スタローンが「ワンマン・アーミー」(1人対多勢の戦闘物)の『ランボー』(1982年)でブレイクした同時期には、オーストリアからアメリカに移住し、「ミスター・オリンピア」のチャンピオンから俳優に転身したアーノルド・シュワルツェネッガーも前述の英雄ファンタジー『コナン・ザ・グレート』(1982年)のヒットを経て、出世作のSFアクション『ターミネーター』(1984年)のアンドロイド「T-800」役でブレイクした[23][17]。続いてヒットした「ターミネーターシリーズ」の2作目『ターミネーター2』(1991年)では守る側のヒーロー・アンドロイド役となり、ロバート・パトリックが好演した最新型アンドロイド「T-1000」との死闘を繰り広げた[23]。シュワルツェネッガーは「ワンマン・アーミー」の『コマンドー』(1985年)での単独ヒーローでも人気者となった[1][17]。
シュワルツェネッガーは、ハリウッド映画界に本格的な肉体改造や筋肉トレーニングを持ち込み、「肉体派俳優」という存在価値をスクリーン上で認識させ、見た目の説得力を付加することで人間離れした無敵の強さを持つ新たな超人ヒーロー像を数多くのアクション映画で演じて、ライバルの「ランボー・シリーズ」のスタローンとともに、1980年代を代表する二大アクション俳優となった[1][17]。『デルタ・フォース』(1986年)でのチャック・ノリスジャン・クロード・ヴァンダムスティーヴン・セガール(2011年)
同時期には空手のチャンピオンで、ブルース・リーの敵役を演じたこともあるチャック・ノリスも主演作『地獄のヒーロー』(1984年)がヒットし「地獄のヒーローシリーズ」が人気シリーズとなった。
1980年代後半には同じくマーシャルアーツ(武術)のたしなみのある格闘家・武道家の俳優が多く登場し、『レッド・スコルピオン』(1989年)などに主演したドルフ・ラングレンや、『キックボクサー』(1989年)などがシリーズ化したジャン・クロード・ヴァンダムが人気となり、『刑事ニコ/法の死角』(1988年)がヒットした合気道家のスティーブン・セガールも活躍した[13]。
この1980年代から1990年代前半には、一般俳優が格闘やアクションに挑戦することはあまりなく、アスリートや武道・格闘経験のある体育会系出身者が“アクション俳優”として主役を演じることが多かった[1]。ドルフ・ラングレンも「昔(1980年代)は実際のアスリートや格闘家でなければアクションを演じられなかった」と答えている[24]。
一般俳優によるアクション演技への参入ブルース・ウィリス(2007年)
その一方で、それまでアクション専門ではなかったテレビドラマ出身のコメディ系のブルース・ウィリスが『ダイ・ハード』(1988年)を大ヒットさせ、一般俳優のアクションへの門戸を開いていった[1][25]。テロリストらと孤軍奮闘する刑事「ジョン・マクレーン」役には当初、シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーにオファーが行っていたが実現せず、ブルース・ウィリスのキャラクターに合わせて超人でなく普通の男的な主人公像に変更されたのが逆に功を奏し、2010年代まで続く人気シリーズとなり彼の代名詞になった[25][注釈 5]。