『アメリカのデモクラシー』の第1巻は1835年、第2巻は1840年に出版された。 『アメリカのデモクラシー』の第1巻は「他の多くの場所では失敗している共和制の議会制民主主義が、なぜアメリカでは上手くいっているのか」の分析に主な焦点を当てている。彼はアメリカの民主制にある有効な諸特徴を、自分の故国フランスにおける民主制に含まれる数々の失敗と自分が見なしていることに適用しようと努めている。 『アメリカのデモクラシー』の第2巻では、トクヴィルはアメリカの民主制の将来について推測し、民主制にとって脅威となる可能性のあることや民主制が危険なものとなる可能性について論じている。これらの脅威や危険についての見解には「民主制には「ソフトな専制政治 (soft despotism) 」へと悪化する傾向があるだけではなく、多数派の専制を生み出す危険性もある」という彼の信念が含まれる。「宗教がアメリカで強力な役割を果たしていることは政教分離に起因していて、全政党がその分離を好ましく思っている」ことを彼は観察した。彼はこのこととフランスの事情を照らし合わせたわけだが、フランスには民主主義者たちと信心家たちの対立があり、彼はこの対立が有害であると考えた。彼はこの対立を教会と政府のつながりと関連づけている。 『アメリカのデモクラシー』は、ヨーロッパとアメリカの両方でたちどころに評判になり、19世紀から21世紀現在まで、数多くの国で訳・出版されている。 本書は20世紀には政治学・社会学を専攻する学部生に対して課題図書に指定されるなど、政治学・社会学・歴史学の古典的著書となった。 トクヴィルは実証された数多くの予測を行い、奴隷制度廃止をめぐる論争が(実際に1860年代の南北戦争でそうなったように)、アメリカを分裂させる可能性を予測した。またアメリカのどの州でも独立を宣言できるだろうとも予測した。 ロシアとは、ライバルの超大国として台頭(両国は20世紀に、ロシアはソ連の一部として、第二次世界大戦後は、両国を軸に冷戦体制となった)することも予測した。 アメリカの民主制には といった形で悪化する可能性があると考えられている。そしてこれらは政権の評判を落とし、政治家の資質、学問、そして文学を最低のレベルに落とすと彼は考えている。 『アメリカのデモクラシー』は党派根性が凶暴になることや、賢人の判断が無知な者の偏見よりも下位に置かれることを予測した。
第1巻
第2巻
重要性
世論による専制政治
多数派による暴政
知的自由の欠如
日本語訳
デ・トヲクヴィル 著、小幡篤次郎 訳『上木自由之論』小幡篤次郎、1873年11月。doi:10.11501/783212
小幡篤次郎『小幡篤次郎著作集 第2巻』同・編集委員会編、福澤諭吉協会、2023年3月。ISBN 978-4-7664-2876-6。「上木自由之論」を収録。
トークヴィル 著、肥塚龍 訳『自由原論』 第1-3巻、有隣堂、1882年。NDLJP:783176
トークヴィル 著、肥塚龍 訳『自由原論』 第4-5巻、有隣堂、1882年。NDLJP:783177