アラーウッディーン・ハルジー
[Wikipedia|▼Menu]
また、将軍のガーズィー・マリク(後のトゥグルク朝の創始者ギャースッディーン・トゥグルク)をアフガニスタンの山岳地帯に駐留させ、インド北部への侵入を繰り返すモンゴル軍を撃退させてインド北部の草原地帯の安全を確保した[15]

こうしてハルジー朝の軍隊はモンゴル軍との戦いで勝利を重ね、ハルジー朝・トゥグルク朝に出仕した歴史家バラニーの言うところではムガル人(モンゴル人)はイスラーム軍を極度に恐れたので、ヒンドゥスターンを征服するという夢は彼らの頭からきれいに消え去った ? バラニー

という、ハルジー朝がモンゴル軍に対して優位に立つ戦況になった[15]
インド亜大陸での遠征活動

1299年にはグジャラートのヴァーゲーラー朝(後期チャールキヤ朝の後継国家)にムルターンのウルグ・ハーンとデリーのヌスラト・ハーンを派遣し、国王カルナ2世の軍をアーシャーパッリー(現在のアフマダーバード)近郊で破り、首都アナヒラパータカを攻略した。アラーウッディーンは征服地に長官を置かず、またヴァーゲーラー朝と臣従関係を結ぶこともなく、軍隊をデリーに引き上げさせたためにカルナ2世が従来通りグジャラートを統治するが、カルナ2世と婚姻関係を築いた後に彼が謀反を企んでいる情報が入ると、1304年に再びグジャラートに軍を進め、ヴァーゲーラー朝を滅ぼした[16]

1299年のグジャラート遠征の帰途で、戦利品の分配に不満を持ったハルジー朝内のイスラム教に改宗したモンゴル人(新ムスリム)がジャーロール(英語版)近郊で反乱を起こし、彼らから助けを求められたランタンボールのチャウハーン朝が反乱者を保護する事件が起きる[17]。この事件がきっかけとなってウルグ・ハーン、ヌスラト・ハーンが率いる10000の軍隊をランタンボールへ派遣し[18]、ヒンドゥワートでランタンボール軍を撃破する。ハルジー朝側は反乱者の処刑と貢納品を要求するがランタンボールの王ハンミーラは要求を拒絶し、ランタンボール城砦に籠城した。兵糧攻めの末にハンミーラは突撃を敢行して部下と共に戦死し、ランタンボールの内通者を主人を裏切った者は信用できないとして処刑[19]、ランタンボールをウルグ・ハーンの統治下に置いた。また、アラー・ウッディーンは反乱に直面して、治安維持を名目にデリーの郊外に居住する反乱者の子を虐殺し、妻女を奴隷とした[20][21][15]。この行為について宮廷の歴史家バラニーは男たちの罪を彼らの妻子に負わせる前例は無いと、虐殺を批判する記述を残した[21]

1303年メーワールを支配するグヒラ朝の王が籠るチットール城砦を陥落させ、1299年の新ムスリムの反乱で、反乱軍を支援したジャーロールのチャウハーン朝(ソーニーグラー朝)へもハルジー朝の軍隊が送られた。1305年にジャーロール城砦を包囲した後、アラーウッディーンは朝貢を条件としてジャーロール王カーンハダデーヴァを許し[21]、カーンハダデーヴァはハルジー朝の呼びかけに応じてデリーの宮廷を訪れたが、カーンハダデーヴァ親子はデリーに人質を置くことを拒んでジャーロール城砦に立て籠もり、再びハルジー朝に敵対した[22]1308年にアラーウッディーン率いる軍はシワーナー城砦を攻略し、各地でジャーロール軍と交戦した後、ジャーロール城砦を包囲しての兵糧攻めを行った。ジャーロール軍は都市の富裕商人から食料の供給を受けて奮戦するが[23]1311年にジャーロールの内通者の手引きによってハルジー軍は城砦の中に入り[23]、城内のカーンハダデーヴァと一族と家臣、婦女子が戦死した末に[22]、ジャーロールはハルジー朝の支配下に収まった。
マリク・カーフールの南征クトゥブ・ミナールとその建造物群(クトゥブ・ミナールと周辺遺跡群(英語版))内のアラー・ウッディーンの墓

モンゴル軍の侵入は1308年の攻撃を持って一旦終息し、ラージャスターンのラージプート国家の征服事業も1308年までにはジャーロールを残してほぼ完了していた[24]

かつて臣従させたヤーダヴァ朝が貢納を拒むと、1307年にヒンドゥー教徒から改宗した解放奴隷マリク・カーフールに軍を預けてヤーダヴァ朝に向かわせ[25]、王のラーマチャンドラを捕らえてデリーへ連行した[26]。アラー・ウッディーンはデリーに送られたラーマチャンドラを丁重に扱い、彼に金品とグジャラート地方に領地を与え、婚姻関係を結んだうえで同盟を結んだ[26]。カーフールはヤーダヴァ朝をデカン高原のヒンドゥー教国遠征の拠点として[27]、1309年頃にマディヤ・プラデーシュ北部のチャンデーラ朝を滅ぼし、1310年には、カーカティーヤ朝の首都ワランガルを陥落させ、翌1311年にはるか南方のホイサラ朝の首都ドゥバーラサムドラを攻略し、ホイサラ王バッラーラ3世をデリーまで連行している。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:88 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef