アラン・ムーア
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

ムーアの精力は小説執筆や神秘学関連のパフォーマンス公演のほか、マッドラブを復活させて2010年に発刊した21世紀最初のアングラ雑誌こと Dodgem Logic(→ドッジェム・ロジック[注 39])に注がれていた[322][323]。同誌はムーアの地元ノーサンプトンを地盤とする隔月刊誌で[323][324]1960年代のアンダーグラウンド文化を受け継ぐものだった[325]。ムーアは編集思想について「中央集権的な権威が力を失った今、個人主義的な文化をどう構築するか」「グローバル時代に地域をどうエンパワーするか」「来るべき企業主義文化の崩壊にどう対応するか」といった問題意識を挙げている[321]。誌面では地域のコンサート情報や節約レシピと並んで[321]ゲリラ・ガーデニングスクワッティングのような政治的行為のハウトゥ記事が載せられていた[321]。売り上げは地域貢献に充てられた[326]。同誌は8号が発行された後、資金難により2011年4月に廃刊された[326]

災害支援のためのチャリティ出版や、社会運動の資金調達のための出版物に寄稿することもあった[327]。2001年、アメリカ同時多発テロ事件の翌月にマーベル・コミックスが刊行した Heroes に This is Information[注 40]を書いた[327][328][注 41]。2013年には反グローバリゼーションの占拠運動(英語版)に賛同し、運動の資金調達のために刊行された『オキュパイ・コミックス(英語版)』にカウンターカルチャーとしてのコミック論を寄稿した[330][331]。2018年、前年に起きたグレンフェル・タワー火災の被災者へのチャリティとして刊行されたコミック・アンソロジー 24 Panels に詩を提供した[327][332]

この時期、スプラッター・ホラーで知られるニッチな出版社アヴァター・プレス(英語版)がムーアの未発表原稿や散文作品のコミック化を行った[333]。2003年にはクトゥルフ神話関連作を集めたアンソロジー Yuggoth Cultures and Other Growths と、クトゥルフテーマの短編小説を原作とする「中庭(英語版)」全2号が出た。翌年の A Hypothetical Lizard(→仮想の蜥蜴)全1号は世界幻想文学大賞にノミネートされた1980年代の中編小説が元になっている[334]。2012年には全10号のコミック Fashion Beast [注 42]が刊行された。原作はムーアが1985年に書いた未発表の映画脚本で[335]、音楽プロデューサーのマルコム・マクラーレンから依頼されたものである。クリスチャン・ディオールの生涯をモデルにして異性装と『美女と野獣』を組み合わせた作品の企画だった[335][336][337]

原作者としての活動末期にはもっぱらホラー作品に注力した[338]。DC離脱によって税金の支払いに窮したムーアはアヴァターからのオファーを受け[339]、「中庭」の作画を手掛けたジェイセン・バロウズ(英語版)と組んでコミックオリジナルのクトゥルフ作品『ネオノミコン』(全4号、2010?2011年)[340]、『プロビデンス(英語版)』(全12号、2015?2017年)を出した[341][342]。ジャクソン・エアーズはこれらの作品を… そこで描かれる暴力と荒廃感には、ムーアが考える現代文化の恐るべき実相が込められていると書き、ラヴクラフトのパルプ・フィクションからジャンル小説やコミックに受け継がれた人種差別性やセクシュアリティ観の系譜を批評的に描き出していると論じた[343]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:616 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef