1980年代に『ウォッチメン』でムーアの筆名が上がったころ、カメレオンズ(英語版)、ポップ・ウィル・イート・イットセルフ、トランスヴィジョン・ヴァンプ(英語版)のような英国バンドがムーアの作品にインスパイアされた楽曲を作っている[568]。パンクバンド、マイ・ケミカル・ロマンスのジェラルド・ウェイは音楽活動を始めるインスピレーションとなったのは音楽よりもまず『ウォッチメン』だと述べており、自身でも同作の影響を受けたコミックシリーズ The Umbrella Academy(2007年)の原作を書いてアイズナー賞を受けている[569]。
社会への影響2013年の11月5日(ガイ・フォークス・デー)に行われたミリオン・マスク・マーチ(英語版)。『Vフォー・ヴェンデッタ』の主人公が着用するガイ・フォークスの仮面は現実の政治行動に取り入れられた。
全12号のコミックブックとして世に出た『ウォッチメン』は当時の米国コミックとしては珍しく単行本(グラフィックノベルと呼ばれた)として再刊された。書籍版の人気はコミックブック専門店に足を踏み入れない読者層にも届き[570]、「もうコミックは子供の読み物ではない」という見方を広めた[511]。米国の図書館や一般書店にコミック(グラフィックノベル)が置かれるようになったのには同作の影響がある[571]。DC社によると、一般書店を通じた『ウォッチメン』単行本の販売数は25年間で200万部を超えた[570]。
『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』は米国の大学教育でよく題材にされている[14]。コミック文化の振興を目的とするコミック弁護基金が2019年に行った調査によると、米国の幼稚園から高等教育までの学校のおよそ半数でコミックの教育利用が行われており[572]、取り上げられることが多い作品の10位に『ウォッチメン』が挙げられている[573]。
『Vフォー・ヴェンデッタ』で主人公が着用するガイ・フォークスの仮面は、2005年の映画化を経て、現実世界において政治的反抗の象徴として広く受け入れられた[561][574]。占拠運動[575][576]、アノニマス[577]、エジプト革命[578]、反グローバリゼーションデモで使用例が見られる[577]。占拠運動の支持者で『オキュパイ・コミックス』を発刊した映画監督マット・ピッツォーロ(英語版)はムーアを運動の非公式のゴッドファーザーと呼び、同世代の世界観形成に大きな影響があったと語っている[331]。 日本では1990年代にアニメやゲーム、フィギュアを入り口にしたアメリカン・コミックのブームが起き[579]、その流れで代表作『ウォッチメン』が刊行された[580]。このときは大きなヒットにならなかったが[581]、間を置いて2000年代末にスーパーヒーロー映画との相乗効果によって「アメコミ第2次ブーム」が起きると同作の新版が市場をけん引することになった[579][582]。
日本での受容