アメリカ南部
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サザン・ホスピタリティと呼ばれる独特のマナーは、こうした風土の中で生まれた。また、南部の「保守的で慎み深く、それでいて洗練された女性」の象徴として、南北戦争以前からサザン・ベル(南部美人)という女性像が形成されていた。

宗教

恐らく他のどんな先進国の地域よりも、アメリカ南部はキリスト教徒が多く集中していて、福音主義またはキリスト教根本主義プロテスタント(特にバプテスト、そしてまたメソジスト長老派など)が普及しており、南部を「バイブル・ベルト」として呼ぶ由縁になっている。

南部のほとんどの都市には、非常に多くのカトリックの人口があり、ニューオーリンズセントルイスルイビルといった都市により多く集中しているが、アーカンソー州とミシシッピ州などのエリアには、バプテストがより強く集中している。マイアミアトランタ、ルイヴィルそしてヒューストンといった都市には、非常に大きなユダヤ教イスラム教のコミュニティがある。東南アジア南アジアからの移民も、地域に仏教ヒンドゥー教をもたらした。現在はキリスト教原理主義の教会が勢力を強め、中絶やゲイに強く反対している。その信者は、共和党支持者が多い。

映画とテレビ

南部は名作映画のひとつである『風と共に去りぬ』(1939年)の舞台になった。映画『爆発! デューク』(Dukes of Hazzard) は、30年近く続いた人気テレビ番組が発端になっている。カリフォルニアで映画化されたが、セットはジョージア州で、南部の他の場所も多く登場する。ソープオペラの『ダラス』(Dallas) は、南部の生活を描いた、また別の全国的に人気のあるテレビ番組の一例だ。映画『メラニーは行く!』(原題 "Sweet Home Alabama" は、サザンロックの曲と同名)は、実際には離れて生活しているが、故郷では親しみやすい南部の人々を描いている。

また、『アラバマ物語』『ミシシッピー・バーニング』などでは、「人種差別」という南部の負の部分が描写されている。

アート

南部は確かに多くのアーティストの故郷であるが、ひとつのジャンルとしてのサザン・アートの概念は20世紀の現象である。サザン・アートのすぐれたコレクションは、ニューオーリンズ のサザン・アート・オグデン美術館や、オーガスタのサザン・アート・モリス美術館で見ることができる。南部表現主義と民俗芸術は、普通はサザン・アートの一形態として考えられる。南部芸術連盟は、各州の芸術振興会に認められたすぐれた芸術を創っている、現代の南部のアーティストの登録を管理している。

方言

南部アメリカ英語も参照。アメリカ南部英語は発音の違いによって異なる下位方言に分けることができる(例えば、アパラチア地域とチャールストン周辺の沿岸のエリア、もしくはジョージア州サバンナ周辺のローカントリー地域)。南中部方言は、南部方言を話す人のアメリカ西部への移住によって影響を受けた。

多くのアフリカ系アメリカ人によってさまざまな程度で話される方言、アフリカ系アメリカ人地方英語は、南部の方言と多くの類似性を持つ。1920年代以降の民俗学者は、アパラチア言語は合衆国の他のアクセントよりもより密接にエリザベス朝英語が反映されていると主張した。

料理
詳細は「南部料理 (アメリカ合衆国)」を参照

アメリカ南部の料理は、しばしば最も特有の性質のひとつとして記述されるが、アメリカ南部として知られる広い地域の中で歴史と文化が異なるように、伝統的な料理もひとつではない。現代では、典型的な南部人の食事と合衆国のほかの地域での食事の間には差異はあまりないが、南部の「伝統的な」料理は、複数のユニークな影響を取り入れている。また、「南部料理」は、アメリカ料理の明確な良い例のいくつかを提供している。それはつまり、ほかの場所から採用されたものではなく、アメリカ合衆国で生まれた食べ物とスタイルという意味としてである。

通常、「サザンフード」という言葉に最も関連しているのは、しばしば「ソウルフード」と呼ばれ、高カロリーのラードと脂肪を多用することに特徴がある。このスタイルは、アフリカの影響だけではなく、ネイティブアメリカンやスコットランド系アイルランド人とその他の人々の影響をミックスしたものなのだが、しばしばアフリカ系アメリカ人奴隷の集団の結果とだけ考えられている。南部のフライドチキンラードと脂肪で炒めた野菜ササゲコーンブレッドビスケットは、この「サザンフード」という広いカテゴリーで通常ひとまとめにされた少ない例である。

バーベキューは、一般的に南部に関連している食べ物である。ゆっくりと火を通して調味料を多くかけた肉は、各地域の細かい好みによってスタイルが分かれている特徴がある。テキサスではしばしば牛肉が主体となり、カロライナでは一般的に豚肉が主体で、カロライナ東部と西部ではなお一層スタイルが分かれる。カンザスシティ(南部ではないが)とメンフィスは、バーベキューの中心地とも呼ばれていて、複数のエリアからのスタイルを引き込んでいる。

ルイジアナとミシシッピ・デルタのユニークな歴史は、特有の料理の環境もまた供給している。ケイジャンクレオールは、この地域の文化的な影響(アカディア人、アフリカカリブ海フランスネイティブアメリカンスペインなど)の幅広い混合から発展した。ジャンバラヤやガンボなどの料理が、よく知られている。テキサスとメキシコが近接していて、歴史を共有していたことは、最終的には現代のテクス・メクス料理をもたらすことになった。

今日、最もポピュラーなアメリカのソフトドリンクの多く(コカ・コーラペプシコーラマウンテン・デュードクターペッパー)は、南部から誕生した。

文学

恐らく最も有名な南部の作家は、1949年にノーベル文学賞を受賞したウィリアム・フォークナーであろう。フォークナーは意識の流れという新しい手法と、複合した物語の手法をアメリカ文学に持ち込んだ(例えば彼の作品『死の床に横たわりて』などで)。

その他の有名な南部の作家には、マーク・トウェイン(『ハックルベリー・フィンの冒険』と『トム・ソーヤーの冒険』の2つは南部に関するよく読まれる2作品である)トーマス・ウルフウィリアム・スタイロンフラナリー・オコナーカーソン・マッカラーズロバート・ペン・ウォーレンテネシー・ウィリアムズトルーマン・カポーティ[注 1]、ジェームズ・ディッキー(英語版)、ウィリー・モリス(英語版)、ゾラ・ニール・ハーストンユードラ・ウェルティ、ウォーカー・パーシー(英語版)らがいる。

20世紀の、恐らく最も有名な南部の小説は、マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ[注 2] で、これは1937年に出版された。もうひとつの有名な南部の小説、ハーパー・リーの『アラバマ物語』は、1960年に出版された後にピューリッツァー賞を受賞した。

音楽

南部は、アメリカのもっとも豊かな音楽のいくつかを提供している。南部の音楽の遺産は、白人と黒人の両方が、直接あるいは間接的に、お互いに影響しあいながら発達させてきた。

南部音楽の歴史は、実質的には、アフリカ人奴隷の唄と、英国とアイルランドから持ち込まれた伝統的フォークソングによって、南北戦争以前に始まる。ブルースデルタ・ブルース)は、20世紀初めに南部の田舎の黒人が発展させた。それに加えて、ゴスペルスピリチュアルカントリー・ミュージックリズム・アンド・ブルースソウルミュージックブルーグラスジャズ(南部人のスコット・ジョプリンが普及させたラグタイムを含む)、ブギー・ウギー、グッド・タイム・ミュージックなど、これらすべては南部で生まれたか、もしくは発達した音楽である。


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