アニメ産業と呼べるほどの規模はなく、映像制作の一分野に留まり、業界の構造としては建設業の下請け制度に類似する構造を持っているとされ、「大手制作プロダクション(元請け)」→「中堅制作プロ(子請け)」→「零細制作プロ(孫請け)」と段階ごとに、制作費の「中抜き(ピンハネ)」が存在するといわれている[20][21]。
表現技法の発展と向上は、個人の感性と技術の熟練度に依存し、技量差が品質に反映される労働集約的作業に支えられているが、制作環境はアニメーターの場合、収入は新人で月額で約2 - 3万円。中堅で約7万5000円 - 10万円程度といわれ、約25%は年収100万円以下である(日本芸能実演家団体協議会、2008年調査)などの賃金や雇用環境、労働条件などの問題で、国内での人材の確保もままならない状態も恒常的に続いている。
これらの問題が長期間続いた結果、2020年ごろから国内人材の枯渇と技術を向上させた中国の台頭により、日本の白物家電と同じ道を辿るという指摘もある[22]。詳細は「アニメ制作の国際分業化」を参照 アニメーション製作のデジタル化に至るまでには、フィルム・アニメーションから、ビデオ・アニメーション、ビデオ変換装置など、さまざまなシステム開発が進められてきた。 1986年に池田宏(東映動画技術研究室長)は、「映像というメディアはこうした科学技術の基盤の上に構築されているものであり、このことは当然、これらの科学技術の発展に応じて新しい映像メディアの登場もあり得るのである。したがって映像関係者はこれら科学技術の発展にはたえず対応していかなければならないし、それを怠れば映像技術者として脱落さえ意味することになる」と語っている[23]。 1970?1980年代後半、ビデオの普及やコンピュータの導入によってアニメーションの製作過程は大きく変わり始め、デジタル化に向かって動き始めた。 1984年に東京中央プロダクション
製作工程の省力化とデジタル化
省力化
現像するまで撮影結果のわからないフィルム・アニメーションから、現場で即時に撮影結果がわかるVTRアニメーション撮影は、撮影現場の撮影期間短縮による製作コストの軽減、画質の保持、映像メディアのコンパクト化とリテイクによる経済的損失からの解放となった。
アニメーション作品以外にも広く活用され、映画やカラオケの字幕(スーパーインポーズ (映像編集))やデパートやメーカーなどの映像カタログ制作にも使用されるようになった。また、画質を落とさずに大量複製が可能になったことからOVAが普及する契機ともなった。
1985年にフィルムからビデオへの変換装置、テレシネシステムの登場で、多くのフィルムアニメーション作品がビデオ変換されテレビで放映されたこともデジタル化への指針となった。 1990年代、コンピュータの発達やソフトの開発が進み、アニメーション制作で使用される幅が広くなり活用するようになった。2010年代以降に通信網やソフトウェアが豊富になったことで、アニメ工程に直接関連するものから、連絡作業や進捗確認に至るまでデジタルツールが多用されるようになった。 1990年代後半から、着色工程がセル画に直接行うものから、原画をスキャンしてパソコン上で行うデジタル彩色に移行し、1999年頃に全面的に移行し最後までセル画で制作されていた『サザエさん』の2013年9月29日放送分を最後に[24]、全ての商業作品はデジタル方式に移行した。仕上げ工程に導入された、デジタルペイントは訂正が容易で塗料の乾燥を待つ必要がなく、傷・ホコリなどのセル画の管理の手間も省け、また画像データとしてネットワークに載せることが可能となり、日本国内および国外などの遠隔地とのやり取りが容易化したことで、大幅な省力化・コストダウンが進んだ。また、液晶タブレット
デジタル化と3DCG
映像表現においては塗料による使用色数の制限がなくなり、精密なグラデーション表現が可能となった。撮影工程でのセルの重ね合わせによる明るさの減少がなく、カメラワークの自由度が広がる他、エアブラシによる特殊効果や透過光などが簡単に施せるなどの利点がある。ただ、色の三原色ではなく光の三原色寄りにビデオ出力されるため、フィルムとビデオでは映像の質感が異なり、フィルムは柔らかい質感、ビデオはクリアな映像が特徴があり、クリアで明るすぎる発色に違和感もあった。その後、彩色補正により改善されてセルアニメを凌ぐ美しさを持つ作品もみられる。
3DCGは作画崩壊することなく自由なアングルで描写でき、完成後もソフトウェアで変形・変色が可能であるなど品質安定と省力化の効果が大きい。単にCGを配置しただけでは手描きとの質感の差から違和感があるため、色調などを調整し違和感を軽減する手法やフルCG作品に手描きの表現手法を再現するなど、双方の技術を融合する試みが行われている。2010年代に入るとセルアニメの質感をCGで再現する『セルルック』と呼ばれる技法が発達し、日本でもキャラクターなどにもCGを使用する作品が増加した。
日本国外ではディズニー映画を多く手掛けるピクサー・アニメーション・スタジオを中心としてフル3DCGアニメーションが主流となり手描きアニメを駆逐する勢いだが、日本国内では自動車などの機械類や魔法のエフェクト、動きの多いシーンなどを描写する補完的な使用が依然として多い。プロレベルの3DCGソフトウェアはライセンス料が高額でコンピュータも高性能モデルを必要することに加え、複雑な操作を習得するため専門学校等でトレーニングを受けた人材が必要になる、手描きアニメに慣れた視聴者に訴えにくいといった点から、2020年代現在もフルCG作品は少ないのが現状である。
実際の業務を行うのはアニメ制作会社の一部門やCG関連業務のみを受託する小規模なスタジオが多いが、ポリゴン・ピクチュアズのような3DCGの専門会社がアニメ制作に参入する例もある。 ラテン文字のanimationの m の次は a であり e が含まれていないので、animeと略すことは出来ない。アニメーションをアニメと略せる言語は日本語に限られるため、日本国外の英語圏などで「anime」という場合は日本のアニメや日本風の表現様式のアニメに対して用いられる[25]。
anime