アフレコ
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台本通りに収録するとは限らず、収録の段階でアドリブが入ったり演技者が台詞を演じやすいように言い回しを変えることもある。

本番の収録が終わった後、NGや演者・スタッフが演技に納得いかなかった部分をおのおの録音し、一通り収録が終わる。

外国作品の吹替の場合は、イヤホンで原音を聞きながら行なわれる。また演者には事前に演技の参考として原版のビデオが渡されている。一方、アニメの場合は事前に台本を渡されるもののアフレコ時は無音の状態であり、映像も未完成であることが多い。

録音の工程はデジタル化されており、ハードディスク録音のため、ミスがあってやり直しになってもその台詞だけをリテイクするだけで済むようになっている[6]。かつて録音テープの編集ができなかった時代にはやり直し (NG) を出すと最初から収録をすべてやり直す必要があり[6]、本番ではたいへんな緊張感があったという。さらに遡るとテープ収録がなかった時代には生放送でアフレコを行なっていた。

松田咲實によれば吹き替えとアニメとでは録音技術が異なっており、吹き替えの収録に使えるスタジオはアニメの録音スタジオより数が少ないとされる[7]

スケジュールの都合などで別に1人だけ収録する場合は「抜き録り(ぬきどり)」、「別録り」[7]、「オンリー録り」[7]といわれる。そのために収録の時は、二人以上の声が同時に重なってはいけない制約がある[8]。宣伝目的で有名芸能人を起用する場合、話題作り(スタジオに特設のセットが用意され、報道陣前でアフレコを行う)やアフレコに不慣れなことからやり直しを何度もするためにオンリー録りが行なわれることもしばしばある。オンリー録りの場合は先に録音した声優の芝居を聞きながらアフレコを行えるため、単独でも掛け合いの芝居が成立するとされる[7]

コンピュータゲームの台詞収録は多くがアフレコではなく事前収録ではあるが、オンリー録りがほとんどである。また、映像作品のような画面を見ながらの収録ではないためアフレコ用の録音スタジオを使う事はなく、ナレーションの収録に近い。近年ではモーション・キャプチャーの映像を参考にレコーディングが行なわれることもある。

デジタル録音が可能になったことにより、アフレコの合理化が進んだとされる[6]

アニメの場合、画が完成していないままアフレコをすることが多いため、ラフ原や絵コンテを簡易撮影した素材を参考に演技し、台詞の場面では役名が表記されたボールドと呼ばれる四角い印が出る。簡易撮影した素材も無く、色のついた線や、動く口が表示されるタイミングで声優が台詞を喋る「白味線録音」[7]、「白味線録り」[9][10][11]、「妖怪口パク」と呼ばれる手法でアフレコが行われることもある[9][10]

1991年の時点では、アニメ作品のアフレコの9割は白味線録りで行われており[11]、キャラクターの表情や細かい動きがわからない状態で演技をせねばならず、声優にとって負担が大きいとされる[7]。過去には絵が完成していないことを理由に声優が帰ってしまい、アフレコが中断になったこともあったとされる[7]。アニメ作品のアフレコ現場で、絵の無い環境で役の外見のイメージと合わないと駄目だしをされた著名な俳優が、「イメージ通りにやらせたいなら絵を作って持って来い」と激怒したことがあると若山弦蔵は語っている[12]

声優の若山弦蔵は自身がアニメに出演しない理由として、白味線録音が嫌だったことを挙げている[13]。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}出来るはずのないことをやってしまうのが問題で、テレビ局は『声が入っていればいい』という感覚なんでしょうね。—若山弦蔵、週刊読売 、1991年4月7日号

島田敏は「画があればもっと良い作品に出来る」と悔しい思いを語り[11]野沢雅子は「綺麗な草原との台詞があってもそれが近くにあるのか広がっているのか分からない」と述べている[11]

声優やマネージャーなどからアフレコ時に絵が完成させることは再三要望されているとされる[7]。若山弦蔵によれば他の声優とアニメの収録について話した際に絵が無い環境について不満を述べれば仕事が来なくなると答えられたと述べている[12]

2020年、新型コロナウイルス感染症の影響により、ソーシャルディスタンスによる収録、アクリル板その他により、隣の人と空間をできるだけ分けるようにして収録されるようになった。また、少人数で小分けにしてアフレコを行う分散収録が多用されるようになり、感染症の流行が落ち着いて以降も、収録現場の負担軽減のため継続して分散収録が行われるようになった。


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