アルコール使用障害
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

抗酒剤を飲んで大量飲酒をすると命にかかわる危険があるため、医師の指導の下、本人への充分な説明と断酒の決意を行った上での服用が必須である[21]。アルコール依存者に知られぬよう密かに投与するようなことは厳禁である[21]

シアナミドジスルフィラム(商品名は「シアナマイド」と「ノックビン」)の2種が日本では認可されている。

治療薬

抗酒剤とは別に、飲酒欲求そのものを抑制する薬剤物質としてのアカンプロサート(商品名「レグテクト」)が2013年から日本でも使用され始めた。服用に際しては自助グループや精神療法との併用が効果的で望ましい。

アカンプロサート - 脳内の伝達物質(飲酒欲求にスイッチを入れる物質)であるグルタミン酸によって引き起こされる脳内の過剰な欲求を緩和する。即ち、アカンプロサートが、神経細胞の受容体(スイッチによる命令を受け入れる部署)を封鎖して、伝達物質グルタミン酸分子の受容体への付着を防止することで欲求命令の伝達を防ぐ。アルコール依存症者の脳にはこのグルタミン酸が特に多量に見られる(原因は不明)。全ての患者に効能が認められるわけではないが、アルコール依存症者の治療にアカンプロサートが投薬され、一定の成果を挙げている[26][29]

ナルメフェン:飲酒の前に服用することで、飲酒量を減らす効果がある。減酒を目的とした治療に有効であり、日本では2019年に承認された(商品名:セリンクロ)[36]

ナルトレキソン[26][29]

バクロフェン - 海外で有効性が報告されている。日本ではアルコール依存症を適応として持たない。

ゾニサミド - 抗てんかん薬パーキンソン病治療薬。海外で有効性が報告されている。日本ではアルコール依存症を適応として持たない。

ベンゾジアゼピンは、急性アルコール離脱の管理に有用な一方、長期的に使用した場合はアルコール依存症を悪化させる[8]。ガイドラインでは、原則7日以内とし、遷延性離脱症候群のケースであっても4週間を超えてはならない[8]。アルコール依存症に対して慢性的にベンゾジアゼピン系を処方した場合、服用していないケースよりもアルコール断絶を達成できる確率は低い。しかし、この種類の薬は、一般的に不眠や不安の管理のために、アルコール依存症者に処方されている[37]。ベンゾジアゼピンまたは鎮静催眠薬が回復過程で投与された患者は、鎮静催眠薬を処方された後に再発する確率が高く、4倍以上であった。ベンゾジアゼピンの長期的服用者は急激な断薬をすべきではない。それは重度の不安とパニックが生じる可能性があり、アルコール乱用の再発の危険因子であると知られている。6?12か月の減薬が、離脱の強度を減少させ、最も成功しやすいことが判明している[38][39]

1960年代と1970年代の6件の研究の遡及的分析によれば、LSD補助心理療法はアルコール依存症の治療としての可能性がある[40]

心理療法

治療者は初診ではまず、受診したことを大きな一歩としてしっかりとねぎらい、患者の困りごとを丁寧に傾聴し、その解決を優先してサポートするという姿勢で、信頼関係を構築することが重要である[41]。その上で、以下のような心理療法を行っていく。
動機づけ面接法

アルコール依存症をはじめ、依存症全般で動機づけ面接法の有効性が確認されている[42]。動機づけ面接法を進めていく中で、患者と治療者の間に共通理解が増え、治療同盟の構築が可能になる[42]。動機づけ面接法による非対決的な関わりと治療同盟、治療者が患者を共感的に理解しようとする温かいまなざしは、高い治療効果を持つ[42]。加えて、人生の目標を実現したり好きなことに取り組んだりできるという断酒のメリットを実感できるよう支援するとともに、短期間の断酒やささいな変化も賞賛して成功体験として認識できるようサポートし、患者に寄り添いながら断酒への動機の形成を援助していく[43]
認知行動療法

認知行動療法の有効性は古くから確認されてきた[42]。認知行動療法では、自らの飲酒衝動や飲酒行動のメカニズムを知り、衝動の回避方法やストレスへの対処方法等を身につけることなどをサポートする[42]。なお、治療にあたっては、認知行動療法単独で実施するのではなく、認知行動療法を他の治療法(薬物療法動機づけ面接法自助グループへの参加など)と組み合わせて実施することが推奨される[42]
多重の中毒

アルコール依存では、その他の向精神薬依存治療をも必要なことがある[2][44]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:127 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef