フランス装とは、本来は仮製本の一方式である[7]。中身より若干大きな印刷用紙の周囲を内側に折り返して表紙としたものである(フランス表紙[8])。中身は、糸綴じして、化粧断ちを施したものである[7]。 アンカット(英: uncut edge[9])とは、本の小口の一方もしくは三方を化粧裁ちしないまま仕上げる製本の一様式をいう[9]。 小口のうち上方である「天」のみを断裁(化粧裁ち)せずに残す製本手法は「天アンカット」[10]とよばれる。岩波文庫・新潮文庫・ハヤカワ文庫・創元推理文庫・岩波新書 ・中公新書などがこの手法で製本されている。 製本の工程上、小口の三方を切り揃える「三方裁ち」よりも「天アンカット」のほうが手間[11][5]とコスト[5]のかかる手法である。天を断裁せずにすむような紙の折り方(頭合わせ折[12])をする必要があり、印刷段階からの工夫が必要となるためである[9]。 現在使われる意味での「文庫本」を生み出した岩波文庫(1927年発刊)は、天アンカット・スピン(栞ひも[13]。紐状の栞)つきの造本をおこなった[14]。岩波文庫は「フランス装風の洒落た雰囲気を出すため」[11]この体裁を採用したとされ、後続の文庫本もこの形式を踏襲した[14]。岩波文庫では、スピンは廃止されたものの天アンカットは維持している。新潮文庫の編集部はスピンをこだわりとしており[5]、スピン取り付けのため断裁ができないと説明している[10]。文庫本や新書などの並製本の場合、スピンは工程の最初にカバーに取り付ける必要があるためである[5][15]。
アンカット
天アンカット天アンカット本の例。左は天アンカットで製本された文庫本(岩波文庫)。右は三方裁ちで製本された文庫本(講談社学術文庫)。
脚注[脚注の使い方]^ a b c d e f g h i 福井県立図書館 (2007年5月1日). “最初から本の地の部分が全部裁断されていない本(洋書)を見た。これは製本ミスか、それともそういうものとしてつくられているのか、どちらなのかを知りたい。
^ “ ⇒折り”. 製本のひきだし 製本用語集. 東京都製本工業会. 2016年4月12日閲覧。
^ a b c “ ⇒仕上げ裁ち”. 製本のひきだし 製本用語集. 東京都製本工業会. 2016年4月12日閲覧。
^ “ ⇒化粧裁ち”. 製本のひきだし 製本用語集. 東京都製本工業会. 2016年4月12日閲覧。
^ a b c d e “第四回 やめませんからご安心を”