アニメーター
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劣悪な労働条件を改善するため、2007年平成19年)10月13日に、スタジオライブ社長の芦田豊雄の呼びかけで、日本アニメーター・演出協会(JAniCA)が設立された[22]

統計では制作費やスタッフの給与は全体的に上昇し福利厚生も向上しているが、重要な役職の給与のみ上げる合理化やアニメーターのフリーランス志向により、最低給与の動画と他職の格差が進んだことが、「アニメーターは劣悪な環境」と指摘される要因となっている[14]。またいち早くステップアップできる者と、基礎が出来ておらず上達が見込めない者の格差も存在する[14]

2008年株式会社ボンズ名義でアニメーターの個人情報が流出する事件が起こり、アニメーターの格付けが行われている実態が明らかとなった。その格付けによると「こいつはクビ」「戦犯」「会社の癌」などとアニメーターの人権を否定するよう格付けしていた(ボンズ側は一切関係ないと否定)[23]

2016年10月頃よりピーエーワークス所属のアニメーターが自身のTwitterにおいて、支払明細書を掲げた上で同社の雇用条件や賃金に対して、批判的なツイートを投稿。当のアニメーターが公開した給与のうち、もっとも高額だったのは2016年10月支払分の手取り額で67,569円だった[24]。それらが注目されて、ネット上の各所に情報が拡散される事態となった。ピーエーワークスでは2017年から本社のアニメーターを正社員とし、養成プログラムをスタートさせた[25]

1990年代後半からアニメ制作にコンピュータを使うデジタルアニメが主流となり、2000年代以降は静止画の自動生成技術や[1]、中割りの自動生成、自動彩色[26][2]、3DCGなど省力化や人件費を抑える試みも行われているが、逆に言えばアニメーターの仕事が減ることにもなっている[27]

中国AGC企業が日本で会社を設立し、良い人材を集めるため、日本の企業より良い待遇を提示する例もある[28][29]。上記のような劣悪な労働環境が長く続いた結果として日本国内の人材は枯渇しつつあり、業界トップのスタジオ以外は美大卒が多い中国のアニメーターより安価だか質が悪いという意見もある[29]。またNetflixによると日本では高度なデジタルスキルや機材が普及しておらず、紙ベースでは制作が困難な4K規格アニメへの対応が難しいという[30]

2021年4月、ウィットスタジオでは高いスキルを持つアニメーター育成事業としてNetflixの協力のもと『WITアニメーター塾』を開催した[31]

2021年ごろの平均的なテレビシリーズの単価は1カット3000円から7000円、品質を重視した独占配信の場合は15000円以上が相場とされる[32]

MAPPAに所属していたアニメーターは、2021年放送の『進撃の巨人 The Final Season』ではフリーランスや海外スタジオに原画を発注したが、会社所属のアニメーターが外注先から来た原画の修正作業に追われたことや、作品数を増やすという会社の理念によりオーバーワークとなっていたことを告発した[33][20]。またNetflix制作のオリジナル作品は高品質が求められるにもかかわらず、原画は1カット3800円と平均的なテレビシリーズの単価よりも安価であることが告発された[32]

2022年では原画は1カット5000円以上が相場とされるが、予算の都合により減らされたことで海外の安価だが質の悪いアニメーターへ仕事が回されることもあるという[15]

2022年にインタビューを受けた富野由悠季は演出家の自分が絵コンテ以前に原画まで描く必要のあった過去と比べ、動画になった際のイメージを持ち、自己表現ができるレベルの高いアニメーターが育っていると発言している[34]。またアニメーター以外でも、美術大学を卒業し向上心の高い者が背景など美術スタッフとして入ってきているとも発言している[34]。一方でこのようなレベルの高いスタッフは賃金が高いことから、予算が少なかったりトラブルで放送までの時間が少ないなど、引き受ける人間が限られる仕事もあるという[15]。スタジオレオ代表でもある演出家の佐々木純人は、原画、演出、制作進行と背景の発注を単独でこなし、作画崩壊はあっても少数の所属アニメーターと共に放送できる状態に仕上げることが可能であるため、このような炎上した案件が集中して舞い込むという[15]

2023年には国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会で報告された日本の人権問題でもアニメ業界の労働問題に言及されており、ヒューマンライツ・ナウの事務局長で弁護士の小川隆太郎は、日本のアニメが人権侵害により制作されたという認識が広まると海外での流通に影響が出る可能性を指摘している[35]

TRIGGER取締役の舛本和也は2023年時点で、日本のアニメの動画と仕上げの9割が海外依存となっており、為替や政治の問題で中国が仕事を受けなくなった場合、制作が不可能になると指摘している[4]。実際に2022年から2023年前半には中国での新型コロナウィルス感染拡大により、多くのアニメが延期を余儀なくされている[4]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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