真核生物の共通祖先は鞭毛を持っていたと考えられるので[14]、アメーボゾアの祖先も同じく鞭毛を持っていたと考えられる。ただ現生のアメーボゾアで生活環の中で鞭毛を持つのはEvosea(さらに言えばConosa)に限られている[8]。また例外はあるものの、一般にアメーボゾアの生物は生活環の中にアメーバ運動を行う時期があり、これはアメーボゾアの祖先も同様と考えられる[8]。したがってこの祖先は生活環の中で両方の形態を取ることができた。有性生殖が確認されているものは変形菌くらいであるが、その他の系統でも形態変化に伴ってその存在が示唆されており、アメーボゾアの祖先が形態を変化させる際に有性生殖を行っていた可能性も考えられる[8]。
全てではないがアメーボゾアの多くは休眠シストを作ることができる。子実体を形成するアメーバであっても、それとは別に基質上にシストを作るものがある。これは他の原生生物にも見られるもので、アメーボゾアの祖先を通じて受け継がれた形質だと考えられる。一方、単一の細胞から有柄の子実体を形成するのはアメーボゾアに特異的な形質であり、真正粘菌と、アメーボゾアの中で系統的に散在する原生粘菌に認められる。これが共通祖先に由来するのか、独立に何度も獲得されたのかは現時点では確定できないが、分子メカニズムの相同性を調べることで将来的に結論が出るだろう[8]。
総じて言えば、アメーボゾアの祖先は有性生殖や鞭毛運動を行う時期を含む複雑な生活環を持っていたと推定され、また子実体形成能を持っていた可能性がある。そこから放散するにつれて様々な単純化が起こり、同時に殻や累積子実体の形成といった新規形質の獲得も独立に複数回起きたと考えられる[8]。
アメーバ類は一般に化石として残りにくいと考えられるが、ナベカムリ目と思われるつぼ形の微化石が7.5億年前(新原生代)の海洋環境由来の岩石から見付かっている。そこでアメーボゾアはもともと海洋で生まれ、後に植物と共に陸上へ進出したという仮説がある[15]。一方、分子系統解析に基づく分岐年代推定によれば、アメーボゾア全体の分岐年代は10-12億年前、動菌類(変形菌+タマホコリカビ目)の分岐年代が6-10億年前、タマホコリカビ目が3-7億年前、ナベカムリ目が2.5-5.2億年前となった。ほぼ陸上からしか見出されない動菌類の分岐年代が6-10億年前という推定は、オルドビス紀(4.65億年前)の陸上植物の進出よりかなり先行している。したがって、アメーボゾアの陸上進出は植物よりも早く土壌の形成に寄与したが、その後陸上生態系が充実するとともにアメーボゾアの多様化も進んだと解釈される[16]。
出典^ a b Adl, S. M. et al. (2019). ⇒“Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes” (pdf). J. Eukaryot. Microbiol. 66: 4-119. doi:10.1111/jeu.12691