1990年代に入ると前述のブルース・ウィリスのように、元来はアクション俳優ではなかったキアヌ・リーブスもパトリック・スウェイジとのダブル主演の『ハートブルー』(1991年)や『スピード』(1994年)の主演で成功した[28]。『スピード』は日本のパニック映画『新幹線大爆破』(1975年)の設定をモチーフにしたもので、公道でのカー・アクション撮影が可能なアメリカならではの臨場感あふれるシーンと、マッチョ系ではないがキアヌの清潔感のあるSWAT隊員役が魅力なって大ヒットした[28][注釈 6]。キアヌは少年時代にSonny Chiba(千葉真一)のアクション映画に心酔しアクション俳優に興味を持っていた[29]。
1995年の『リービング・ラスベガス』で第68回アカデミー賞の主演男優賞を受賞をした経験がある演技派のニコラス・ケイジも、往年のスパイ・アクション俳優のショーン・コネリーと共演した『ザ・ロック』(1996年)で好演し、キアヌ・リーブス主演の『スピード』同様に、必ずしも肉体派ではないが絶体絶命のピンチを頭脳戦でも切り抜けていく主人公のアクションが人気となった[1][30]。この作品でアクション俳優として目覚めたニコラス・ケイジは『コン・エアー』(1997年)でも奮闘する主人公を演じ、『フェイス/オフ』(1998年)では共演者のジョン・トラボルタと顔が入れ替わる一人二役(善と悪)を演じ、白い鳩が舞う教会での迫真のガン・アクションで「ジョン・ウー節」を好演した[26]。
一方で、1990年代前半には従来型の「ワンマンアーミー」映画もまだまだ根強い人気があり、セガール主演で「沈黙シリーズ」第一弾となった『沈黙の戦艦』(1992年)や、ヴァンダム主演でジョン・ウー監督のハリウッド進出作である『ハード・ターゲット』(1993年)、ジェームズ・キャメロン監督とシュワルツェネッガーが三回目のタッグを組んだ『トゥルーライズ』(1994年)等がヒットしている。
またこの頃、シルヴェスター・スタローンも山岳アクション『クリフハンガー』(1993年)で山岳救助隊員役を好演し、Tシャツ一枚で氷壁をよじ登り、雪山で武装強盗団の一味と勇敢に闘うマッチョ芸の顕在ぶりを見事に披露した[31]。この映画では世界的なクライマーたちがスタントマンで参加した[31]。
『沈黙の戦艦』(1992年)でスティーヴン・セガールと共演し、サスペンス・アクション『逃亡者』(1993年)ではハリソン・フォードと共演し助演ながらもハリソン・フォードを追い続ける連邦保安官役で存在感を発揮していたトミー・リー・ジョーンズは、ウィル・スミスとのコンビで主演を果たしたSFアクション・コメディー『メン・イン・ブラック』(1997年)ではMIBエージェント「K」役が当り役となり、「メン・イン・ブラックシリーズ」は人気シリーズとなった。
シルヴェスター・スタローン主演のヒット作『デモリションマン』(1993年)で敵役を演じたウェズリー・スナイプスもアクション俳優として注目を集め、トミー・リー・ジョーンズと共演した『追跡者』(1998年)では無実の罪で逃亡する元CIA特殊工作員を演じて好評となり、同じく1998年公開の『ブレイド』はシリーズ化されるなど人気を博した。