1990年代の最後には、香港映画に多用されていたワイヤー・アクションを取り入れ、CGも使用した画期的なSFアクション『マトリックス』(1999年)が製作された[39][29]。日本のアニメ的な電脳世界や、武道・東洋哲学を世界観に取り入れた『マトリックス』は、『スピード』(1994年)で成功していたキアヌ・リーブスが主役「ネオ」を演じ大ヒットとなった[39][29]。『マトリックス』では「バレットタイム」という特殊なスローモーション撮影もなされ、これは後継のアクション映画だけでなくゲームやCMにも取り入れられる技術となり、CG技術の普及とともに一般的な俳優のアクション映画出演へのハードルはさらに下がり、大がかりなワイヤー・アクションやグリーンバック合成によるスタントなど多様な表現が可能となった[39]。
また、その『マトリックス』のキアヌ・リーブスのように、元々アクション出身ではない一般の俳優が役作りで武術や格闘技を習ったり、専門家やトレーナーの指示のもとで肉体改造を行い映画へ出演することが一般的となりつつある時代でもあった。アクション映画ではないが『ファイトクラブ』(1999年)のブラット・ピットや、『アメリカンヒストリーX』(1998年)のエドワード・ノートンなどが挙げられる。
一方、1990年代後半にはそうした一般俳優のアクション進出とは裏腹に、1980年代から1990年代前半に隆盛を極めた肉体派俳優の人気に陰りが見え始めるようになった。スタローンは『コップランド』(1997年)ではあえて冴えない警察官を演じるなど肉体派アクションからの脱却を図り、シュワルツェネッガーは1997年に心臓手術を受けたことで映画のオファーが一時的に全て途絶えてしまう。また、ヴァンダムは1995年にジム・キャリーと同額のギャラを要求したためハリウッドのブラックリストに載ってしまい、ハリウッドから干されたことでその後10年以上に渡りビデオスルー作品に追いやられ[40]、同様にセガールもビデオスルー作品が多くなるなど、肉体派アクション俳優全般のキャリアが低迷することとなった。肉体派アクションの人気が低下した理由について、成人を対象としたR指定のアクション映画は元々大きなビジネスではない狭いマーケットであったため、『ジュラシック・パーク』(1993年)などといった、CGを売りにしたPG-13指定のファミリー向けの超大作に観客を奪われたという説がある[41]。
2000年代から2020年代ミラ・ジョボビッチ(2000年)
2000年代以降には、CGなどの撮影技術の向上・普及も相まって女優のアクション進出も増えた[42]。
2000年には『チャーリーズ・エンジェル』が公開され、キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューらがアクションに挑戦した。2001年にはアンジェリーナ・ジョリー主演の『トゥームレイダー』が公開され、アクション俳優としてもブレイクした。
日本のカプコンのゲーム『バイオハザード』を映画化した『バイオハザード』(2002年)でゾンビたちと闘うヒロイン「アリス・アバーナシー」を演じたミラ・ジョボビッチがアクション俳優の地位を確立し、2017年の最終章まで「バイオハザード・シリーズ」が製作された[42][43]。
女優ではユマ・サーマンを主演に、日本の任侠映画や香港のカンフー映画、イギリスの西部劇『女ガンマン 皆殺しのメロディ』(1971年)をオマージュしながら日本刀によるアクション・シーンを駆使した『キル・ビル』(2003年)もヒットした[42][44][20]。