アニメーター
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作画監督は動きをチェックして修正したり、原画マンごとに異なるキャラクターの解釈をキャラクターデザインに基づいて修正して画面の統一を図ったりする。アニメーター出身の演出の中には作画監督の領域までタッチすることもある。作品によっては、作画監督間の絵のバラつきを押さえるために、総作画監督を立てることもある。

紙と鉛筆などアナログな制作環境で行うことが過去から続いているが、ペンタブレットとイラストソフトを利用して原画作業を行う「デジタル原画(作画)」による効率化も図られている[3]
動画

担当する者は「動画マン」と呼ばれ、原画と原画の間を補間するように絵を描き、これを中割りという。また、ラフに描かれた原画の線を拾いクリーンナップ(清書)作業を行うのも動画の役割である。一般的に、新人アニメーターは動画を担当し、技量を認められると動画検査や原画を任せられるようになる。

原画工程同様に管理役職がおり、動画検査と呼ばれる動きに関する熟練者が動画の修正やリテイクを指示する。

多くの人手が必要であるが、慢性的に不足している[4]
CG

デジタルアニメが一般化しているが、レタッチソフトと液晶タブレットを使い、「手で描く」手法が主流であることや、専門知識を持つ者が少ないため、CGを活用できるアニメーターの確保は難しいという[5]
労働環境
日本宮崎駿は、数々のアニメ映画に携わり、スタジオジブリの共同創設者としても知られる日本のアニメーターである。

多くは専門学校や美術系の大学を卒業して仕事を始めるため他の社会経験が少ないことや、「好きだからやる」という芸術家気質の者が多いため、業界全体がムラ社会化し就労環境の悪さに気がつかない者が多くなり、劣悪な環境が長期間放置されたという意見がある[6]

1975年のUFOロボ グレンダイザーから仕事を始めた本橋秀之は、当時はアニメーターという言葉は滅多に聞かれない時代だったと回想している[7]

1980年代には低収入という認識が芸術系学生の間で広まっており、当時アニメーターを目指し日本大学芸術学部へ進学した青山剛昌は、入会した漫画研究会の先輩である矢野博之漫画家の方が儲かると言われ進路を変更したという[8]。実際に1980年代に原画マンだったあきまんは賃金の低さから辞めている。

彩色などアニメーター以外の職も低賃金であり、森川ジョージは子供時代に母親が家計を助けるためセル画彩色の内職をしていたが、必要な道具は買い取りで塗料(アニメカラー)の補充も必要であるが賃金は1枚1桁円なため元は取れず、トレス台で目を悪くしたため、少年徳川家康(1975年放送)の作業を手伝ったことがあるという[9]

制作側ではより賃金の低い中国や韓国に作業を発注するようになった。1986年にはNHKが『アニメ三銃士』において動画以降の作業を韓国に発注することについて、日本のアニメ産業の空洞化につながるのではないかと国会質問がなされた[10]。NHK側は韓国のアニメ会社は制作能力が高く低コストであるとし、それが受信料の効率的な使い方になる回答した[10]。この際に韓国への発注は日本よりも1話あたり100万円から200万円ほど廉価であると数字を挙げている[10]。韓国への発注は人件費が上昇する1980代後半まで続いた[11][12]。韓国や台湾が経済成長により人件費が上昇した1990年代からは中国フィリピンベトナムなどさらに人件費の低い国に下請け先が移った[13]

西位輝実は20歳(1998年ごろ)に初めてもらった月給が2800円だったという[6]。また研修期間が終わった後も収入は5?6万円だったことからアルバイトを掛け持ちしていたという。

新人の場合、2017年時点で時給換算で150?200円であったという[6]

現在の日本のアニメーターのほとんどが契約社員かフリーランス(個人事業主)であるが、近年では正規雇用により人材確保を進めるスタジオもある[14]固定給制である制作会社スタジオジブリ京都アニメーションなどごく少数しかない。

実力を認められたアニメーターが会社側から拘束をうけ、単価とは別の固定給をもらうという場合も存在する[15]

新人アニメーターの担当する作業は低単価の動画であるが[14]原画から育成する方針のスタジオも存在する。日本のアニメは製作委員会方式による資金調達が主流であるが、制作会社の多くは資金に余裕が無いため出資が出来ない。またアニメは完成までに時間がかかり放送前にスタッフへの支払いが必要となることから、オリジナル作品であっても製作委員会による資金調達が必要になる。しかし資金力の少ない制作会社は「製作者」としての権利を独占できず、二次利用での売上配当などを資金力のある出資者に渡すなどの妥協が必要となる[16]。売り上げが少ないことから制作会社は資金的な余裕が得られず、社員としてアニメーターを雇用する余力を持つこともできない。これによるしわ寄せが動画の低賃金となっている問題がある[14]。製作委員会に出資した場合でも原作の印税や楽曲使用料など、一部の権利や配当を得ることは出来ない。またクライアントが提示した制作費自体が少ないことも多く、人件費の増加と合わせると慢性的な赤字だという[17]

動画1枚・原画1カットの単価×出来高制の業務委託請負形式である。制作物の著作権は製作委員会や原作者などが有しているため、指定されたカットを描くアニメーターには著作権料は支払われず、買い切りであるため売り上げも還元されない契約が普通である。

作画監督は1話の制作期間(2カ月程度)拘束されるため、作品の掛け持ちや、あるいは制作会社が拘束料を支払い専属の契約社員となる場合もある。

新人アニメーターの多くは契約社員であり、才能が無く動画からステップアップできない者は収入が上がらないことから[14][6]、転職を進められるなどして1年間で90%が辞めていく状態である[14]。平均労働時間は1日約18時間、週2回は徹夜で月収約2?3万円しかない(新人)。中堅クラスのアニメーターや動画担当でも月収は約7万5000円?10万円[注 1]程度しかなく、良くても約15万円といわれ、約25%は年収100万円以下であるといわれる[18]

1980年代ごろまでは月あたり1000枚ほど生産していた動画アニメーターが存在していたのに対し、制作体制のデジタル化に伴いスキャンして彩色する関係上、作画の線を綺麗に描かなければならないこと、視聴者から求められている作画のレベルが上がっていることから、1人で多くの枚数を生産しにくい状況となっており、月に500枚描ければ動画マンは一人前とも言われる。動画マンとしての仕事を覚えて現場でアニメーターとしての実力を認められると原画の仕事に移行する[19]。原画の場合は1枚ではなく、1カットの単価であるが、責任者である作画監督になると1話あたりの単価で計算されるという。単価制であるため1カ月に300カットのレイアウトを描き、月収が200万円に達する者もいる[15]。フリーランスの場合は経験年数とは関係なく原画を受注できノルマも無いことから多くのアニメーターは独立を志向しているが[20]、制作費に上限があるため単価が上昇すると起用される機会が減少するというジレンマや[15]、そもそも起用されるか不明という問題がある。またフリーランスは所属先のフォローが無いことから制作側からのイメージが良くないとされ、賃金交渉では不利だという[15]

制作にはアニメーター以外のスタッフも多く関わるが、 アニメ監督の山崎理は「アニメ制作の予算配分はおかしく、音響監督脚本家、撮影はもらいすぎではないか」と疑問を呈している[21]。なお限られた制作費から配分されるため制作会社も赤字になることが多い[17]。このためグッズなど作品以外の収益に依存する体質となっており、ユーフォーテーブル社長の近藤光は賃金の未払いや倒産を防ぐため、グッズの収益を脱税して起訴された[17]


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