大統領は軍(陸軍・海軍・空軍・海兵隊・沿岸警備隊・宇宙軍)の最高司令官(Commander-in-Chief)としての指揮権(国家指揮権限)を保持する。宣戦布告は議会の権限であり(連邦憲法第8条第11項)、軍隊を募集・編制することも議会の権限である。しかし今日では、議会による宣戦布告を待っていては先制攻撃が不可能になってしまったり、逆に敵対国から先制攻撃を受けてしまったりする危険性がある為、大統領はこの指揮権を根拠に宣戦布告無しで戦争を開始できることが慣例的に定着している。
実際にアメリカ合衆国が正式に宣戦布告を行ったのは憲法制定以後1812年戦争・米墨戦争・米西戦争・第一次世界大戦・第二次世界大戦の5回しか無く、1941年12月7日(ハワイ時間)の真珠湾攻撃を契機に大日本帝国・ドイツ・イタリア王国及び他の枢軸国側に対して行ったものが現在に至るまで最後の正式な宣戦布告であり、朝鮮戦争・ベトナム戦争など1945年以降は議会による宣戦布告は行われていない[12]。
これに対して議会はベトナム戦争における成り行きによった拡大と泥沼化に対する反省から、「戦争権限法」を定めて大統領の指揮権に一定の制約を設けている。なお指揮権とは少々外れるが、アメリカ軍の保有する核兵器の使用権限も大統領が保持しており、大統領が使用命令を出すことで初めて核兵器の使用が許可されるようになっている。
日常
勤務時間は特に規定で決まっている訳では無く、「自分で必要と考えるだけ勤務すればよい」とされている。
大統領の朝最初の仕事は「日例報告」を聞くことから始まる。この報告では首席補佐官・国務長官・国家情報長官らによって、世界中から収集した情報の報告が行われる。
日常的な執務は「オーバルオフィス」と呼ばれる(室内が楕円である事にちなむ)大統領執務室で行われる。位置はホワイトハウスのウエストウイング内。
万が一に備えて核兵器使用に必要な装置(「核のフットボール」、「核のボタン」というニックネームがある、統合参謀本部への発信機能付きアタッシェケース。中身は大統領命令であることを証明する暗号書、報復として指示されるべき軍事行動のリスト、核攻撃実行の際の避難場所リスト)を携帯した将校がいかなる場所へも随行する。
定例の記者会見は定められていないが、通常は月に1度以上実施される。また必要に応じて大統領がテレビで直接国民に語りかけることもある。
毎週土曜日の朝には定例ラジオ演説を行う。5分程度のメッセージが読まれ、近況や現在取組中の課題などについてが説明される。
休日は大統領専用の別荘である「キャンプ・デービッド」で過ごす。
2007年現在、大統領の給与は「年額40万米ドル(約4,300万円)」[注釈 5]、これに必要経費5万ドル(約550万円)、旅行経費10万ドル(約1,100万円)、交際費1万9,000ドル(約210万円)が必要に応じて支給される。
詳細は「アメリカ合衆国大統領の輸送」を参照
外遊などで航空機に搭乗した際に使用されるコールサインは、その航空機の所属によってコールサインが付与される。
エアフォースワン:空軍機(通常は専用機VC-25を指す)
エグゼクティブワン:民間機
コーストガードワン:沿岸警備隊機
ネイビーワン:海軍機
マリーンワン:海兵隊機
アーミーワン:陸軍機。
空路で移動する際には基本的に大統領専用機もしくはアメリカ軍機に搭乗する。ビジネスジェットを個人所有していたとしても大統領職在任中は利用できないという制限がある[13]。この制限は実業家出身のドナルド・トランプが2017年1月20日に大統領に就任した際に注目を集めた。