災害支援のためのチャリティ出版や、社会運動の資金調達のための出版物に寄稿することもあった[327]。2001年、アメリカ同時多発テロ事件の翌月にマーベル・コミックスが刊行した Heroes に This is Information[注 40]を書いた[327][328][注 41]。2013年には反グローバリゼーションの占拠運動(英語版)に賛同し、運動の資金調達のために刊行された『オキュパイ・コミックス(英語版)』にカウンターカルチャーとしてのコミック論を寄稿した[330][331]。2018年、前年に起きたグレンフェル・タワー火災の被災者へのチャリティとして刊行されたコミック・アンソロジー 24 Panels に詩を提供した[327][332]。
この時期、スプラッター・ホラーで知られるニッチな出版社アヴァター・プレス(英語版)がムーアの未発表原稿や散文作品のコミック化を行った[333]。2003年にはクトゥルフ神話関連作を集めたアンソロジー Yuggoth Cultures and Other Growths と、クトゥルフテーマの短編小説を原作とする「中庭(英語版)」全2号が出た。翌年の A Hypothetical Lizard(→仮想の蜥蜴)全1号は世界幻想文学大賞にノミネートされた1980年代の中編小説が元になっている[334]。2012年には全10号のコミック Fashion Beast [注 42]が刊行された。原作はムーアが1985年に書いた未発表の映画脚本で[335]、音楽プロデューサーのマルコム・マクラーレンから依頼されたものである。クリスチャン・ディオールの生涯をモデルにして異性装と『美女と野獣』を組み合わせた作品の企画だった[335][336][337]。
原作者としての活動末期にはもっぱらホラー作品に注力した[338]。DC離脱によって税金の支払いに窮したムーアはアヴァターからのオファーを受け[339]、「中庭」の作画を手掛けたジェイセン・バロウズ(英語版)と組んでコミックオリジナルのクトゥルフ作品『ネオノミコン』(全4号、2010?2011年)[340]、『プロビデンス(英語版)』(全12号、2015?2017年)を出した[341][342]。ジャクソン・エアーズはこれらの作品を… そこで描かれる暴力と荒廃感には、ムーアが考える現代文化の恐るべき実相が込められていると書き、ラヴクラフトのパルプ・フィクションからジャンル小説やコミックに受け継がれた人種差別性やセクシュアリティ観の系譜を批評的に描き出していると論じた[343]。