アルコール使用障害
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何よりもまず、本人に疾患の自覚(病識)と治療の意志を持たせることが大切であり、回復への第一歩となる[21]。心身や生活への影響をなるべく抑えるためには、早期の治療開始が望ましい[28]

アルコール依存症の人の過剰な飲酒は「意志が弱いから」「道徳感が低いから」と言われたり、不幸な心理的・社会的問題が原因であると考えられたりしがちだが実際はそうではなく、多くの場合この病気の結果であることが多い。つまり、アルコールによって病的な変化が身体や精神に生じ、そのために過剰な飲酒行動が起こるということである。このことをまず本人や周囲の者が理解し、認めることが、この病気から回復する上での欠かせない第一歩となる。しかし援助者は、治療という名目で処罰を与えてはならない[29]

アルコール離脱症候群までに至っていなければ、飲酒量を減らす減酒もある程度有効であるが、一度アルコール依存症になってしまうと、基本的な対処は酒を一切飲まない断酒しかない[28]。しかし本人の意志だけでは解決することが難しいため、周囲の理解や協力が求められる。重度の場合は入院治療が必要な場合もある。しかし完治することはない不治の疾患とも呼ばれる事があり、断酒をして何年、十何年と長期間経過した後でも、たった一口酒を飲んだだけで、遅かれ早かれまた以前の状態に逆戻りしてしまうケースが多い[21]。そのため、治療によって回復した場合であっても、アルコール依存症者が一生涯断酒を続けることは大変な努力を要する。
急性期の管理

急性期のアルコール離脱症候群の管理には、ベンゾジアゼピンクロルジアゼポキシドジアゼパム)、カルバマゼピンが用いられる[29][30][31]。NICEはクロメチアゾールも選択肢の一つであるが、入院患者に限って注意深く使用すべきであり[30]、乱用リスクがあるため外来では処方してはならないとしている[32]。振戦せん妄の管理には、ロラゼパムが第一選択肢である[30]抗精神病薬は、精神病症状が出ている期間に限って使用できる[29]

また外来治療の場合、オーバードーズや転用リスクがあるため、常に2日分以上の薬を患者が保持しないよう処方すべきである[31]
心理社会的ケア「集団精神療法」および「自助グループ」も参照

治療法は現在のところ断酒以外にない[21]。しかし、依存性薬物であるアルコールを断つことは並大抵の努力ではなく、一生涯これを続けることは想像以上の困難または精神的苦痛を伴う。このため、断酒をサポートする様々な試みがなされている。

全てのアルコール乱用者には、須らく自助グループ(例えばアルコホーリクス・アノニマスやSMART Recovery(英語版)など)の情報提供を行うべきであり、かつそれらに参加を支援・奨励されるべきである[33][29]
アルコホーリクス・アノニマス(AA)
アルコール依存症患者の自助グループ。断酒会の原型である。1930年代にアメリカ合衆国で始まり、世界180か国以上に拡がっている。基本テキストである通称ビッグブックは、70か国以上に翻訳されている。アルコール依存からの回復のために「ミーティング」と呼ばれるグループワークや、「12ステップ」という回復のプログラムを用いる。プライバシーを守るため、また、個人よりも原理を優先させるために、フルネームは名乗らない。よって断酒会とは異なり、名簿や会費もなく組織化もされない。アルコール依存症者のみが参加できるクローズド・ミーティングと、家族や医療関係者など外部の人も参加できるオープン・ミーティングがある。さらには女性だけのミーティングや若者だけのミーティングもある。マーティ・マンはこの会で女性として初めて断酒に成功したと言われている[34]
断酒会
アルコール依存症患者とその家族によって作られた自助グループ。会費制で、組織化されており、外部に対してもオープンな姿勢を取っている日本独自の団体。断酒を続けることを互いにサポートし合い、酒害をはじめ、アルコール依存に対する正しい理解・知識を広く啓蒙する活動を行っている。

また、ストレス解消のために飲酒がなされることもあることから、飲酒に代わるストレス対処方法(「ストレス管理」「リラクゼーション」も参照)を身につけるための支援・サポートの必要性も示唆される[35]。「セルフケア不足看護理論」も参照


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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