アメリカ合衆国ドル
[Wikipedia|▼Menu]
1971年のニクソン・ショックまでは金本位制が続けられていた。その当時に形成された米ドルを基軸通貨とする体制は、金本位制停止および変動相場制導入の後も継続されている。現在は、貴金属などとの兌換制度は無く、中央銀行である連邦準備制度が発行を管理する管理通貨制度のもとにある。
発行と印刷

先述のとおりアメリカ合衆国ドル紙幣の発券管理は連邦準備制度が集中的に行っているが、法令上、個々の紙幣はアメリカ国内に12行ある連邦準備銀行が個々に発行している。

紙幣製造は製版印刷局合衆国造幣局によって行われ、1日あたり6億5000万ドル相当の紙幣と硬貨が製造されている。従業員数は合計で5000人を超える。印刷工場はアメリカ国内に2か所ある。

偽造を防ぐ目的で、1ドル紙幣と2ドル紙幣を除く全紙幣のデザインが2000年代 - 2010年代に刷新されている。2012年12月31日現在の連邦準備制度の統計によれば、1ドル紙幣の流通量は103億枚、100ドル紙幣は86億枚、20ドル紙幣は74億枚である。
発券銀行

紙幣を発券した銀行がどの連邦準備銀行であるかは、その紙幣に記されたアルファベット記号で判別することができる。アルファベット記号以外の部分はどの発券銀行も額面ごとにすべて同じデザインであり、また発券銀行にかかわらず同一額面ならどの紙幣も等価である。

肖像の小さい紙幣(1・2ドル紙幣と、5ドル以上かつシリーズ1994以前の紙幣)には、肖像の左にアルファベットの記載された丸い部分があり、法令上の発券銀行がこの文字で判るようになっている。

A:
マサチューセッツ州 ボストン連邦準備銀行

B:ニューヨーク州 ニューヨーク連邦準備銀行

C:ペンシルベニア州 フィラデルフィア連邦準備銀行

D:オハイオ州 クリーブランド連邦準備銀行

E:バージニア州 リッチモンド連邦準備銀行

F:ジョージア州 アトランタ連邦準備銀行

G:イリノイ州 シカゴ連邦準備銀行

H:ミズーリ州 セントルイス連邦準備銀行

I:ミネソタ州 ミネアポリス連邦準備銀行

J:ミズーリ州 カンザスシティ連邦準備銀行

K:テキサス州 ダラス連邦準備銀行

L:カリフォルニア州 サンフランシスコ連邦準備銀行

肖像の大きい紙幣(5ドル以上かつシリーズ1996以降の紙幣)では、左端のアルファベット(「B2」など)がこれに相当する。また紙幣シリアルナンバー(記番号)11桁のうち左から2桁目のアルファベットも同じことを表している。
印刷工場

紙幣の印刷はアメリカ合衆国製版印刷局が直営する工場2か所で行われている。

ワシントンD.C.工場

フォートワース工場

すべてのドル紙幣には小さな字で原版番号(どの凹版原版を用いて印刷したかを表す記号番号)が2か所ずつ印刷されているが、うち1か所の原版番号で例えば「FWD63」のように、「FW」が付いていればフォートワース工場で印刷された紙幣(前出の画像では1・2・5・10・50ドル)である。「B57」のように「FW」が2か所とも原版番号に付いていなければワシントンD.C.工場で印刷された紙幣(前出の画像では20ドルと100ドル)である。
硬貨「アメリカ合衆国ドルの硬貨(英語版)」を参照
流通硬貨

硬貨として発行されるのは1ドル(100セント)以下の通貨であり、アメリカ合衆国造幣局が製造している。

現在発行されている硬貨の金種は、

1セント(Penny、ペニー

5セント(Nickel、ニッケル)

10セント(Dime、ダイム)

25セント(Quarter、クオーター)

50セント(Half Dollar、ハーフダラー)

100セント(=$1、シルバーダラー)

の6種類である。なお、シルバーダラーというのは1ドル銀貨の呼称で、現在の1ドル硬貨の呼称ではない。

セント硬貨については、主に25セント以下のものが多く使われており、特に公衆電話新聞などの自動販売機、パーキングメーター、バスの運賃箱、カジノ場のスロットマシン[注 1]、有料道路や駐車場の無人料金所などに25セント硬貨を複数枚投入するものが多いためか、とりわけ硬貨の中でも25セント硬貨の流通量が非常に多い。アメリカ合衆国で生活する際は、25セント硬貨の手持ちが少ないと不便を強いられる。

日本などのように10・50・100・500などを硬貨の区切りとする感覚からは、10セントの上の25セントは中途半端にも思えるが、10セントと25セントの組合せは、10セントと50セントの組合せよりも、多くの金額に対応可能である(45セントや55セント、1ドル25セントという額が出せる)。

かつてはハーフセント、2セント、3セント、20セントのコインが存在した。ダイム(ハーフダイム)以上は元々銀貨であった。現在は白銅張りの銅貨に変わっているが大きさは変更されておらず、このため、5セント(ニッケル)硬貨の方が10セント(ダイム)硬貨より大きくなっている。造幣局はフィラデルフィア、デンバー、サンフランシスコにあり、硬貨表面または裏面に製造所を表すP、D、Sの鋳造刻印(ミントマーク)が打たれている物が多い。

さらに、以前ではこのほかに本位金貨として、1ドル、2.5ドル(クオーターイーグル)、3ドル、5ドル(ハーフイーグル)、10ドル(イーグル)、20ドル(ダブルイーグル)の硬貨が流通していたほか、記念貨幣として8角形の50ドル金貨や、4ドル(試作?ステラ)なども鋳造された。また、モルガン図案やピース図案の1ドル銀貨(シルバーダラー)もマニアの間で世界的に広く知られている。現在でも、記念コインとして、5ドル金貨や1ドル銀貨が鋳造されることがあるが、これは収集型金貨や銀貨で流通用の物ではない。
本位金貨

金貨は1937年以降は金90%10%であり、1834年以降は金貨1ドルにつき23.22グレーン (1.5046g) の金が使用されている。1792年から1834年までは金貨1ドルにつき24.75グレーン (1.6038g) の金が使用されていた[1]

前述の通り現在は記念コインとして製造されている。

20ドル, 33.436g(30.093g)1849年‐1933年

10ドル, 16.718g(金15.046g)1795年‐1933年

5ドル, 8.359g(金7.523g)1795年‐1929年

3ドル, 5.015g(金4.514g)1854年‐1889年

2.5ドル, 4.179g(金3.762g)1796年‐1929年

1ドル, 1.672g(金1.505g)1849年‐1889年

1933年の20ドル金貨は759万ドル(約6億3600万円)で落札されたことがあり大変貴重である。
銀貨

1964年以前の銀貨は1851年から1853年の3セント銀貨を除き1837年以降はすべて銀90%銅10%である。

前述の通り現在は記念コインとして製造されている。

しかし銀貨の一部は現在でも稀に流通していることがある。

1ドル, 412.5グレーン (26.7296g) (
24.0566g) 1794年‐1935年、1971年‐1975年(Sミントマークのみ銀品位40%)

50セント, 12.5g(銀11.25g)1794年‐1964年、1965年‐1970年(銀品位40%)

25セント, 6.25g(銀5.625g)1796年‐1964年

20セント, 5g(銀4.5g)1875年‐1878年

10セント, 2.5g(銀2.25g)1796年‐1964年

5セント, 1.24g(銀1.125g)1794年‐1873年、5.00g(銀1.75g)1942年‐1945年(銀品位35%)

3セント, 0.8g(銀0.6g)1851年‐1853年(銀品位75%)、1854年‐1873年(銀品位90%)

1976年の1ドル硬貨、50セント硬貨、25セント硬貨の一部は40%の銀が使用されている。
卑金属貨幣

1ドル, 1971年-1999年(
白銅と銅のクラッド)、2000年‐(黄銅

50セント, 1971年‐(白銅と銅のクラッド)

25セント, 1965年‐(白銅と銅のクラッド)

10セント, 1965年‐(白銅と銅のクラッド)

5セント, 1866年‐1941年、1946年‐(白銅)

3セント, 1865年‐1889年(白銅)

2セント, 1864年‐1873年(銅)

1セント, 1793年‐1942年、1943年(亜鉛鍍金スチール)、1944年‐1982年()、1982年‐(銅鍍金の亜鉛)

1/2セント, 1793年‐1857年(銅)

呼称
語源

ドル(ダラー)という名前は、ドイツで使われた歴史的通貨のターラー (Thaler) から来ている。ターラーは、16世紀ボヘミアのザンクト・ヨアヒムスタール(現在のチェコ・ヤーヒモフ)というの鉱山で鋳造された『ヨアヒムスターラー (Joachimsthaler) 』という銀貨の名前が短縮されて「ターラー」と呼ばれるようになったものである。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:128 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef