アニメーター
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1990年代後半からアニメ制作にコンピュータを使うデジタルアニメが主流となり、2000年代以降は静止画の自動生成技術や[1]、中割りの自動生成、自動彩色[26][2]、3DCGなど省力化や人件費を抑える試みも行われているが、逆に言えばアニメーターの仕事が減ることにもなっている[27]

中国AGC企業が日本で会社を設立し、良い人材を集めるため、日本の企業より良い待遇を提示する例もある[28][29]。上記のような劣悪な労働環境が長く続いた結果として日本国内の人材は枯渇しつつあり、業界トップのスタジオ以外は美大卒が多い中国のアニメーターより安価だか質が悪いという意見もある[29]。またNetflixによると日本では高度なデジタルスキルや機材が普及しておらず、紙ベースでは制作が困難な4K規格アニメへの対応が難しいという[30]

2021年4月、ウィットスタジオでは高いスキルを持つアニメーター育成事業としてNetflixの協力のもと『WITアニメーター塾』を開催した[31]

2021年ごろの平均的なテレビシリーズの単価は1カット3000円から7000円、品質を重視した独占配信の場合は15000円以上が相場とされる[32]

MAPPAに所属していたアニメーターは、2021年放送の『進撃の巨人 The Final Season』ではフリーランスや海外スタジオに原画を発注したが、会社所属のアニメーターが外注先から来た原画の修正作業に追われたことや、作品数を増やすという会社の理念によりオーバーワークとなっていたことを告発した[33][20]。またNetflix制作のオリジナル作品は高品質が求められるにもかかわらず、原画は1カット3800円と平均的なテレビシリーズの単価よりも安価であることが告発された[32]

2022年では原画は1カット5000円以上が相場とされるが、予算の都合により減らされたことで海外の安価だが質の悪いアニメーターへ仕事が回されることもあるという[15]

2022年にインタビューを受けた富野由悠季は演出家の自分が絵コンテ以前に原画まで描く必要のあった過去と比べ、動画になった際のイメージを持ち、自己表現ができるレベルの高いアニメーターが育っていると発言している[34]。またアニメーター以外でも、美術大学を卒業し向上心の高い者が背景など美術スタッフとして入ってきているとも発言している[34]。一方でこのようなレベルの高いスタッフは賃金が高いことから、予算が少なかったりトラブルで放送までの時間が少ないなど、引き受ける人間が限られる仕事もあるという[15]。スタジオレオ代表でもある演出家の佐々木純人は、原画、演出、制作進行と背景の発注を単独でこなし、作画崩壊はあっても少数の所属アニメーターと共に放送できる状態に仕上げることが可能であるため、このような炎上した案件が集中して舞い込むという[15]

2023年には国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会で報告された日本の人権問題でもアニメ業界の労働問題に言及されており、ヒューマンライツ・ナウの事務局長で弁護士の小川隆太郎は、日本のアニメが人権侵害により制作されたという認識が広まると海外での流通に影響が出る可能性を指摘している[35]

TRIGGER取締役の舛本和也は2023年時点で、日本のアニメの動画と仕上げの9割が海外依存となっており、為替や政治の問題で中国が仕事を受けなくなった場合、制作が不可能になると指摘している[4]。実際に2022年から2023年前半には中国での新型コロナウィルス感染拡大により、多くのアニメが延期を余儀なくされている[4]。日本国内のみで動画を完結させるには5000から1万人の増員が必要とされるが、業界に入るのは年に500から1000人と圧倒的に足りず、自動化技術も実用レベルに達していないという[4]。TRIGGERでは国立情報学研究所の協力を得て、画像自動生成技術の開発に必要なアニメのデータとして、『リトルウィッチアカデミア』の素材データを大学や研究機関に提供している[36]
海外

海外のアニメーターにはフリーランスで作業を手懸ける者が多く、その分野ではエンターテインメント領域で働く人間のための特別な社会保障制度が存在している。特にフランスにおいてはその制度で健康保険年金が設けられている他、年に1回「Conges Spectacles」(エンターテインメント産業界の休暇の意)という有給休暇が1カ月分与えられることが最大のメリットとなっている[注 2]。基本は自己申告制であり「ここからこの辺りまで休暇を取りたい」と伝えると、そこから1ヶ月分の給料を手渡されるようになっている。ただし、その前年にあまり働いてなければこの給与が少なくなってしまう欠点を孕んでいる[37]

中国では平均月収が日本円換算(2021年時点)で45?52万円という高収入の職業として認識されており、美術系の大学を卒業した者が集まっている[29]。国内企業が日本のアニメの動画と仕上げを多く引き受けている[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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