アラン・ムーア
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

『ウォッチメン』や『Vフォー・ヴェンデッタ』は米国の大学教育でよく題材にされている[14]。コミック文化の振興を目的とするコミック弁護基金が2019年に行った調査によると、米国の幼稚園から高等教育までの学校のおよそ半数でコミックの教育利用が行われており[572]、取り上げられることが多い作品の10位に『ウォッチメン』が挙げられている[573]

Vフォー・ヴェンデッタ』で主人公が着用するガイ・フォークスの仮面は、2005年の映画化を経て、現実世界において政治的反抗の象徴として広く受け入れられた[561][574]。占拠運動[575][576]アノニマス[577]エジプト革命[578]反グローバリゼーションデモで使用例が見られる[577]。占拠運動の支持者で『オキュパイ・コミックス』を発刊した映画監督マット・ピッツォーロ(英語版)はムーアを運動の非公式のゴッドファーザーと呼び、同世代の世界観形成に大きな影響があったと語っている[331]
日本での受容

日本では1990年代にアニメやゲーム、フィギュアを入り口にしたアメリカン・コミックのブームが起き[579]、その流れで代表作『ウォッチメン』が刊行された[580]。このときは大きなヒットにならなかったが[581]、間を置いて2000年代末にスーパーヒーロー映画との相乗効果によって「アメコミ第2次ブーム」が起きると同作の新版が市場をけん引することになった[579][582]。同時期に人文学系の出版社みすず書房が初のコミック作品として出した『フロム・ヘル』もヒットし[583]、こちらは文学・美術ファンを対象にバンド・デシネを翻訳出版する動きにつながった[582]。日本の書評家、研究者、一般紙などからはアメリカン・コミック界の「鬼才」と呼ばれている[584][585][586][587][588][589]

日本にも熱心なムーアファンがおり[590][583]、ライトノベル『魔法少女禁止法』(伊藤ヒロ、2010年)やアニメ『コンクリート・レボルティオ?超人幻想?』(2015?2016年)のように、スーパーヒーローが実在する仮想歴史としての『ウォッチメン』から影響を受けた作品もある[591][592][593]

フロム・ヘル』などの翻訳者でもある柳下毅一郎は、ムーアの特徴的な格子状コマ割り(作風節参照)について、コマの大きさに強弱をつけて直感的に動きを感じさせる日本漫画の文法とは異質だと論じている。そのため要求される読み方も異なっており、日本漫画がスピーディーに読み進められるのに対し、ムーア作品は一つ一つのコマをじっくりと眺め、構図の中に圧縮された情報を読み解くことで初めて味わえるのだという。柳下はその違いが日本の読者にとって読みづらさになるとも指摘している[594]。これを踏まえて、『フロム・ヘル』日本語版の版元みすず書房は同作を日本の漫画とはまったく異なる方向の進化形と紹介した[595]。評論家上野ミ志は書評で「コマ割りされた静止画のもたらす緊迫感」「「グラフィック・ノベル」のダイナミズムは … 流動的な動き主体の [日本産] マンガからは失われたものかもしれない」と述べた[596]
人物2006年、サイン中のムーア。指輪や指甲冑を着け始めたのはメリンダ・ゲビーからのプレゼントがきっかけだった[18]

190 cm近い長身で[597]、若いころから髪とひげを伸び放題にしている[26]。ドキュメンタリー番組に出演した際、自分に救世主コンプレックスがあるか自問して「この髪でないわけないだろう?」と言ったことがある[598]。蛇頭の杖を携帯し[599]、大きな指輪をいくつも着用するのが常で[15]、[一見すると] 村の奇人変人だと書かれたことがある[600]

その風貌や政治的・闘争的な発言から気難しい世捨て人というイメージが広まっているが、実際に会うとサービス精神豊富で気さくな人物であることも報道されている[26][601]。ファンタジー作家マイケル・ムアコックは無名時代のムーアと同席する機会があって人柄に興味を持ち、作品を追うようになったと書いている。… 妥協を知らない爛々たる眼差し … そこにいるのは本物の予見者、進んでリスクを取る男、何があろうと夢を追い続ける過激で頭が沸いた人物のようだった[602]。後の2019年にムーアと会った作家スザンナ・クラークは、眼光の鋭さよりもいたずらっぽい表情が印象に残ると書いている[263]

自らミクロコズム(小宇宙)と呼ぶ生地ノーサンプトンに住み続けており、旅行することもめったにない[603]。ムーアはノーサンプトンの歴史や文化を Voice of the Fire や Jerusalem のような心理地理学的小説で描いている[603]。同郷の作家ジェレミー・シーブルック(英語版)(ムーアの初等学校時代の教師でもある)はノーサンプトン市民についてみな偏狭で迷信深く、吝嗇で狷介、かつ頑固だが、概して誇り高く言葉に嘘がないと書いている。伝記作家ランス・パーキンによるとこれらの言葉はムーアの一般的イメージにも当てはまる[604]

インタビューで語ったところでは、15歳でマリファナを、16歳でLSDを使用し始めた。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:616 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef