アラン・ムーア
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人気米国アニメ『ザ・シンプソンズ』に本人役で出演し、著作権をめぐるDCとの確執についてのジョークを演じたこともある[516][注 50]。このような闘争は作品にも反映されており、ジャクソン・エアーズによるとムーアは常に「企業化されたエンターテインメント/芸術家の個人的ヴィジョン」のダイナミクスをテーマとしている[519]。ダグラス・ウォークはムーアが商業性と芸術性の合間を行くコミックの道行きの先導者だと論じ、ポピュラーなコミックに文学性を持ち込んだこと、クリエイターを搾取する出版モデルと闘ったこと、身をもってコミック作品の価値を示したことを評価した[520]
批判

ムーアの作品には人種差別的、異性愛規範的、女性嫌悪的な表現があるにもかかわらず、ある種の批評と解釈されて見過ごされてきたという主張がある[521]。ただし、数多くの作品の中でそれらのテーマの描き方が一貫しているわけではなく、裏にあるムーアの思想を単純に図式化するのは難しい[522][523]。元来ムーアは、コミックに性的・人種的・社会的マイノリティの描写を取り入れることでは先駆的な立場にあった[8]。ムーアの批判者であるジャーナリストのローラ・スネッドンも、ムーアが芸術、男女同権フェミニズムなどで明確に女性を支持しており、コミック業界が抱える女性嫌悪と多様性欠如の問題を糾弾してきたことは認めている[524]フローレンス・ケイト・アプトンが描いたゴリウォーグとオランダ人形たち(1895年)。

ムーア作品で人種描写に関して批判されるのは The League of Extraordinary Gentlemen: Black Dossier(2007年)が代表である[521]。同作では、ヴィクトリア朝時代の黒人キャラクターであるゴリウォーグが(名前を変えて)登場する[420]。これはある観点では人種差別的な図像、ひいては人種差別思想に基づくメッセージを再生したことになる[521]。コミック研究者クレイグ・フィッシャーはムーア自身の人種差別意識に加えて西洋文化の中で人種差別的イメージが力を持ち続けていることの露悪的な告発、そして「ステレオタイプの誇張したパロディ」という多面的な意味があるのではないかと書いている[420]

ジャクソン・エアーズの考察によると、ムーアの作品は基本的にリベラルな傾向が強く、明確に人種差別批判を意図して書かれている作品もある[525]。ナチズムを継承した人種主義的な独裁政権が敵役となる『Vフォー・ヴェンデッタ』や[525]、スーパーヒーロー神話と白人優越主義の神話を結び付けて再考した『ウォッチメン』はその例である[526]。しかし『ヴェンデッタ』が完全に白人主人公たちのドラマとして描かれ、迫害される当の少数者が不在であるように、実際の描写が逆の効果を生む部分があるのだという[525]性的指向の描写についても同様で、ムーア自身はクィアへの支援者として出版・執筆活動を行っている[527][397]。しかしエアーズによると、『ウォッチメン』にはスーパーヒーロー・ジャンルが病的なクィアネスや暴力性の産物であるかのような描写が見られ、やはり異性愛規範を強化するような読み方ができる[528]
受賞

アメリカコミック界の主要な賞であるアイズナー賞ハーベイ賞、それらの前身であるカービー賞(英語版)[529]は数多く受賞している。以下のリストを参照のこと。

カービー賞受賞一覧年部門対象備考
1985原作者『スワンプシング』[530]
1985単一号『スワンプシング・アニュアル』第2号(ジョン・タトルベン、スティーヴ・ビセットとともに)[530]
1985定期シリーズ『スワンプシング』(ジョン・タトルベン、スティーヴ・ビセットとともに)[530]
1986原作者『スワンプシング』[531]
1986定期シリーズ『スワンプシング』(ジョン・タトルベン、スティーヴ・ビセットとともに)[531]
1986新シリーズ『ミラクルマン』(複数の作画家とともに)[531]
1987原作者『ウォッチメン』[531]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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