アルディ_(アルディピテクス)
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手の指が長いのは類人猿と同じだが、類人猿と違って手のひらが短い[41]。ナックル歩行をしていたと見なせる痕跡は見出せず[44]、手で体重を支えるときには手のひらをつくようにしていたと考えられており、樹上ではそういう四足歩行をしていたと見られている[41]

樹上生活もしていたといっても、腕の長さは類人猿と明らかに異なる。腕の長さを脚の長さで割って100をかけた数値を出すと、ゴリラもチンパンジーも100を超える。これに対してアルディの場合は約90で、現代人(約70)ほどでなくとも類人猿との違いが見られる[33]
下半身

アルディの場合、足の骨も良好に残っており、足に関する重要な特色が読み取れる。現代人の足指は親指と他の指が同じ方向に並んでおり、これはルーシーなどでさえそうであった[41]。しかし、アルディの場合、親指は他の指と対向的についており、物をつかむことができた[2]。ただし、チンパンジーの足は木の枝をつかむのに特化しているが、アルディの足は歩行にも適していた[45]。足根中足部は直立二足歩行に耐えられる頑丈さを備えており[2]、チンパンジーやゴリラには見られない種子骨の一種が体重を支えられるように足裏を補強していた[41]。また、親指以外の4本足はそらせることが可能になっていた[34]。それらの事実から、地上での移動には二足歩行を用い、樹上での移動には四足歩行を用いていたと考えられている[46][47][48]。アルディの歩行能力は、のちのホミニンに比べれば原始的で、長距離の歩行や走行はできなかったであろう[49]。足の構造が持つ両面性からは、餌の獲得のために地上に降り、寝泊りする場所はまだ樹上にあったのではないかという指摘もある[50]

現生人類の骨盤は上下に短く左右に広い構造をすることで、直立時に上半身を支えやすいようになっている。アルディの場合、アウストラロピテクス・アファレンシスのルーシーと比べてさえも上下に長く[51]、より原始的な特徴を備えている。直立二足歩行の能力で劣ったことが指摘されているが[51]、骨盤上部には直立歩行に適応するような要素も認められる[2]。また、木登りに適した特色が混在しているとも指摘されている[2]。腰の骨と仙骨の近接具合がその後のヒトの構造に共通すると指摘する者や[34]腸骨にアウストラロピテクス属に共通する特色が見られると指摘する者もいる[52]
生息年代・環境

生息していた年代である440万年という数字は、アルディが発見された地層をはさんでいた火山灰層のどちらからも、アルゴン-アルゴン法でその数値がはじき出されたからである。結果としてアルディのいた地層はその間の100年から1万年程度のうちに堆積したと推測されている[53][54]

また、一緒に出土したのは森林に生息するレイヨウサルの一種などの化石や種子・木片の化石などで、その生息環境には森林が身近にあったことをうかがわせる[2]。前述の砂まじりの食物をあまり摂っていなかったらしいという歯の特色も、サバンナで暮らしていたアウストラロピテクス属と違い、サバンナへの本格的な進出をしていなかったことをうかがわせる[36]。アルディが暮らしていた環境は、森林とサバンナが入り混じるようなものだったろうと推測されている[55]。その推測は、かつて広く知られていたイヴ・コパン(フランス語版)の仮説「イーストサイドストーリー」が誤っていたことを示している[56][注釈 6]
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 2010年代初頭の時点で、10万年以上さかのぼるホミニンの全身骨格は、トゥルカナ・ボーイホモ・エレクトゥス、約153万年前)、リトル・フット(英語版)(アウストラロピテクス・アフリカヌス?、約220万年前 - 約400万年前)、ルーシーアウストラロピテクス・アファレンシス、約318万年前)、セラム(同前、約332万年前)、そしてアルディの5体のみである(河合 (2010) pp.21-23 etc.)。
^ 1994年に公表された当初はアウストラロピテクスの新たな種「アウストラロピテクス・ラミドゥス」とされたが、翌年に新たな属に含まれる化石として「アルディピテクス・ラミドゥス」と位置付けなおされた(ロバーツ (2012) p.70)。
^ 厳密に言えば、発見者の一人は1974年にこの学名を公表していたが(ロバーツ (2012) p.68)、当時は大臼歯1本しか見つけておらず、同じ年のルーシー発見の衝撃の陰に隠れて、まったく省みられなかった(河合 (2010) pp.28-29)。
^ このうち、カダバのみは、アルディと同じくホワイトの研究チームのハイレ=セラシエが発見した(河合 (2010) p.33)。
^ 指背歩行などとも言う。両手のこぶしを地面につける四足歩行。
^ もっとも、イーストサイドストーリー自体は、チャドでのアウストラロピテクス・バーレルガザリやサヘラントロプス・チャデンシスの発見によって、アルディの公表を待つまでもなく、すでに説得力を失っていた(cf. 河合 (2010) pp.95-96)

出典^ a b 河合 (2010) p.23
^ a b c d e f g h i j ロバーツ (2012) pp.70-71


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