アスファルト
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この性質を活かして、道路舗装用の骨材の接着剤として多く用いられているほか、油分でできている特長を活かして燃料や原料、防水材、防腐剤、熱可塑材、電気絶縁材、断熱材、高真空用シーリング材、衝撃吸収材、潤滑剤、顔料としても利用されている[11][16]。道路舗装用に使われる以外のアスファルトのことを、工業用アスファルトと呼んでいる[16]。アスファルトの使用量は、舗装用と防水用で約80%を占めている[16]
乳剤
道路舗装の表層(及び基層)を施工する際、防水効果を得たり、合材との接着をよくするためにまかれる褐色の液体。また舗装の継ぎ目にも隙間からの破損等を防ぐために流し込まれる。水とアスファルトを界面活性剤を使って混合させたもので、水分が蒸発すると黒色になりアスファルト分だけが残る。基層を構築したあと、表層を施工する前に基層表面に一様に散布されるものをタックコート[17]、アスファルト混合物を敷設する前に路盤表面に均一に散布されるものをプライムコート[17]、継ぎ目に流し込まれるものをシールコートと呼ぶ。
道路舗装材
アスファルト混合物」も参照アスファルトを結合材として、骨材(砂利や砂、一部融解スラグ等)やフィラーを混合したアスファルトコンクリート舗装に用いる。アスコン(アスファルトコンクリートの略)、合材(アスファルト混合材料の略)などと呼ばれる。
防水用アスファルト
アスファルトルーフィング」も参照建築分野では、鉄筋コンクリート構造の建物に多い陸屋根や、住宅屋根の下地防水工事で用いられるシート状のアスファルト系防水材に用いられる[18]。繊維を原料とした不織布・布・紙などにアスファルトを浸透させてシート状にしたアスファルトルーフィングは、建物内への雨水の浸入を防ぐことを目的に屋上や住宅屋根の下葺材、壁面・浴室の防水材に使われる[18]。アスファルトを塗布した板状の芯材の両面に鉱物質粉粒や彩色砂粒をまぶして貼り合わせたアスファルトシングルスは、木造建築の屋根下葺材のほか、釘に加えて接着剤による施工ができることからコンクリート下地や耐火性ボードなどの屋根防水としても使用されている[19]。土木分野では、地下鉄、共同溝などの地下構造物の防水、道路橋床版の防水、水利構造物で用いられる[16]。地下コンクリート構造物では、雨水や地下水が構造物内部へ漏水することを防止するため、合成繊維不織布・プラスチックメッシュを芯材に改質アスファルトを含浸したシート状のアスファルト系防水材を、構造物の全面的に貼り付ける工法で用いられている[16]。道路橋においても、床版にシート系や塗膜系のアスファルト防水材が用いられており、鋼床版では主にグースアスファルト舗装[注釈 1]が防水兼基層として採用されている[20]。水利構造物では、フィルダムなどの表面遮水壁・内部遮水壁に水工用の加熱アスファルト混合物が用いられ、貯水池や水路の漏水防止層(ライニング)には板状に形成したアスファルト混合物やシート状のアスファルト系防水材、加熱溶解したブローンアスファルトを散布するなどの工法で用いられる[20]
燃焼用アスファルト
コストの安さから火力発電所富士石油袖ケ浦製油所、JXTGエネルギー大阪製油所など)の燃料として用いられる[21]。化成品メーカーのC重油の代替品として燃料として使用される。
その他の工業用アスファルト
ブローンアスファルトをクラフト紙などの紙で挟み込んだ防湿紙(ターポリン紙)、産油地や産炭地のパイプラインに使われる鋼管の防錆塗料、建築用や自動車用の制振・防音材の原料、家電製品などの電気絶縁材料、建物の軟弱地盤沈下対策として地下杭の表面摩擦抵抗を高めるための塗布剤、シャープペンシルの芯やコークス製造のときに用いる結合材(バインダー)、オフィスの床などに敷かれているタイルカーペットの裏貼材、廃棄物の固化剤、電極用の炭素材料などにも使われる[19]
構造と成分

ストレートアスファルトの化学組成は、アスファルテンとマルテンに大別される[22]。有機媒体であるノルマルペンタンに溶けるかどうかで分類しており、アスファルテンは溶けない成分である[22]。アスファルテンと呼ばれる高分子炭化水素が、マルテンと呼ばれる多環の炭化水素の油やレジンの中にコロイド状に分散している。アスファルテンとは、ヘキサンなどの軽質の炭化水素に溶けない成分で縮合環の芳香族炭化水素が架橋結合して出来た高分子化合物である。マルテンはレジンと油に分けられ[22]、レジンと油分は軽質の炭化水素に溶ける成分である。レジンは比較的融点が高い樹脂状物質で、マルテンのうち、特にレジンが接着性や可塑性を与えて、アスファルトの塑性変形性を左右している[22]

油分

飽和 - パラフィンナフテン (分子量:300 - 2,000)

芳香族 - 芳香族 (500 - 2,000)


レジン - 縮合多環芳香族 (500 - 50,000)

アスファルテン - 縮合多環芳香族の層状構造 (1,000 - 100,000)

分類

アスファルトは、大別すると天然アスファルトと石油アスファルトの2種類に分類される[11][4]
天然アスファルト

天然アスファルトは、自然界で産出される瀝青の代表的な材料物質である[23]。種類には、次のようなものがある。

レイクアスファルト:地下から湧き出して湖のようになったもの[4]

ロックアスファルト:石灰岩や砂岩のような岩石にしみ込んだもの[4]

オイルサンド:砂にしみ込んだもの[4]

アスファルトタイト:岩石にしみ込んだ石油が熱変成を受けてできたもの[4]

レイクアスファルトの産出地として有名なものは、トリニダード・トバゴのピッチ湖(アスファルトの湖)が知られている[23][4]。オイルサンドの産地では、カナダアルバータ州にあるアサバスカ地域が有名で大規模な露天掘りが行われている[22]。アスファルトタイトでは、アメリカ合衆国ユタ州のユインタ盆地で産出されるユインタ石があり、ギルソナイトという品名で黒ワニス塗料の素材として用いられている[22]


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