アメーボゾア
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しかしそもそも肉質虫は自然分類群ではないと考えられており、微細構造観察や分子系統解析に基づいて、その多くは葉状仮足を持つアメーボゾアとそれ以外のリザリアとに再編された[5][6]

古アメーバ類や粘菌類は、初期の分子系統解析では真核生物進化の根元付近から生じたそれぞれ独立したグループだと考えられていたが、解析手法の発展成熟によりアメーボゾアに含まれることが明確になっている[7]。一方で、葉状仮足を持つアメーバのうちヘテロロボサと呼ばれる群は、外見上はアメーボゾアの生物とよく似ているが、全く異なる系統である盤状クリステ類に属していることが示されている。ミトコンドリアが分岐する管状クリステを持つという類似性に基づいて、有殻糸状根足虫もアメーボゾアに含める意見があったが、これは分子系統解析によって否定されてリザリアのケルコゾア門に位置付けられている。

アメーボゾア内部の系統関係については分子系統解析が遅れていたため時期によって様々な体系が提唱されてきた。影響力が大きいものとして、全体をLobosa(ロボサ、葉状根足虫)とConosa(コノサ)に大別するキャバリエ=スミスの体系がある[7]。しかし2017年までに行われた大規模な系統解析では以下の様な関係が得られており、LobosaはConosaに対して側系統となる[8][9]

アメーボゾアの系統関係
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Discosea

Flabellinia

Centramoebia



Tevosa

Tubulinea

Evosea

Cutosea

Conosa








325遺伝子を用いた分子系統解析[8]に基づく。Conosa以外はすべてLobosaとしてまとめられていた。

ここでは国際原生生物学会で取りまとめられた2019年の合意体系[1]に準拠してその概略を示す。アメーボゾアは、仮足が一方向的で全体として棍棒状になる Tubulinea、扁平で仮足が多方向的に出る Discosea、そして鞭毛を持つなど多様な形態を取る Evoseaの3つに大別される。前2者は Lobosa、後者は Conosaに大まかに対応している。

Tubulinea ツブリネア綱 - 棍棒状で鞭毛を持たないアメーバ類(管形類)

Corycida - 有殻アメーバのうちミクロコリシア科とトリコスファエリウム目

Echinamoebida エキナメーバ目

Elardia

Leptomyxida レプトミクサ目

Arcellinida ナベカムリ目 = Testacida 有殻アメーバ

Sphaerothecina

Difflugina ディフルギア亜目 - ビワツボカムリなど

Heleopera

Phryganellina フリガネラ亜目


Euamoebida ? 狭義のアメーバ類。アメーバ Amoeba、カオス Chaos など。かつてのツブリナ目 Tubulinida にほぼ同じだが、系統的に修正(コプロミクサ Copromyxa ・コプロミクセラ Copromyxella などを含む)されている。



Discosea - 扁平で鞭毛を持たないアメーバ類

Flabellinia フラベリナ亜綱

Thecamoebida

Dermamoebida

Mycamoeba

Dactylopodida - パラメーバなど

Vannellida ヴァンネラ目


Stygamoebida

Centramoebida

Acanthopodida 棘足目 - アカントアメーバ Acanthamoeba など

Pellitida ペリタ目

Himatismenida



Evosea - 鞭毛を持つなど多様な形態を取りうるアメーバ類

Variosea

Flamellidae

Filamoeba

Heliamoeba

Protosteliida 原生粘菌

Fractovitellida

Acramoebidae

Schizoplasmodiidae

Soliformoviidae


Angulamoeba

Cavosteliida

Ischnamoeba

Darbyshirella

Holomastigida

Dictyamoeba

Arboramoeba

Phalansterium


Eumycetozoa 動菌類

Dictyostelia タマホコリカビ綱 - キイロタマホコリカビなど

Myxogastria 変形菌 - モジホコリムラサキホコリなど

Lucisporidia

Columellidia


Protosporangiida

Protosporangiidae プロトスポランジウム科

Ceratiomyxa ツノホコリ



Cutosea

Archamoebae 古アメーバ類

Mastigamoebida

Pelobiontida ペロミクサなど

Tricholimax

Entamoeba 赤痢アメーバ

Rhizomastix


これ以外に現状では位置不確定な様々なアメーバ類がある。有名なものでは、海産のステレオミクサ類 Stereomyxa の位置がはっきりしない。
範囲の変遷

アメーバ様生物を「アメーボゾア」という分類群にまとめるアイデア自体は古くから存在していて、たとえば1903年にKarl Grobbenは、アメーバ目と有孔虫目が不可分であるとしてアメーボゾア目にまとめることを提案している[10]。Luheのモノグラフ(1913年)では、アメーバ目と有殻アメーバ目からなる亜綱とされ、ここには有孔虫は含まれていない[11]。Corlissの論文(1984年)では動物的なアメーバ様生物を包括する門とされ、有孔虫や粘菌などは含まれていない[12]。現在とほぼ同様に粘菌まで含む分類群となったのは、Cavalier-Smithの修正6界説(1998年)[13]からである。
進化

真核生物の共通祖先は鞭毛を持っていたと考えられるので[14]、アメーボゾアの祖先も同じく鞭毛を持っていたと考えられる。ただ現生のアメーボゾアで生活環の中で鞭毛を持つのはEvosea(さらに言えばConosa)に限られている[8]。また例外はあるものの、一般にアメーボゾアの生物は生活環の中にアメーバ運動を行う時期があり、これはアメーボゾアの祖先も同様と考えられる[8]。したがってこの祖先は生活環の中で両方の形態を取ることができた。有性生殖が確認されているものは変形菌くらいであるが、その他の系統でも形態変化に伴ってその存在が示唆されており、アメーボゾアの祖先が形態を変化させる際に有性生殖を行っていた可能性も考えられる[8]

全てではないがアメーボゾアの多くは休眠シストを作ることができる。子実体を形成するアメーバであっても、それとは別に基質上にシストを作るものがある。これは他の原生生物にも見られるもので、アメーボゾアの祖先を通じて受け継がれた形質だと考えられる。一方、単一の細胞から有柄の子実体を形成するのはアメーボゾアに特異的な形質であり、真正粘菌と、アメーボゾアの中で系統的に散在する原生粘菌に認められる。これが共通祖先に由来するのか、独立に何度も獲得されたのかは現時点では確定できないが、分子メカニズムの相同性を調べることで将来的に結論が出るだろう[8]

総じて言えば、アメーボゾアの祖先は有性生殖や鞭毛運動を行う時期を含む複雑な生活環を持っていたと推定され、また子実体形成能を持っていた可能性がある。そこから放散するにつれて様々な単純化が起こり、同時に殻や累積子実体の形成といった新規形質の獲得も独立に複数回起きたと考えられる[8]


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