アルディ_(アルディピテクス)
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アルディの身長は120 cm、推定体重は50kg[29]、身長に比べて体重がかなり重い(参考までに、性的二形が著しいという説もあるアウストラロピテクス・アファレンシスの場合、成人オスは身長151 cm、体重42 kg、メスは身長105 cm、体重29 kgという数値がある[30])。この重さは、アルディピテクス・ラミドゥスの雌雄の性差が小さかった可能性と結び付けられている[31]
頭蓋骨

復元された頭蓋骨から、脳の大きさは300ccから370ccと見積もられている[2]。この大きさは700万年前のサヘラントロプス「トゥーマイ」の脳(320ccから380cc[32])とも大差なく300cc前後におさまるチンパンジーの脳[21]とも、大差のない数値といえる[33]。前寄りに位置する大後頭孔は、後述する直立二足歩行の特色を補強する[34]

現存最古の「トゥーマイ」の場合、眼窩上隆起にかなりの厚みがあり、メスのゴリラと見なす少数意見の論拠にもなっているが[35]、アルディのそれは薄い[2]

アルディの歯はそれほど磨り減っていないため、正確な年齢は不明だが、若い個体だったろうと推測される根拠になっている[8]。歯の磨耗の度合いなどから、アウストラロピテクス属に比べ、磨耗を促進する砂まじりなどの食物をあまり摂取していなかっただろうとも推測されている[36](この点は後で再び触れる)。

アルディピテクス・ラミドゥスの全身骨格はアルディしか見つかっていないが、歯については少なくとも35個体分が出土しており、犬歯についても20個体分の統計を取ることが可能である[37]。もっともよく見つかる化石が歯であるためだが、諏訪は単に大きさを比較するだけにとどまらず、エナメル質の厚さの測定や象牙質部分のみの分析などまで積み重ねた[38]。分析の結果、犬歯の性差はかなり小さく、アルディはその中でも小さい部類に属することから、性別はメスと判定された[37][39]

チンパンジーの場合、オスの犬歯が発達しており、集団内でのメスの獲得や他群のオスとの争いに用いられる。かつてはヒトもチンパンジーのように大きな犬歯を持っていた状態から、進化の過程で犬歯を小型化していったと考えられていたが[5]、アルディ(および他のアルディピテクス・ラミドゥスたち)の犬歯はチンパンジーのように雌雄の性差が大きいものではなく、ヒトが進化の過程で犬歯を小型化させたのと同じように、チンパンジーも進化の過程で犬歯を大型化させていったことを示唆している[39]。アルディの時点で犬歯はそれほど大きくなく、雌雄差も大きくなかったことから、ラヴジョイは特定のオスが特定のメスに食糧を供給する一夫一婦型のような関係が築かれていたと推測している[39]。これはチンパンジーの多雄多雌型とも、ゴリラの一雄多雌型とも違う関係であり、特定の妻子に多くの餌を持ち帰るために両手を使おうとしたことが、直立二足歩行を促したのではないかというわけである[40][38]

ほかの歯については、ゴリラやチンパンジーがそれぞれの食性の選好に合わせて歯を特殊化していったのに対し、そういう特殊化の要素は見られない。この事実は、アルディピテクス・ラミドゥスの食生活がゴリラやチンパンジーとは違い、特定の食物への選好を強めたりしない雑食型であったことを示している[39]
手・腕アルディの手

アルディには残りにくい細かい部位も含めてかなり良好な手の骨が保存されていた[2]。かつて人類と類人猿の共通祖先が類人猿に近いと考えられていたときは、それは類人猿がやるような「ナックル歩行」をやっていた可能性も考えられていたが、アルディの手の構造は明らかにそれと違っていた[41][42]

体に比して手は大きく、現代人女性と大差はない[43]。手の指が長いのは類人猿と同じだが、類人猿と違って手のひらが短い[41]。ナックル歩行をしていたと見なせる痕跡は見出せず[44]、手で体重を支えるときには手のひらをつくようにしていたと考えられており、樹上ではそういう四足歩行をしていたと見られている[41]

樹上生活もしていたといっても、腕の長さは類人猿と明らかに異なる。腕の長さを脚の長さで割って100をかけた数値を出すと、ゴリラもチンパンジーも100を超える。これに対してアルディの場合は約90で、現代人(約70)ほどでなくとも類人猿との違いが見られる[33]
下半身

アルディの場合、足の骨も良好に残っており、足に関する重要な特色が読み取れる。現代人の足指は親指と他の指が同じ方向に並んでおり、これはルーシーなどでさえそうであった[41]。しかし、アルディの場合、親指は他の指と対向的についており、物をつかむことができた[2]。ただし、チンパンジーの足は木の枝をつかむのに特化しているが、アルディの足は歩行にも適していた[45]。足根中足部は直立二足歩行に耐えられる頑丈さを備えており[2]、チンパンジーやゴリラには見られない種子骨の一種が体重を支えられるように足裏を補強していた[41]。また、親指以外の4本足はそらせることが可能になっていた[34]。それらの事実から、地上での移動には二足歩行を用い、樹上での移動には四足歩行を用いていたと考えられている[46][47][48]。アルディの歩行能力は、のちのホミニンに比べれば原始的で、長距離の歩行や走行はできなかったであろう[49]。足の構造が持つ両面性からは、餌の獲得のために地上に降り、寝泊りする場所はまだ樹上にあったのではないかという指摘もある[50]

現生人類の骨盤は上下に短く左右に広い構造をすることで、直立時に上半身を支えやすいようになっている。アルディの場合、アウストラロピテクス・アファレンシスのルーシーと比べてさえも上下に長く[51]、より原始的な特徴を備えている。


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