アファーマティブアクション
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(2024年5月)

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}アメリカ合衆国では、アフリカ系アメリカ人(黒人)やラテン系の平均の学力が低いために進学率が低いことを是正するために、大学において一定枠の確保(理想としては黒人の全人口に対する割合と同一の合格確保)が行われている。差別が論拠とされるが、非白人(non-White Americans)で被差別民族であるはずのアジア系(東洋系およびインド系)の人種は、成績が全体として高いためにこの優遇措置を受けることができない。またアメリカの大学の入試においては課外活動での活躍が評価され、この分野では総じて白人が有利とされる。よって、成績が平均的に優秀であるアジア系が大学入学においての不利とされる。[要出典]

課外活動がアメリカの大学の入学審査で考慮されることになった元々の理由は1920年代に遡り、それは学力でWASPの白人より優秀であったユダヤ人ユダヤ系アメリカ人)の入学数を有名大学で制限するためであった。この場合は、実際の課外活動の内容に関係なく人為的にユダヤ人の点数を下げていた。現在ではこのような人為的な人種別の点数操作はなくなったが、結果として学問に熱心なアジア系の学生に対するハンディとなっている。また最高学府であるはずの大学の入学審査に課外活動が審査基準の一部であることの正当性も問われている[要出典]。このことからダニエル・ゴールデン(英語版)らはアジア系アメリカ人は「新しいユダヤ人」と呼ぶべき状態にあると主張している[17]。このため、「教育のためのアジア系アメリカ人連合」(AACE)のような優遇措置廃止を訴えるアジア系アメリカ人(特にアジア系学生の大多数を占める中国系の主導)の団体は同様の目的を持つユダヤ系アメリカ人のエドワード・ブルム(英語版)ら白人保守派のNPOである公平な入学選考を求める学生たち(英語版)と協力している[18]

アメリカの大学入試競争においては、ゴールラインが人種枠ごとに別々に引かれており、東洋系は他人種以上に成績をあげることが必要となる。このため、アジア系の人種は個々人の事情に関わらず、この不公正な入試で成果を収める為には人一倍の労力が制度上必要となるという、逆に差別的な実態が生じている。特にフィリピンベトナム系のアメリカ人は社会的にも不利な境遇の出身者であることが多く、白人の貧困層出身者と同じで彼らの立場改善に大きな妨げになっていると指摘されている[要出典]。

プリンストン大学の社会学者トマス・J・エスペンシェイドとチャン・Y・チュンが2005年に発表した研究によると、アイビー・リーグ校の入学選考においては、学力以外での基準によってSAT (大学進学適性試験)が様々に修正され、その幅は、1600ポイント中、優遇措置対象ごとに以下のように修正されるという(ただし調査期間は1980年から1993年の間と1997年に限られる)[19]

成績外の要素修正ポイント
黒人(アフリカ系アメリカ人)African American+230
ヒスパニック系Hispanic+185
アジア系Asians / Asian-American?50
スポーツ特待生Athletes+200
レガシー (元卒業生の子弟および大学への大口献金者)Legacy+160

さらに、2009年にプリンストン大学の社会学者がアメリカのアイビー・リーグの大学に入学に必要となる点数を人種別に割り出した所、満点1600点でアジア系は1550点(96.9%)、白人は1410点(88.1%)、黒人は1100点(68.8%)。確率にするとアジア系より白人は三倍、ラテン系は6倍、黒人は15倍の倍率で入学が認められるとの結果が出された[20][リンク切れ]。

カリフォルニア州では、1996年に州機関による性別、人種、民族に基づいた考慮を禁止する憲法改正案Proposition 209(英語版)が[21]、住民投票で承認され[注 5]、また州立大学の入学審査において積極的差別是正措置の適用を禁じる法律が住民投票により採択された。結果として、これらの州立大学(私立は関係なし)で白人の新入生の数は大して変わらなかったが、黒人の入学率が下がり、アジア系の入学率が上がった。しかし、入学後に落ちこぼれたり、退学する黒人やラテン系の学生の割合が減ったため、実際に卒業する黒人やラテン系の学生の数は変わらないという結果になった。

また、雇用の面では1964年成立の公民権法に基づき雇用機会均等委員会が設けられ、連邦機関や地方自治体に黒人、少数民族及び女性を、採用の際に一定数割り当てるよう指導した。さらに、連邦労働省連邦契約遵守局が出したガイドラインにより、連邦と一定額以上の事業契約を行う民間企業などは、少数民族に平等な雇用を提供するよう、採用に人種による割り当ての具体的な数値目標を示すことが必要とされた。また、解雇の際も黒人や少数民族を優先保護し、従来の労働慣行を無視して白人を先に解雇することが認められた。

職場における昇進に関してもアファーマティブアクションが用いられており、アラバマ州警察では一時期、最高裁判決に基づき、白人警察官が一人昇進するたびに、自動的に黒人警察官も昇進させる制度が採られた。

カリフォルニアの司法試験では受験生の出身校および人種を記録していたため、それは難関法科大学院に優遇措置で入学させてもらえた少数民族が法科大学院の目的である司法試験にどれだけの割合で合格しているのかという情報を明確に統計的に検証できる重要な情報源となっている。優遇措置に反対する学者が情報公開を求めたところ、個人情報の保護を理由にその公開が拒否されている。しかし、別の学者にはその情報を公開しており、その対応が問題になった。現在裁判で争われている。もし情報が公開された上で優遇措置のおかげで難関の法科大学院に入学させてもらったものが司法試験で最終的に挫折という結果が出れば、優遇措置無用論に有利であると考えられている。

また、アメリカでは「少数民族(一般的に教育の高い印象を持たれているアジア人を除く)の医者はアファーマティブ・アクションのおかげで医学大学院に入れたためヤブ医者の可能性が高い」と見られている事例もあり、逆に偏見・差別となっている例もある[23]

2006年、ミシガン州住民投票の結果、公立大学入学審査でのマイノリティ優遇措置を廃止すると決めた。この件はシュッテ対アファーマティブ・アクション防護連合事件として裁判で争われ、2014年4月22日、合衆国最高裁判所は合憲であると判断した。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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