アルファ型原子力潜水艦
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水中放射雑音は671RT型(ヴィクターII型)と同程度で、周波数5?200ヘルツで163デシベル、周波数1キロヘルツで143デシベルであった[5]
装備

本型では、自動化・省力化の一環として、アッコルド型潜水艦指揮管制装置が搭載された。これはグラニト中央研究所が開発したもので、原子炉や兵器に至るまでを発令所から遠隔操作することができた[3]。これはやや遅れて計画が進められていた対艦・対潜攻撃原潜である671RT型(ヴィクターII型)でも導入された[6]

この他にも、オケアン統合ソナーやソジ水上・水中総合航法システム、モルニア総合通信システム、リトム200原子炉操縦装置など、全体に自動化が進められた。またレーダーや潜望鏡、艦内通信システムなど、いずれも最新の機器が搭載された[3]

また本型では、ソ連潜水艦として初めて水圧式の魚雷発射管と急速自動装填装置が導入された。魚雷発射指揮装置はサルガン型であった[3]

ただしこの時期、海軍では原潜の攻撃力強化を重視しており、運動性能に優れるとはいえ小型軽量で兵装搭載量に劣る本型は、その運用コンセプトから外れたものとなっていた。このことから、ルサノフ設計官は海軍首脳部から強く批判され、兵装を強化した705D型を提案したものの、1974年に解任された。またこのほか、本型を元にした巡航ミサイル潜水艦(SSGN)として、アメチースト(SS-N-7)対艦ミサイルの発射筒を追加した705A型、同様にマラヒート(SS-N-9)対艦ミサイルの発射筒を追加した686型も検討されたものの、705K型そのものの計画遅延もあって、いずれも実現しなかった[3]
同型艦
一覧表

設計艦番号建造番号造船所起工進水竣工除籍
705型K-649001941968年
6月2日1969年
4月24日1971年
12月31日1978年
2月9日
705K型K-123 (B-123)1054021967年
12月29日1976年
4月4日1977年
12月12日1996年
7月31日
K-316016751941969年
4月26日1974年
7月25日1978年
9月30日1990年
4月19日
K-373016801941972年
6月26日1978年
4月19日1979年
12月29日
K-4321064021968年
11月12日1977年
11月3日1978年
12月31日
K-463016851941975年
6月26日1981年
3月31日1981年
12月30日
K-4931074021972年
1月21日1980年
9月21日1981年
9月30日

運用史

1978年、705K型の運用部隊として、北方艦隊に第6原潜師団が編成された。1979年から1981年にかけての一時期は、数隻の671RT型(ヴィクターII型)や685型(マイク型)K-278も配属されていたが、形態管理の観点から、1981年以降、本型のみの部隊となった。その後、1980年代末にかけては活発な作戦行動が展開され、年平均作戦行動隻数は2隻、1隻あたりの平均航海日数は120日であった[3]

しかし一方で、本型の高性能を支えた液体金属冷却炉は、上記のとおりに維持管理にかなりの手間を要するものでもあった。OK-550型を搭載した705型K-64は早期に解体され、BM-40A型に変更した705K型の1番艦K-123も、1982年4月8日には大西洋北部で放射性物質の漏洩事故を起こし、修理には9年を要した。これはソ連原潜史でも最長の修理期間であった。また他の艦でも大なり小なり原子炉には手を焼いており、事故原因のほとんどは1次冷却系に起因するものであった。またこの他にも、1984年にはK-373が霧の中で667AM型(ヤンキーII型)SSBN K-140と衝突事故を起こしたほか、1989年にはバレンツ海で行動中のK-316が原子炉の蒸気パイプの破裂事故をおこし、ディーゼル補機でやっと帰港した[3]

1989年に発生した685型(マイク型)K-278の沈没事故を受けて、海軍は本型の退役を決定し、翌1990年、705K型は予備役ないし除籍となり、1992年には第6原潜師団も解散した[3]
登場作品

上記のように現実には問題の多い艦だったが、その破天荒な性能から、創作の世界ではしばしば登場する「人気兵器」「定番兵器」となっている。
漫画
沈黙の艦隊』(かわぐちかいじの漫画)
物語前半にて、ソ連海軍所属の架空艦「レッド・スコルピオン(西側呼称:レッド・スコーピオン)」が登場。当初はイワン・ボロジン大佐が艦長を務めており、ボロジンが艦長を務めていた2年前の時点では主人公の海江田四郎が艦長を務めていた海上自衛隊所属のディーゼル潜水艦「やまなみ」と日本海で対峙したこともあったが、若き新任艦長のアンドレイ・ロボコフ大佐に艦長交代という事態となり(直後にボロジンは艦長交代に不満を訴えただけでなく「党の連中はウォッカでも頭に回ったか」と暴言を吐いたことで、ロボコフから党批判と反逆罪の現行犯として首をへし折られて処刑された。そして一連の状況をボロジンの部下の士官達はすべて受け入れ、ロボコフの指揮下に入った)、そのまま海江田が率いる「やまと」と交戦する。深く潜れる性能を生かして、「やまと」との交戦前には通信用フローティング・アンテナのケーブルを、アメリカ海軍所属の潜水艦のスクリューに絡みつかせ引きずる戦法を使い、当の潜水艦と近くにいた僚艦を激突させて損傷させた。作中ではこの戦法について、「やまと」の面々は明確に武器である魚雷やミサイルを全く用いないことから、「通信準備中の事故」と言い逃れできる戦法と評しているが、現実にはケーブルの強度的に他の艦船を引きずるのは実行不能との指摘がある(スクリューに絡ませるだけなら不可能でもない)。さらにその上、ケーブルの付け根に撃力に近い程の力が加わるため水圧により致命的なダメージをも負いかねず、現実的ではない。その後の「やまと」との戦闘では巧妙に接近してからケーブルを「やまと」のスクリューに絡めさせるがお互いに深深度潜航での「我慢比べ」という状態になり、深度1000m超の水圧に耐えかねてお互いに浸水被害が生じるも「やまと」の方が全く浮上する気配を見せなかったことから、ロボコフは海江田の狙いを察した上で「蠍の尾を断ち切るには、もうそれしかない」とケーブルを自ら切断して浮上し、魚雷を発射可能な深度での戦闘で決着を付けようとする。しかし、攻撃する好機をつかんだと発射した魚雷2本はあらかじめ設定されていた安全距離の2000mを突破するよりも早く、1950mの位置で自ら魚雷に突っ込んでくる形となった「やまと」に命中するも爆発には至らず、さらに正面から急速接近する「やまと」に回避運動を行うも避けきれずに接触を許し、右潜舵を破壊された。そしてその直後、政治将校のミハイル・セルゲイビッチ大佐が艦長を務めるシエラ級原潜から「やまと」に水中電話での交信が行われたことにより戦闘を終結した。また、物語後半では国連総会へ海江田が出席するべくニューヨークを目指していた「やまと」に対して防衛戦を挑む構えのアメリカ海軍大西洋艦隊、そしてアメリカ軍の最高指揮権保持者であるニコラス・J・ベネット大統領の思惑とは全く異なる、核保有国や原潜保有国が独自に自国海軍の優秀な原潜を派遣したことで、結果として時を同じくしてニューヨーク沖に姿を現した「五ヵ国原潜」の中の1隻としてロシア海軍所属(本作の連載期間中に、ソ連崩壊とロシアの成立が起こった)の「アルファ級原潜の3番艦(艦名不明)」が登場し、最終的には他の4隻共々「やまと」に共鳴して「沈黙の艦隊」に参加した。


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