1996年には初の小説本 Voice of the Fire(ビクター・ゴランツ刊)が出た。紀元前4000年から現代までの出来事を描いた短編連作で、時代は異なれどすべてムーアの生地ノーサンプトンが舞台となっている[264]。言語や文化の発展を再現した実験的な語り口で書かれており[264]、全体として想像力と「幻視」が私たち自身をどのように形作ってきたかについてのストーリーとなっている[265]。 ムーアは1993年にメインストリーム・コミックに復帰して再びスーパーヒーロー作品を発表し始めた[163]。その意図としては、自身の脱構築的アプローチが低質なエピゴーネンを生み出したことに責任を感じ、コミックに「喜びと純真さ」を取り戻そうとしたのだと語っている[163]。しかし衆目の見るところによると、前言を翻した理由には経済的なものもあった[266]。個人資産を投入した出版社マッドラブは Big Numbers の挫折と共に活動を停止していた[238]。社名の由来となったムーア夫妻ら3人の恋愛関係も数年しか続かなかった[267]。フィリスとデボラは娘たちを連れて2人で新しい生活を始め、1980年代の作品で稼いだ財産のほとんどを持ち去っていった[115][268]。このころムーアは魔術と神秘思想に傾倒し始めたが(後述)、自身ではそれを「ミッドライフ・クライシスから目を逸らすため」のようにも語っている[269]。イメージ社の人気キャラクター、スポーン(写真)は地上に送り込まれた地獄の尖兵であり、「グリム・アンド・グリッティ」の風潮の典型だった[270]。
メインストリーム復帰とイメージ・コミックス: 1993年?1998年