アフリカーナー
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このオランダ入植者の集団にはカトリックが主流のフランス王国で公民扱いされていなかった新教徒のユグノーなど、他のヨーロッパ諸国からのプロテスタント移民も合流する形で流入し、後に民族集団としてアフリカーナー(ブール人)と呼ばれることになる人々の前身が形成されていった。以上の理由より、アフリカーナーの出身国にはオランダ、フランス、ドイツの他、ベルギースカンディナヴィア諸国がある。この中でもフランス出身のユグノーは、現在もケープ地方に伝わるワイン製造の技術をもたらした[6]。また、こうして形成されたオランダ系集団は、インドネシアマレーシアインドスリランカモザンビークマダガスカルなどの出身のアジア系・アフリカ系の人々を奴隷として使役し、先住民サン人(当時の呼称ではブッシュマン)から家畜と土地を奪って従僕とした[7]

また、西ヨーロッパ出身の白人男性による大規模な入植が始まった当初は、同地において白人女性は殆どいなかった。それを補うべく、本国から本妻を呼び寄せたり、孤児の少女を集団で送り込んだほか、上述したインドネシア・マレーシアにあたる地域から連行されてきた、後にケープマレーと呼称される奴隷の女性達も到着する様になった。しかし、当然ながらそれだけでは問題の解決には至らず、多くの白人男性は、使役するコイコイ人や奴隷の女性と結婚したほか、性行為を強要し続けた。また、オランダ東インド会社もケープタウンに女性奴隷を収容した慰安所を設け、女性達は船員達の性奴隷として酷使された。

こうした異人種間の結婚や性暴力が多発した結果、数多くの混血児が生まれる事となった。その影響もあって、2019年2月に、無作為に抽出した77名のアフリカーナーを対象に行われた遺伝子調査では、そのほぼ全員が、非ヨーロッパ人の血統を保持していており、その平均的な割合は約4.8%、単純計算で10代前の祖先(1,024人)のうち50名前後は非ヨーロッパ人となる、という結果が発表された。由来のおおよその割合としては、南アジア系は1.7%、東南アジア系は0.9%、カポイドは1.3%、コンゴイドは0.8%であり、アメリカ先住民の血を引いている事例も確認されている。また、調査対象者における非ヨーロッパ人の血統の割合は、5名が10%以上、21名が5~10%、46名が1~5%、5名が1%未満だった[8]
民族形成期(1795年 - 1910年)19世紀南部アフリカのアフリカーナー諸共和国。ナタール共和国トランスヴァール共和国オレンジ自由国など。

19世紀のアフリカーナーの歴史はアフリカに勢力を伸ばしたイギリスとの対立が主要な矛盾となった。フランス革命戦争中の1795年にオランダ領だったケープ植民地がイギリスに占領され、1799年12月31日にオランダ東インド会社がオランダ本国を占領したフランスによって解散させられると、ケープ植民地で農業に従事していた植民者たちは帰る故国を失ってしまった[9]。また、イギリスによる占領以後、イギリスからの移民がアフリカ南部に流入し、とりわけ1820年にはイギリス政府からの補助金を得たイギリス人が多数入植した[10]。更に、イギリスによるケープ領有後、イギリス国内のキリスト教人道主義者による奴隷制度廃止運動の成果もあって、イギリスは1828年に第50法令でブッシュマンを始めとするカラードに白人と対等の権利を与え、1833年には奴隷廃止法を可決し、1834年12月1日にケープ植民地内の奴隷は解放された[11]。イギリス統治下で英語公用語となると、アフリカーナーは英語に不得手だったためにイギリス当局から二級市民(英語版)扱いされた。

イギリスによる奴隷解放によって無償の労働力を奪われたアフリカーナーは、イギリス支配を嫌って1830年代から1840年代にかけてグレート・トレックと呼ばれる沿岸部から内陸部への再入植を行ない、ンデベレ人やズールー人などのバントゥー系民族の諸王国と戦いながら再入植先でナタール共和国トランスヴァール共和国(1852年建国)、オレンジ自由国1854年建国)などのアフリカーナー共和国を建国した[12]。1835年から1840年にかけてグレート・トレックに旅立ったアフリカーナー6,000人は主にケープ植民地の中でも貧しい階層に属する小農民であり、混血者の従僕約5,000人を伴った彼等は、少数ながらも1838年12月16日の血の川の戦いでズールー王国のディンガネ王を打ち破っている[13]


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