アリ
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巣の外で餌を見つけると、その場で摂食して素嚢に納めて巣に持ち帰る場合もあるが、丸ごと、あるいは刻んで運ぶ行動がよく知られている。中には、砂粒に蜜をまぶして持ち帰るような、道具を使うアリもいる。その際、アリ達が列をなして行き来するのが見られるが、これは同じ家族の働き蟻によって通り道に残された足跡フェロモンをたどって行くことによるもの。古くはアリは道を覚えて歩くと考えられており、ファーブルの存命時にはこれが解明されていなかった。ちなみにアリ達がなんらかの原因で円を描くように列をなすと、足跡フェロモンをたどる習性が仇となり、延々と渦を巻くように力尽きるまで回り続けることがある[4]
社会

アリは - 幼虫 - - 成虫という完全変態を行う。卵から蛹までを保護しながら家族単位で生活することがよく知られている。蛹では繭を作る種類と作らない種類がある。いわゆる社会性昆虫の代表格であり、真社会性を持つが、実際にはかなりの多様性を含んでいる。

成虫は性別やコロニー内での役割に応じて「女王アリ」「働きアリ」「兵隊アリ」「雄アリ」「新女王アリ」と分化していることが一般的によく知られている。一般的には、雄アリと女王が交尾し、その後、女王が単独で営巣、産卵する。孵化した子が成長すると働きアリとなり、その後は女王が働きアリを産み続けることで、コロニーは大きくなる。女王が複数存在する例も少なくない。しかし中にはアミメアリのように「働きアリ」だけで卵を産んで増えるものもいる。

アフリカ大陸サブサハラに生息するマタベレアリでは、シロアリの巣を襲う兵隊アリのうち、負傷した仲間を救護する「衛生兵アリ」が確認されている(ドイツビュルツブルグ大学などの研究)。また、ボルネオ島には、腹部を「自爆」させて毒液を外敵に浴びせて撃退する兵隊アリを擁する種がおり(オーストリアウィーン工科大学などの研究)、コロニーとしての存続を優先する行動が見られる[5]

分化と複雑な役割を、個体がたがいに認識できるのは、情報化学物質が伝達を担っているという化学生態学の研究がなされている。
社会寄生

他種の働きアリの労働に依存して生活するものを、社会寄生という。これを行うアリは少なくない。これにはいくつかの形がある。

サムライアリ奴隷狩りをするのでよく知られる。このアリは、クロヤマアリなど、他種のアリの巣に集団で侵入し、を持ち帰る。そこから生まれた成虫は、サムライアリの巣の中で、働きアリとして働く。往々にして、巣内の八割が奴隷であるという。似た方法をとるものに、アカヤマアリなどもある。

これに対して、トゲアリの場合、新女王はクロオオアリなどの巣に侵入し、女王を殺して、その後に居座る。そこで産卵をして、その巣のアリに世話をさせる。やがて自分の子が増えて、元の巣のアリが死亡してゆくことで、単独の巣になる。それ以降は他種の世話にはならない。このようなものを、一時的社会寄生という。

さらに、宿主の女王を殺すことなく共存して、自分の子供を他種に育てさせる種がいる。このようなものを完全社会寄生というが、その中でも働きアリを産む種と、働きアリを産まずメスとオスのみを産む種とがある。ウメマツアリに寄生するヤドリウメマツアリには働きアリがいない[6]
巣とコロニー

コロニーは基本的に家族単位の群れである。つまり、女王アリと、その娘である多数の働きアリや兵隊アリ、新女王アリ、それに息子の雄アリからなる。女王アリは普通1匹だが、クロナガアリなど何種類かは数匹の女王アリが協力して巣を作る[7](多雌性)。多くは地中にを作るが、枯れ木や竹等に出来る空間に巣を作るものや、決まった場所に巣を作らず卵・幼虫・蛹ともども移動しながら生活するグンタイアリのような種類もいる。アリ植物は植物体の上に巣となる空洞部を提供する。ツムギアリは生きた木の葉を幼虫の出す糸で綴り合わせて巣とする。

一つのコロニーに複数の巣を作り、構成員を分散させる例も多い(サテライト)[8]。また巣の入り口に盛り上がった塚を作る例もある。ただし、より巨大な蟻塚を作るものはなく、いわゆる蟻塚を作るのは普通はシロアリである。典型的な「アリの巣」については該当項を参照のこと。
繁殖

年に一度(一定の期間)、成熟した巣から羽を持つ新女王アリと雄アリが多数飛び立ち、結婚飛行を行い、空中で交尾をする。結婚飛行の時期は種類や地域によって大きく異なり、春から秋にかけて行われる。空中で交尾した雄アリは力尽きて死ぬが、新女王アリは貯精嚢に交尾した雄アリから得た一生分の精子を貯蔵し、地上に降り立った後に自ら羽を落とし、巣穴を掘るか木の皮の隙間などに潜むなどして女王アリとしての最初の産卵行動に入る。グンタイアリ亜科など一部の種では、ミツバチのように新女王がはじめから働きアリとともに巣分かれして、新しいコロニーを作る。

アリはハチと同様に受精卵からは2倍体の雌が、未受精卵からは半数体の雄が生まれる。ただし、アミメアリのように女王アリが存在しない種類では、働き蟻が産卵する卵であっても2倍体の働きアリが生まれる。女王アリは産卵時に有精卵無精卵を生み分けることができるといわれ、通常、初期のコロニーでは雄アリが生じることは少ない。有精卵はすべて雌性となり、与えられる餌やフェロモンなどによって働きアリになるか新女王アリになるかが左右される。働きアリは通常、女王アリからのフェロモンによって、不妊の状態に制御されているが、女王アリが欠けた場合には卵巣が発達して産卵を開始することがある。この場合、残ったアリは働くことをやめるなどして不活性化していき、やがてその家族は滅んでしまう。

働きアリは女王の世話、卵と幼虫の世話、餌の運搬などの仕事を分担する。外で餌を探しているアリは大抵老齢のアリである。多くの働きアリは巣の中にとどまり、その中に食料を蓄えるなどの役目を果たす。
進化史

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有剣類 Aculeata

セイボウ上科 Chrysidoidea

 

 

スズメバチ科 Vespidae

トゲヒゲバチ科 Rhopalosomatidae



 

 

クモバチ科 Pompilidae

コツチバチ科 Tiphiidae



 

ツチバチ上科 Scolioidea

 

ミツバチ上科 Apoidea

アリ科 Formicidae












アリ科の系統的位置[9]

アリのような小型の昆虫は潰れやすいために化石になりにくく、もしあったとしてもその小ささから発見もしづらい。そのため進化の過程を解き明かす証拠は少なく、まだ不明な部分も多い。

だが琥珀に内包され化石化したものが存在する。これは形を維持したまま固化し、光を通すので形状の観察も容易である。

また、分子系統学により遺伝子型の比較でも現存種間の分化が調査、整理されつつある。

遺伝子分析によると、ジュラ紀又は白亜紀アナバチミツバチ上科 Apoidea)との共通祖先から分化したと推定されている。ブラジルの1億1200万年-1億年前の層からは、Cariridris bipetiolata(レイメイアリ)の化石が発見されている。この種はアケボノアリではなく、原始的なキバハリアリに似ている。9000万年前では、コハク中の化石からアケボノアリやヤマアリ亜科、ハリアリ亜科が見つかっている。この時代では、琥珀に含まれるアリは含有される昆虫中0.001-0.05%と比較的少数である。アケボノアリは腹柄や後胸腺があるが触角柄節が短く、現在のアリよりも古くに分化したアリである。

6000万年前、K-Pg境界後では、コハク中のアリの含有割合が1.2%と増加した。

4500-3800万年前のコハクでは含有割合が20-40%を占め、現存の亜科もほぼ出揃った。また4500万年前の層からメッセルオオアリが発見されている。これはアリの中では最大の種で、雌アリは羽を広げると15cmにもなる。
分類

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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