溶ける魚』は切り離されることになった。

ブルトン著の他の作品として、現実の女性、ナジャとの出会いで現実の背後にある超現実の存在を実感する体験を語った、ドキュメントの散文作品『ナジャ』の他、『狂気の愛』『通底器』『シュルレアリスムと絵画』など、またスーポーとの共著による、自動記述のテクストを集成した『磁場』、エリュアールとの共著『処女懐胎』などがある。
シュルレアリスムの父

ブルトンはシュルレアリスムを創始し、理論化し、運動として組織したが、実際に着想を与えたのはジャック・ヴァシェである。またテオドール・ブランケルもシュルレアリスムに大いなる貢献をした。その中でブルトンは前述の通り「法王」として君臨した。そのようなブルトンは、エルンストダリ、ロジェ・ヴィトラック、ジョルジュ・バタイユアントナン・アルトールネ・クルヴェルら多くの芸術家をシュルレアリスムから「除名」している。このブルトンの態度、行動、やり方といったものには多くの人間が反発しており、例えばダリは「ブルトンはシュルレアリスムの父であり、子は常に父より優れ、子であるダリはその父から離れていった」と語っている。最初の妻シモーヌはブルトンとの結婚以前に、友人への手紙でブルトンを「率直な」人物と評していたが、著書にしばしば見られる過激な言葉などからも、ブルトンの人柄がいくらか知れるだろう。アラゴン、エリュアール、スーポーといった、シュルレアリスムを創始したメンバーのほとんどは、後にブルトンの元を離れている。アントナン・アルトーとは決別したが、精神病院からの退院後、交流を再開している。

自動記述

自動記述(オートマティスム)は、何も予定せず、先入観を捨て去り文章を書き付けるという、主に文学の表現方法で、シュルレアリスム宣言の中に示されているシュルレアリスムの定義に即したものと言えるだろう。ブルトンは自動記述を重視し、スーポーとの共著による、自動記述の方法によった文章を集成した『磁場』が、最初の「テクスト・シュルレアリスト」と言える。ブルトンは、その後もシュルレアリスム宣言に併収された物語集「溶ける魚」など、自動記述をシュルレアリスムの重要な要素としていた。しかし、シュルレアリスムの「法王」としての、教条的な態度と、自動記述法を重視する態度に、マグリットなど、反感を覚える人物もいた。日本のシュルレアリストとして知られている瀧口修造は、自動記述の方法を用いて作品を書いている。巖谷國士などは、自動記述、またその成果を高く評価している。
主な訳書一覧

シュルレアリスム宣言

『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』巖谷國士岩波文庫)、旧版は学芸書林

『超現実主義宣言』生田耕作中公文庫

『シュールレアリスム宣言集』森本和夫現代思潮新社

『シュールレアリスム宣言』稲田三吉現代思潮社

『シュルレアリスム宣言集』江原順(白水社


ナジャ

『ナジャ』巖谷國士白水Uブックス、のち岩波文庫)。『ナジャ論』巖谷國士(白水社)

『ナジャ』栗田勇現代思潮新社

『ナジャ』稲田三吉(現代思潮社


『秘法十七番』

『秘法十七』入沢康夫人文書院

『秘法十七番』宮川淳晶文社


『通底器』 

『通底器』足立和浩(現代思潮新社

『通底器』稲田三吉現代思潮社


『ブルトン詩集』稲田三吉思潮社シュルレアリスム文庫)

『処女懐胎』服部伸六(ポール・エリュアールとの共著、思潮社)

『恋愛 L'amour』(ポール・エリュアールとの共著、エクリ

『狂気の愛』

『狂気の愛』笹本孝(思潮社)新版刊

『狂気の愛』海老坂武光文社古典新訳文庫


『性についての探究』野崎歓編(白水社)

『魔術的芸術』巖谷國士谷川渥ほか(河出書房新社)、新版刊

『シュルレアリスムと絵画』粟津則雄ほか(人文書院)

『至高の愛 ― アンドレ・ブルトン美文集』松本完治(エディション・イレーヌ)

『シュルレアリスム簡約辞典』(ポール・エリュアール共著、)江原順(現代思潮新社)

『超現実主義と絵画』滝口修造(復刻版:ゆまに書房)

『シュルレアリスムとは何か』秋山澄夫(思潮社)

『ブルトン、シュルレアリスムを語る』稲田三吉・佐山一(思潮社シュルレアリスム文庫)

『アンドレ・ブルトン集成』(人文書院)、6巻分のみ出版、未完結。

『アンドレ・ブルトン集成1』(1970) ナジャ / 通底器

『アンドレ・ブルトン集成3』(1970) 慈悲の山 / 地の光 / 溶ける魚 / 磁場 / 私なんか忘れますよ / すみませんが

『アンドレ・ブルトン集成4』(1970) 自由な結びつき / 白髪の拳銃 / ヴィオレット・ノジェール / 水の空気 / 暗い洗濯場にて / 1935-1940 / 余白一杯に / 蜃気楼 / 1940-1943 / 総目録 / 震えるピン / 外人びいき / シャルル・フーリエへのオード / 拾遺 / 星座 / A音 / 作業中徐行せよ / 処女懐胎

『アンドレ・ブルトン集成5』(1970) シュルレアリスム宣言集 / シュルレアリスムの政治的位置 / シュルレアリスムとは何か

『アンドレ・ブルトン集成6』(1974) 失われた足跡 / 黎明

『アンドレ・ブルトン集成7』(1971) 野をひらく鍵


『ピエール・モリニエの世界』生田耕作(ピエール・モリニエとの共著、奢霸都館)

『黒いユーモア選集(セリ・シュルレアリスム)』山中散生小海永二ほか(国文社

『黒いユーモア選集』(河出文庫 全2巻)編著(上記の新版) 

『マルティニーク島蛇使いの女』松本完治訳、エディション・イレーヌ、2015年。

『太陽王アンドレ・ブルトン』アンリ・カルティエ=ブレッソン共著、松本完治訳、2016年。

『等角投像』松本完治編、エディション・イレーヌ、2016年。

『シュルレアリスムと抒情による蜂起 ― アンドレ・ブルトン没後50年記念イベント全記録』松本完治編、塚原史星埜守之、前之園望共訳、2017年。

伝記研究

ジュリアン・グラック『アンドレ・ブルトン 作家の諸相』
永井敦子訳 、人文書院、1997年

アンリ・ベアール『アンドレ・ブルトン伝』
塚原史、谷昌親訳、思潮社、1997年

『三極の星 アンドレ・ブルトンとシュルレアリスム』
オクタビオ・パス、鼓宗訳 青土社 1998年
ブルトンが登場するフィクション

川又千秋『幻詩狩り』

安部公房「バベルの塔の狸」(『』所収)

全集

『アンドレ・ブルトン全作品集1』1988年、
プレイヤード叢書 年譜

脚注^ アンドレブルトン access-date=2023-10-06

関連項目

ダダイスム

シュルレアリスム

ブラック・ジョーク

関連人物

ジークムント・フロイト

カール・マルクス

レフ・トロツキー

ロートレアモン伯爵

ジョルジュ・バタイユ

パブロ・ピカソ

サルバドール・ダリ

ジョルジョ・デ・キリコ


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