アスペルガー症候群
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この診断名は、オーストリア小児科医ハンス・アスペルガーにちなんで付けられた[5][58]

1944年にハンス・アスペルガーは「小児期の自閉的精神病質」という題で4例の子どもについての論文を発表した。前年の1943年にはアメリカの精神科医レオ・カナーが早期乳幼児自閉症に関する論文を発表し、カナーの論文がその後、長く英語圏で影響を持つようになり、アスペルガーの論文は顧みられることが少なかった。日本ではアスペルガーの論文は比較的早く紹介されたが、イギリスやアメリカの影響が強くなり、忘れられがちとなった。

英語圏では1981年に、イギリスの児童精神科医のローナ・ウィングがアスペルガーの業績を再評価したことがきっかけとなり、広く知られるようになった。ウィングは多数例から、自閉症とは診断されていなくても、社会性コミュニケーション想像力の3つの面で同時に障害をもつ子どもたちがいることに気づいた。当時は、自閉症の診断は言語による意思疎通が限定されており、対人的関心が非常に乏しい子どもに対してのみ行われ、言葉による意思疎通が可能か、一方的でも対人的関心がある場合は自閉症とは診断されなかった。ウィングは三つ巴の障害を持ちながら自閉症と診断されない子どもたちの一部が、アスペルガーの報告した症例に似ていることからアスペルガー症候群の診断名が適切であると考えた。

1981年以降は、世界的にも注目されるにいたり、国際的な診断基準であるICD-10アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-IV)にもその概念が採用された。

1944年 - ハンス・アスペルガーによって「自閉的精神病質」と初めて報告されたが、第二次世界大戦のため、その論文は戦勝国側では注目されていなかった。

1981年 - ローナ・ウィングがアスペルガー症候群の発見を紹介[59]

1989年 - 社団法人日本自閉症協会設立

1990年代になり世界中で徐々に知られるようになった。しかし、日本ではドイツ精神医学の影響が強かったことから、ローナ・ウィングの紹介以前に知られていた[60]


1992年 - 世界保健機関 (WHO) の『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』 (ICD-10)に診断基準が初めて掲載される。

1994年 - アメリカ精神医学会の『精神障害の診断と統計マニュアル』 (DSM-IV)に診断基準が初めて掲載される。

2005年 - 発達障害者支援法施行

2005年 - 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)施行

2006年 - 障害者自立支援法施行

2013年4月 - アメリカ精神医学会のDSM-5から、アスペルガー障害の診断名は消えた[9]

2013年4月、障害者自立支援法改正により、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)となる。

アスペルガー症候群と触法行為との関係

広汎性発達障害のノートに、この節に関係する提案があります。ご意見をお寄せ下さい。

アスペルガー症候群を抱えている人物の犯罪率について、健常者よりも高いと報告する調査報告とほぼ同等であるという調査報告があり、結論の一致をみていない[61]。現在の精神医学界ではアスペルガー症候群や広汎性発達障害など発達障害そのものが触法行為の原因になると考える見解よりも、その人物を巡る周囲環境との相互作用の結果として触法行為に至ったと考える見解が優位になっている[62]

岩波明によれば、発達障害の定義のあいまいさや無理解を巡る問題も見解が分かれる理由の一つであり、何らかの精神疾患を抱える被疑者がたとえ統合失調症のような症状を示していても精神鑑定で「発達障害」と安易に診断したり、発達障害を抱える被告人が裁判でその場の空気を上手く読めないがために、自分に有利になる弁明やジェスチャーを行えず「反省の情がない」と裁判官に受け止められ有罪判決や実刑判決を受けることが多いという[63]

アスペルガー症候群と犯罪との関係をマスコミがセンセーショナルに報じていることも、それと犯罪との関係性の見方に影響を及ぼしている。小学生の女児が同級生を殺害した佐世保小6女児同級生殺害事件では加害者がアスペルガー症候群とされマスコミに大々的に報じられた。作家の森達也は「子供が子供を殺したのか。だから?」と述べて、ことのほか騒ぎ立てるマスコミの報道のあり方のほうに疑問を呈した[64]。昭和(終戦から高度成長期)の頃は小学生も含めた未成年者による殺人が年間約300件から400件ほど発生しており、さほど珍しいことではなかったが、平成年間に入ってそれが沈静化した頃にこの事件が発生したので、「加害者が抱えるアスペルガー症候群に起因する異常な事件」と捉える心理バイアス大衆心理)が強く働いたと岩波明は考えている[64]
ASDの犯罪率は健常者より高率とする見解

社会学者の井出草平は、家庭裁判所に送致される少年犯罪の中でアスペルガー症候群が占める割合を調べたデータとDSM-5に掲載されている有病率を基にして、アスペルガー症候群の犯罪親和性を求めた[65]


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