アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド
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思想

ケンブリッジ・プラトニズムの流れも汲み、しばしばプラトン主義も重視した。「西洋の全ての哲学はプラトン哲学への脚注に過ぎない」という「過程と実在」におけるくだりは有名であり、また「もし、プラトンが現代に蘇ったならば、間違いなく有機体の哲学を自身の哲学として語るであろう」という自負めいた言葉も残している。もっとも彼の「プラトニズム」は通常言われるような、生成消滅する世界の背後に真なる実在としてのイデアを見出すという意味のものとは異なっている。彼がプラトンを賞賛するのは、多様な解釈を可能にした思想の「豊かさ」あるいは「多義性」といったものである。実際彼の「イデア」にあたる「永遠的客体」(eternal object)はむしろアリストテレスの「内在形相」に類するものであり、彼にとっての真なる実在「現実的存在」(actual entity)はアリストテレス的な「個物としての実体」にあたり、その限りではむしろ彼はアリストテリアンと称すべきであろう。

ホワイトヘッドの哲学が与えた影響は、広範に及んでいる。同時代人では、後期のジョージ・ハーバート・ミードの社会哲学に「パースペクティヴの客観性」という観点を与え、また、その有機体的自然観は、メルロ=ポンティが『眼と精神』を執筆する動機となった。一方、カール・ポパーは、『開かれた社会とその敵』の中でホワイトヘッドの形而上学的な思弁を痛烈に批判している。R・G・コリングウッドの『自然の概念』はホワイトヘッドの自然哲学と形而上学の考察をもって締めくくられている。D・H・ロレンスは、『チャタレイ夫人の恋人』の中で、書名を明記してはいないが、ホワイトヘッドの『宗教とその形成』の末尾の四つの文を引用した。後世への影響に関しては、その「有機体の哲学」が、チャールズ・ハーツホーンやジョン・B・カブJr、ルイス・フォード、デイヴィド・グリフィンらを中心としたプロセス神学に継承されている。ハーバード大学時代の同僚・教え子には、クワインデイヴィッドソンがおり、リチャード・ローティはハーツホーンからホワイトヘッド哲学を学んでいる。マルクーゼは、『一次元的人間』で重要な引用をしている。ハーバーマスドゥルーズが積極的な評価をしており、コリン・ウィルソンは『アウトサイダーを超えて』の中でホワイトヘッド哲学に希望を見出そうとする。イリヤ・プリゴジンはみずからの立場とホワイトヘッドとの親和性について繰り返し語り、デヴィッド・ボームなどの自然科学者も彼の有機体の哲学に賛同している。直接の思想的交流はなかったが、日本では、西田幾多郎空海等との比較が盛んに試みられている。

国際的な研究機関として、カリフォルニア州のクレアモント大学に、カブ、グリフィンらによって、ホワイトヘッドやハーツホーンのプロセス神学・プロセス哲学を研究するCenter for Process Studies (CPS)が設置され、学会誌"Process Studies"を発行している。日本では「日本ホワイトヘッド・プロセス学会」が組織されており、学会誌「プロセス思想」を発行している。
著書

日本語訳では松籟社より著作集が刊行されている。

『普遍代数論』 A Treatise on Universal Algebra(1898)

『射影幾何学の公理』(著作集第1巻所収) The Axioms of Projective Geometry(1906)

『画法幾何学の公理』(著作集第1巻所収) The Axioms of Descriptive Geometry(1907)

数学原理』 Principia Mathematica (1910), (1912), (1913) 

『数学入門』(著作集第2巻) Introduction To Mathematics (1911) 

『思考の有機化』 The Organisation of Thoughts: Education and Scientific(1917) 

『自然認識の諸原理』(著作集第3巻) An enquiry concerning the principles of natural knowledge (1919) 

『自然という概念』(著作集第4巻) The Concept of Nature (1920) 

『相対性原理』(著作集第5巻) The Principle of Relativity (1922) 

『科学と近代世界』(著作集第6巻) Science and the Modern World (1925)

『宗教とその形成』(著作集第7巻) Religion in the Making (1926)

『象徴作用』(著作集第8巻所収) Symbolism: Its Meaning and Effect (1927)

『過程と実在』(著作集第10・11巻) Process and Reality (1929)

『理性の機能』(著作集第8巻所収) Function of Reason (1929)

『教育の目的』(著作集第9巻) The Aims of Education and Other Essays (1929)

観念の冒険』(著作集第12巻) Adventures of Ideas (1933)

『自然と生命』(『思考の諸様態』に再録) Nature and Life(1934)

『思考の諸様態』(著作集第13巻)  Modes of Thought (1938)

『科学・哲学論集』(著作集第14・15巻) Essays in science and philosophy (1947)

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキクォートにen:Alfred North Whiteheadに関する引用句集があります。

久保田信之 - 『ホワイトヘッド 教育論』の和訳者

酒井ツギ子

武田龍精

ハンス・ヨナス

菱木政晴

山本誠作

チャールズ・ハートショーン

ステパノ・フランクリン

脚注



外部リンク

日本ホワイトヘッド・プロセス学会

『ホワイトヘッドの哲学』中村昇 松岡正剛の千夜千冊・遊蕩篇

『ホワイトヘッド』 - コトバンク





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