なお、同時代にアトランティスに興味を持ったオカルティストたち、その端緒であるヘレナ・P・ブラヴァツキーとドネリーに影響関係があったか否か、あったとすればどのようなものかは不明である[52]。ドネリー以降、アトランティス学の著作家たちは彼の主張をベースに、超自然現象、科学の知見を超えた知識や技術、異星人などの要素を追加し、さらに理想化したアトランティス像を作っていった[9]。
アトランティスとオカルトの遭遇ヘレナ・P・ブラヴァツキー神智学徒W・スコット・エリオット(英語版)の著作『アトランティスの歴史』(История Атлантиды、1910年)より、アトランティスの地図。
ドネリーと同時期に、オカルティストたちもアトランティスに興味を持ち始めた。1875年に神智学協会を設立したヘレナ・P・ブラヴァツキーは、77年に『ヴェールを剥がれたイシス』を執筆し、アトランティスに4回言及し、プラトンが述べたようにアトランティスは実在したと述べた。これは後年のようなオカルト的なアトランティスの記述ではない。[53]
インドに本拠地を移したブラヴァツキーは、インドでのスキャンダルを避けて1885年にヨーロッパに戻り、1888年に、チベットの導師やマハトマ(偉大な賢者)と交信し、アトランティスでセンザール語という秘密言語で書かれた『ジャーンの書』に目を通しトランス状態で授かった教えを記したという『シークレット・ドクトリン』を出版[54]。壮大なオカルト宇宙史・人類進化史を展開し、アトランティス等の失われた大陸を中心テーマに語った[54]。これは、プラトンの流れをくむアトランティスとは非常に異なるものである[54]。宇宙は7つの時代を経るとし、各時代には固有の根源人種(英語版)がいるとした。7つの周期は、太陽系の創造者である宇宙意識[注 7]が、進化の促進のために設定したものだという[55]。
第一根源人種 - 地球が太陽神に知恵を持つ霊的生命体を授けてくれるよう願い、太陽神が七大天使に命じて創らせた。不可視の非物質的領域である「不滅の聖地」に存在[56]。
第二根源人種 - 肉体があるが無性の骨のない人種。北極地方にあったハイパーボリア大陸に存在。[54]
第三根源人種 - 猿のような姿で両性具有・卵生・四本の手と頭部の後ろに目が一つある人種。レムリア大陸に存在。[54]
第四根源人種 - 現代人より体が大きく知能の高い優れた人間。アトランティス大陸に存在。[54]
第五根源人種 - アーリア人。アトランティス王国の生き残りであるマハトマに導かれ文明を築いた、現代の文明を主導する支配人種[57]。いずれ天変地異が相次ぎ、アメリカ大陸が陥没して滅亡する[58]。
第六根源人種 - パーターラ人。北アメリカ大陸で生まれつつあり、いずれ誕生する大陸で進化する[58]。
第七根源人種 - 完全な霊性の時代に移行し、進化が終了する[58]。