アラン・ムーア
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ムーアがメインストリーム・コミックに再復帰する見込みがなくなるにつれて、それまでムーアの意向を慮っていたDC社も『ウォッチメン』の著作権を行使することをためらわなくなっていった[注 43][348]。2009年の映画化や、2012年の前日譚シリーズ『ビフォア・ウォッチメン(英語版)』の刊行はムーアの意に反するもので、ファンや業界関係者の間でも賛否は分かれた[347]。2017年には『ドゥームズデイ・クロック』によって『ウォッチメン』が内容的にもDC社の作品世界に組み込まれた[347][348]

ムーアのコミックに対する毒舌は拡大していった[212]。2010年には「出版社が過去作のスピンオフを出したがるのは創造性の欠如」「業界に大した才能がいないのかもしれない」という趣旨の発言を行い[212][349]、DCやマーベルで原作者として活動するジェイソン・アーロンから「現代の作品を読んでもいないムーアの言葉に耳を貸すのは止めよう」と批判されるなど、現役クリエイターから反発を招いた[350][351]。ムーアは業界内で尊敬と同情を寄せられてきたが、潮目は変わり始めた[352]。2013年には、前世紀に子供の読み物として作られたヒーロー物が映画を通じて広い年齢層に受け入れられている文化状況を複雑極まる現代からの逃避だと発言し、ファンコミュニティからの怒りを買った[15][353]。ムーアはスーパーヒーロー・フィクションそのものに幻滅しており、自身の幼少期にそうだったように奇想天外な内容で子供の想像力をかきたてる物としては認められるが、大人が卒業せずにいるのは不健全な逃避だと主張した[354]

同じく2013年、ムーア作品に人種的ステレオタイプやミソジニー的な表現が見られるとしてオンラインの批判が寄せられた[355]。ウェブメディアが反論の場を設けると、ムーアは自身の立場を強く防衛し、批判者やコミック関係者への逆批判を行った[356][357]。さらに、以後同様の問題が起きないようにインタビューや公の発言を制限する、特にコミックに関わることについては発言しない、と述べた[358][355][359]

2016年9月、執筆に10年以上を費やした1000ページを超える長編小説 Jerusalem(→エルサレム)を刊行した[55][354]。生地ノーサンプトンの歴史、創作と想像力、魔術と超越性といった近年のテーマの集大成だった[360]。それとともに、新しい分野に挑戦するため「リーグ」シリーズの完結を最後にコミック原作から引退すると宣言した[361]。ポップカルチャーの歴史を通覧する大河長編となった「リーグ」最終作 Tempest では、メディア大企業によって管理されるスーパーヒーロー・キャラクターが偉大な英雄という概念そのもののディストピア的な終着点として描かれていた[362]。同作は2019年に完結し[363]、それ以降は予告通りコミック作品を発表していない[364][365]

2021年、5部作の長編ファンタジー小説 Long London などをブルームズベリー(英語版)から刊行予定であることが発表された[365]
執筆以外の活動音楽イベント I'll Be Your Mirror に出演し、詩を朗読した(2011年)[366][367]

1994年、神秘学の先達スティーヴ・ムーアとともに The Moon and Serpent Grand Egyptian Theatre of Marvels(→月と蛇の大エジプト魔術団)を結成した。ランス・パーキンによると「薔薇十字団フリーメイソンのパロディのような架空の秘術結社」であり[368]、後に二人は神秘学のハウトゥ本 The Moon and Serpent Bumper Book of Magic(→月と蛇の魔術大図鑑)も共作している[369][370]。ムーアは同年7月に団体名と同題で音楽や詩の朗読からなるパフォーマンス・アート公演を行った[368]


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