アニー・エルノー
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『ある女』:次第に記憶を失い、身体的にも衰えていく母に最期まで寄り添って生きた娘が、その人生を必死に生きた一人の女の人生として描くと同時に、愛、憎しみ、いとおしみ、罪の意識など母に対する娘の複雑な感情を表現した自伝的小説。二人の母娘関係は、「もう彼女(母)の声を聞くことができない ... 私が生まれた世界との最後の絆を失った(Je n'entendrai plus sa voix... J'ai perdu le dernier lien avec le monde dont je suis issue.)」という言葉に象徴的に表現される[20][21]

『凍りついた女』:男女平等自由自立の理念を生きようとした男と女が、結婚、出産の後に、結局は仕事に忙殺される夫と、家事や子育てに忙殺される妻・母という性別役割分業を担うことになり、好奇心や生きる意欲を失い、自分自身すら見失って「凍りついて」いく。自分自身の体験を、一人の若い女性の「普通の」生活として描いた自伝的小説[22][23]

『戸外の日記』:これまでの私小説的な作品とは対照的に、こうした一連の作品を書いていた間に「戸外」で起こっていた出来事に目を向け、地下鉄スーパーマーケットでの情景などをスケッチ風に描いている[24][25]

『嫉妬』:長年つきあってきた若い恋人と別れた後、相手から別の女性と共に暮らすと言われ、嫉妬にかられる。相手の女性を突き止めようと次第に偏執狂的になり、原題『占領(L'occupation)』が示唆するように意識が占領され、この女性のことしか考えられなくなった自分自身を冷徹に描く作品[26][27]

政治的立場

2012年フランス大統領選挙では「左派戦線(フランス語版)」のジャン=リュック・メランションを支持した[28]

パリ同時多発テロ事件後にフランス政府は非常事態宣言を発令し、直後に開催が予定されていた第21回気候変動枠組条約締約国会議 (COP21) の際にはデモが禁止されていたが、これに抗議し、デモをする自由を求めた58人による「58人の訴え」に署名している[29][30][31]

2016年6月、政府が労働法典改革と労組や学生組織による反対運動を暴動騒擾として法的に無効にしようとしたことに反対する『リベラシオン』紙掲載の請願書に署名している[32][33][34]

2017年6月、『白人、ユダヤ人、そして私たち (Les Blancs, les juifs et nous)』の著者で「共和国原住民 (Indigenes de la Republique)」党のスポークスパーソンでもあるウーリア・ブテルジャ(フランス語版)を支持する約20人の知識人とともに『ル・モンド』紙掲載の請願書に署名している。「共和国原住民」党は反ユダヤ主義ホモフォビア反フェミニズムなどと非難されることが多いため[35]、この請願書に対する抗議が巻き起こった[36][37][38]

2018年5月、エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認および2018年5月14日のエルサレムでのアメリカ大使館開館後の緊迫した情勢にあって、フランスイスラエル間の文化交流のための企画「セゾン・フランス-イスラエル」(6月5日にベンヤミン・ネタニヤフ首相とエマニュエル・マクロン大統領による開幕式)[39]を開催することに反対し、ボイコットを呼びかける『メディアパルト(フランス語版)』紙掲載の請願書に署名した[40]
受賞歴

1984年 - 『場所』で
ルノードー賞を受賞。

2008年 - 『歳月(Les Annees)』でマルグリット・デュラス賞およびフランソワ・モーリアック賞(フランス語版)を受賞。

2008年 - 全作品についてフランス語賞を受賞。

2014年 - セルジー=ポントワーズ大学(フランス語版)から名誉博士号を授与された[41]

2016年 - 『歳月(Les Annees)』が、イタリア語に翻訳された欧州作家の小説に与えられるストレーガ・エウロペオ賞を受賞(翻訳はL’orma editore)[42]

2017年 - 全作品についてマルチメディア作家協会からマルグリット・ユルスナール賞(フランス語版)を授与された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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