アユ
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北海道朝鮮半島からベトナム北部まで東アジア一帯に分布する。石についた藻類を食べるという習性から、そのような環境のある河川生息し、長大な下流域をもつ大陸の大河川よりも、日本の川に適応した魚である[9]天塩川が日本の分布北限。遺伝的に日本産海産アユは南北2つの群に分けられる[10]中国では、河川環境の悪化でその数は減少しているが、2004年に長江下流域でも稚魚が発見された報告があるなど、現在も鴨緑江はじめ、遼東半島以南の一帯に生息している。また、中国では浙江省などで放流養殖実験が行われている。台湾でも中部(西岸では濁水渓以北、東岸では三桟渓以北)で生息していたが、現在は絶滅が危惧されている。
亜種
模式亜種

Plecoglossus altivelis altivelis (Temminck et Schlegel, 1846)。

「アユ」を亜種 P. a. altivelis とすることもある。
オオアユ

琵琶湖のコアユに対し、両側回遊する通常の個体群をオオアユと呼ぶ。
コアユ琵琶湖産コアユ

30センチメートルほどに成長する両側回遊型の海産系アユに対して、陸封型である琵琶湖産アユは10センチメートルほどにしか成長せずコアユとも呼ばれる。明治時代後期までオオアユとコアユは別と捉えられていたが、動物学者の石川千代松による1908年以降の池中飼育試験および1913年以降の多摩川・宗谷川への放流実験によって、琵琶湖産アユが河川では大きく育ち、同種であることが実証された[11]アイソザイム分析の結果、海産アユからの個体群としての別離は10万年前と推定されている[12]

コアユは生態的にも特殊で、仔稚魚期に海には下らず、琵琶湖を海の代わりとして利用している。琵琶湖の流入河川へ遡上し、他地域のアユのように大きく成長するもの(オオアユ)と、湖内にとどまり大きく成長しないもの(コアユ)が存在する。河川に遡上しないコアユは、餌としてミジンコ類を主に捕食する。同じ琵琶湖に生息するビワマスでは海水耐性が発達せず降海後に死滅することが報告されている[13]が、コアユにおいても海水耐性が失われている可能性が示唆されている[14]。また、海産アユとの交雑個体も降海後に死滅していることが示唆されている[14]

産卵数は 海産アユより多く、他地域のアユと比べ縄張り意識が強いとされている。そのため友釣りには好都合で、全国各地の河川に放流されてきたが、琵琶湖産種苗の仔アユあるいは交配稚魚は海に下っても翌年遡上しないこと[14]が強く示唆されており、天然海産アユとの交配により子の海水耐性が失われ死滅することによる資源減少が懸念されている[15]
国内外来魚として「琵琶湖#琵琶湖に由来する外来魚」も参照

アユは河川漁業・遊漁にとって重要な魚種として日本各地で種苗放流が行われていて、琵琶湖では各地に出荷する種苗としてアユが採捕されている[11]。海産アユが海の環境によって資源量が大きく変動するのに対し、琵琶湖のアユは豊富であるだけでなく、低水温でも活性を保つ、成長が早い、なわばり意識が強く友釣りに反応しやすいなどの特徴があり種苗は重用され[16]、とくに1990年代ごろは重量ベースで90パーセントを占めるなど、日本のアユ種苗を寡占していた[11]

遺伝学が発達し、同種であっても異なる系統のグループ間での交雑の問題点が認識されるようになったが、1970年代以降の複数の研究によって、川に放流された湖産系アユは海に流下したあと遡上する能力を持たないことと、そのために河川での繁殖に寄与してこなかったことが示唆された[16]。産卵期にも違いがあることから河川での交雑の可能性は小さいが、完全には否定されない。飼育下では、水温や日照時間によって産卵期を調整できるため人為的な交配が可能で、とくに陸封集団では天然にも起きうる[16]野村ダム湖と八田原ダム湖の陸封集団に浸透交雑(英語版)集団が報告されていて、天然集団に遺伝的撹乱をもたらすことが危惧されている[17]
リュウキュウアユ

P. altivelis ryukyuensis Nishida, 1988[18]アイソザイム分析の結果、日本本土産の海産アユからの別離は100万年前と推定されている[12]

絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト

絶滅危惧種[19]。詳細は「リュウキュウアユ」を参照
中国産亜種

中国産亜種(Plecoglossus altivelis chinensis)はXiujuan, et al. (2005) により、新亜種として記載された。朝鮮半島から中華人民共和国 ? ベトナム国境地帯にかけての海岸に断続的に生息する[20]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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