アメフト
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

本来10ヤード先にあるシリーズ獲得線が敵陣エンドゾーン内にあるため、そのシリーズの攻撃側の目標がシリーズの更新ではなくゴールラインを越えること(つまりタッチダウン)に切り替わるからである[注 29]

なお、フィールド上ではチェーンによってダウン・アンド・ディスタンスが表される。チェーンとは、新たなシリーズの開始位置と更新線の位置を示す目印であり、長さ10ヤードの鎖であり、その両端にポール(棒)をつけた器具全体をさすこともある。チェーンは、ビジター側のサイドライン外側のアウト・オブ・バウンズに設置する。先端にダウン数を示す数字の板をつけた棒である、インジケーター(ダウンボックス)とセットで使う。

いずれかのチームが新たなシリーズを獲得したときに、フィールド上のボールの位置からエンドラインと平行な線とサイドラインとの交点に、プレー開始地点のライン上(サイドライン際)にインジケーターを設置する。

インジケーターの地点にチェーンの片方のポールを設置し、他方のポールはチェーンをぴんと張った状態で攻撃方向10ヤード先に設置する。この一端が、次のファーストダウン獲得地点(シリーズ獲得線)の目印となる。

インジケーターとチェーンの位置が確定したら、プレーの邪魔にならないようにやや外側に離れる。(設置した位置がずれないようにチェーンの1ヶ所に目印をつけることが多い)

インジケーターは、プレー終了の都度、プレー終了地点(次のプレーの開始地点)のライン上に設置される。新たなシリーズを獲得したときには、インジケーターとチェーンをあらためて設置しなおす。

シリーズ獲得線に到達したかが微妙なときには、審判の判断あるいはチームからの要求により、メジャーメントを行う。メジャーメントとは、チェーンをサイドラインからボールのある地点まで移動し、実測によりシリーズ獲得線に到達したか判定することである。チェーンが10ヤードであり、ポールの内側を少しでも越えれば、到達したと見なされる。

ここまでの説明でも分かるとおり、チェーンの長さ自体は10ヤードと厳密だが、新たにシリーズを獲得したときのボールの置く位置、そこからインジゲーターやチェーンを設置する位置、プレー終了後のボールの置く位置はすべて審判の目測である。

チェーンとインジケーターの保持、移動、操作を行う係員をチェーンクルー[注 30]と呼ぶ。
ランプレークォーターバックからボールを手渡されるランニングバック

ランプレーとは、ボールを受けた選手(ボール・キャリアまたはランナー)が、走って前進を狙うプレーである。比較的短い距離を確実に前進するために行われることが多い。

通常、ランナーになるのはランニングバックである。また、スクランブルといって、パスプレーを企図したクォーターバックが、適切なパスの受け手が見つからないために、自らボールを持ったままランプレーによる前進を図ることもある。

多くの場合、ランナーはプレーによってチームの作戦で決まったコースを走り、ランナー以外の攻撃側の選手は、ランナーの走路を確保するため、守備の選手をブロックしたり、他のプレーを行っているように装ったりする。

ランナーがサイドラインに出たり、倒れたりなどすれば、プレーが終了しデッドと宣告される。デッドとなった時点のボールの位置を次のダウンの開始位置とする(ランナーの位置ではない)。守備選手に押し返されて下がった場合は、もっとも進んだ地点でデッドとする。逆にランナーが自らの意志で下がったり、バックパスで下がったりした場合は下がった地点でデッドと判断される。

デッドとなる前にボールを落とした場合(ファンブル)、守備選手もボールを確保しても構わない。ファンブルでなくても力ずくで奪っても構わない。守備選手がボールを確保すれば、その時点で攻守交替(ターンオーバー)である。奪った選手は、デッドとなるまで相手方のエンドゾーンに向けて前進(リターン)することができる。デッド後、ボールを確保したチームが攻撃権を得る。リターンした選手がデッドの前に直接敵陣のエンドゾーンに入った場合には、そのままタッチダウンが認められる。これを、特にファンブル・リカバー・リターン・タッチダウンという。
パスプレーパスのターゲットを探すクォーターバックパスを捕球するワイドレシーバー

パスプレーとは、前方へのパスを使ったプレーである。アメリカンフットボールで断り無く「パス」と言った場合は、前方へのパス(フォワード・パス)を意味する。フォワード・パスは、1つのスクリメージ・ダウンにつき1回のみ、スクリメージ・ラインの手前から行うことが認められている(パスの受け手はスクリメージ・ラインの前方でも、後方でも構わない)。UFLでは、スクリメージ・ラインを超えない限り二度のパスが許される。
パスが前方か後方かは、スクリメージラインを超えたかどうか、投げた側と受けた側の身体の位置は関係なく、ボール自体が前方に進む軌道であったかで決まる。

パスプレーは、投げられたボールを攻撃側の選手がノーバウンドで捕球したときに成立する。ボールの位置がフィールド外であっても、インバウンズに片足(NFL、UFLでは両足)が着地すればパス成功となる。

捕球した選手は、ボールを持ったままさらに前進することができる(ラン・アフター・キャッチ)。パスキャッチ後は、ランプレーと同様のルールに切り替わる。投げられたボールが、誰にも捕球されずに地面に落下した場合は、接地した時点でプレーが終了し(インコンプリート、パス不成功)、同時に計時も止まる。たとえ空中で選手がボールに触れたとしても、捕球されずに接地した場合はパス不成功となる。またパス不成功の時は、攻撃側は全く前進できずに、スナップした元の位置(プレビアス・スポット[注 31])から次のダウンとなる。

通常、パスを投げるのはクォーターバック、パスを受けるのはワイドレシーバーである。スナップ後、ワイドレシーバーはプレーによって定められたコースを走る。クォーターバックは、守備の状況を判断して、捕球可能と判断したワイドレシーバーにパスを投げる。
パスが成功するには、適切なスピード・距離・タイミングでパスが投げられることと、ワイドレシーバーの捕球技術が必要である。その他の選手は、クォーターバックがタックルを受けないように、またパスを投げるまでに必要な時間を稼ぐために、数人の攻撃側の選手が、クォーターバックの周りを取り囲むようにして、守備選手の侵入を防ぐ。特に、オフェンスラインの選手は、ルール上、パスを受けることができず、またパスが投げられるまではスクリメージラインを超えることが出来ず、パスプレーではクォーターバックを守ることに専念する。

また、パスされたボールは守備側の選手も捕球でき、守備選手が捕球することをインターセプトと言う。インターセプトが発生した瞬間に攻守交替(ターンオーバー)となり、捕球した選手は、ボールデッドとなるまで相手方のエンドゾーンに向けて前進(リターン)することができる。ボールデッド後、リターンしたチームが攻撃権を得る。リターンした選手がボールデッドの前に直接敵陣のエンドゾーンに入った場合には、そのままタッチダウンが認められる。これを、特にインターセプト・リターン・タッチダウンという。

パスプレーは、ランプレーと比べると確実性は低く、インターセプトの危険性もあるが、長距離の前進が期待できる。

なお、UFLではスクリメージ・ラインを越えなければ二度のフォワードパスが許される。
(参考)バックワード・パス

アメリカンフットボールで「パス」と言えば通常前方へのパスであるフォワード・パスを意味するが、後方へボールを投げて味方に渡す行為も認められている。このプレーに特に言及する場合はバックワード・パスまたは略してバック・パスと呼ばれる。

バックワード・パスは通常ランプレーの一部とされるがフォワード・パスとの比較のためここで言及する。

バックワード・パスはフォワード・パスとはルールが全く異なる。主なルールを箇条書きにすると以下の通り。

バックワード・パスを実施する回数と地点には全く制限が無い。

リターン中(フリーキック、パント、ターンオーバーのすべてのリターン中)にフォワード・パスを出すことは許されないがバックワード・パスは認められており、実施する回数や地点にも制限が無い。

無資格レシーバーが捕球することは認められていない。これはフォワード・パスと共通である。

バックワード・パスの失敗はファンブルとして扱われる。したがってバックワード・パスを味方が誰も確保できず地面に落ちて転がった場合はフリーボールとなりプレーは続行、これを守備側の選手が確保できればファンブル・リカバーで攻守交替となる。

ただし、バックワード・パスを積極的に利用することはほとんど無い。理由はボールをいかに前進させるかが重要な意味を持つアメリカンフットボールにおいて自らボールを後退させるバックワード・パスはそれ自体がデメリットであり、見た目の似ているラグビーとは違いタックルを受けて倒されてもボールを確保したままであれば審判がプレーを止めてくれて(ダウンが残っていればではあるが)次のプレーを確実に攻撃側のボールで始められるので、バックワード・パスをしてまでもタックルをかわすメリットも無いからである。

したがって、ランプレーを企図したクォーターバックが少し離れた位置にいるランニングバックにボールを渡したり、守備側の混乱を狙って突然ボール・キャリアを変更するトリックプレーに使われたりなど使用する場面は限定的で、フォワード・パスとは異なりあまり目立たないプレーである。

また、ルール上はフォワード・パスかバックワード・パスかの2つに分類されるが、テレビ中継の実況などではゴールラインとほぼ平行な軌道を通るパスを「真横へのパス」という意味でラテラル・パスと称することがある。完全にゴールラインと平行であればルール上バックワード・パスになるが、少しでも敵陣のゴールラインに近づく方向に向かっていればフォワード・パスになる。
キックプレー(スクリメージキック)

スクリメージ・ダウンでは、キックすることもできる。
フリーキックに対し、パントとフィールドゴールを総称してスクリメージキックと呼ぶ(各項参照)。
パント

パントとは、ボールを持った選手がボールを落とし、地面につく前に蹴るキックである。
スクリメージ・ダウンでパントを行うと、攻撃権を失う代わりに、大きくボールを前進させることができる。
4thダウンになって、シリーズの更新やフィールドゴールのプレーを行うにも距離が遠い場合は、相手の攻撃をできるだけ不利な位置(自陣エンドゾーンから離れたところ)から開始させるため、パントを選択することが多い。

パントを行う場合、攻撃側(キッキング・チーム、またはパント・カバー・チーム)、守備側(レシービング・チーム、パント・リターン・チーム)ともにスペシャルチームと呼ばれるパント専用のユニットがフィールドに出る。
パントを行う攻撃側は、スクリメージライン後方約15ヤードの地点にパントを行うパンターと呼ばれる選手が立ち、その数ヤード前にパンターを守るための選手1?3名が配置されるほかは全員がスクリメージライン上に1列にセットする。スナップを行うのは通常のセンターではなく、ロングスナッパーと呼ばれる専門の選手である。
一方、守備側もパントに備えた陣形を敷き、パントされたボールを捕球するパント・リターナーを後方に配置する。

パントのダウンは、ロングスナッパーがパンターに対しボールをスナップして開始される。パンターはボールを受け取ると軽く助走しながら前方に向かってパントする。パンター以外の選手はパンターを守るため相手選手の侵入をブロックし、パントの後はリターナーのタックルに向かう(NFLではエンドの2名を除いてはボールが蹴られるまでスクリメージラインを超えることはできない)。

守備側の選手は、スナップと同時にパンターに突進してプレッシャーをかける。一方で、パントを装った奇襲攻撃(フェイク・パント)の可能性もあることに注意する。リターナーはボールを捕球した後はボールを持って前進(リターン)することができ、リターン終了地点でファーストダウンを獲得する。リターンの結果、相手側のエンドゾーンに達すればタッチダウンとなる(パントリターン・タッチダウン)。また、リターンせずにフェアキャッチを選択することもできる。

パントされたボールに守備側が誰も触れなかった場合は、ボールが止まった地点、またはアウト・オブ・バウンズの地点でレシービング・チームが攻撃権を獲得する。
パントされたボールにキッキング・チームが触れた場合は、ボールが止まった地点か、触れた地点を比較して自陣寄りの地点でレシービング・チームが攻撃権を獲得する。
ボールがエンドゾーンに入った場合はタッチバックとよび、レシービング・チームがの20ヤード地点で攻撃権を獲得する。

パンターは単に遠くへ飛ばすだけでなく、高く蹴って滞空時間(ハングタイム)を伸ばすことで味方選手がリターナーに近づく時間を稼ぐ必要がある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:249 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef