なお、奄美大島から沖縄本島にはシリケンイモリとイボイモリが分布する。 全長は10cm前後で、2対4本の短い前足及び2対5本の後ろ足と長い尾を持つ。サンショウウオ類
形態
フグと同じテトロドトキシンという毒があり、腹の赤黒の斑点模様は毒を持つことを他の動物に知らせる警戒色になっていると考えられている。陸上で強い物理刺激を受けると横に倒れて体を反らせ、赤い腹を見せる動作を行う。(動画) アカハライモリ イモリは脊椎動物としては、特に再生能力が高いことでも知られている。たとえば、尾を切ったとしても本種では完全に骨まで再生するほか、また四肢を肩の関節より先で切断しても指先まで完全に再生し、さらには目のレンズも再生することができる[3]。この性質は教科書にも記載されている。多くの脊椎動物ではこれらの部位は再生できない。ちなみに、尾を自切して再生することが知られているトカゲでも、尾骨までは再生しない。 イモリの再生能力は、ヒトの皮膚治療など再生医学への応用を視野に入れた研究対象になっている[4]。 なお、この再生能力の高さは、生態学的研究の立場からは障害になる場合がある。個体識別をするためのマーキングが困難となるためである。一般に小型の両生類や爬虫類では様々なパターンで足指を切ってマーキングしたり個体識別(トークリッピング)を行うが、イモリの場合には簡単に再生してしまう。尾に切れ込みを入れても、傷が浅ければすぐに再生する。さらに札などを縫いつけても、やはり皮膚が切れて外れやすく、その傷もすぐに癒えてしまう。 水田、池、川の淀みなど流れのない淡水中に生息する。繁殖期以外は水辺の近くの林や、クズなどの茂る草地の水気の多い枯れ草の下などに潜むことが多い。本種の成体は繁殖期以外も水中で生活することが多い。ただし雨の日には水から出て移動することもある。冬は水路の落ち葉の下や水辺近くの石の下などで冬眠する。 ユスリカやミズムシ類などの昆虫を中心に、他の両生類の卵や幼生といった小型生物を捕食する[5]。モリアオガエルやアベサンショウウオなど、希少な両生類の生息地では厄介者とされる[6]。 和名の「井守」は、野井戸の中にも生息するので「井戸を守る」に由来するという説や、井は田んぼを意味し、水田に生息することから「田を守る」との意味に由来するという説がある。 名前がヤモリと似ている。しかし、ヤモリは爬虫類であること、人家の外壁などに生息し一生を通じて水中に入ることがないこと、変態をしないことなどが、イモリとの相違点である。 春になり気温が上昇し始めると、成体が水中に姿を現す。オスがメスの行く先に回り込み、紫色の婚姻色を呈した尾を身体の横まで曲げて小刻みに振るわせるなど複雑な求愛行動を行う[7]。このときにオスが分泌するフェロモンであるソデフリン メスは、寒天質に包まれた受精卵を水中の水草の葉にくるむように1つずつ産卵する。流水に産卵する種類がいるサンショウウオ類に対し、アカハライモリは水たまり、池、川の淀みなど流れの無い止水域で産卵・発生する。 卵から孵った幼生はアホロートルのような外鰓(えら)があり、さらにバランサーという突起をもつ。幼生ははじめのうちは足も生えていないが、やがて前後の脚が生える。ただしカエル(オタマジャクシ)はまず後脚から生えるが、イモリは前脚が先に生える。外鰓があるうちは水中で小動物を食べて成長するが、口に入りそうな動くものには何にでも食いつくため、共食いすることもある。 幼生は十分成長すると、外鰓が消えて成体と同じような形の幼体となり、上陸する。幼生の皮膚は滑らかだが、幼体の皮膚は成体と同じくざらざらしており、乾燥には幾分抵抗性がある。そのため、上陸した幼体を無理に水に戻すと、皮膚が水をはじいて気泡がまとわりつき、銀色に見えることがある。幼体は、森林内などで小さな昆虫や陸棲貝類、ミミズなどの土壌動物を捕食して3-5年かけて成長し、成熟すると再び水域に戻ってくる。 田園地帯や森林に囲まれた水域では目にする機会も多いが、市街地などの護岸された水域では少ない。市街地での個体数の減少に伴い、2006年には環境省レッドリストでも準絶滅危惧種として記載され、埼玉県のように条例で捕獲を規制する自治体も現れた。他地域でも絶滅が危惧されている個体群は少なくない。 準絶滅危惧(NT)(環境省レッドリスト)[8]
再生
生態
繁殖行動
生活史
人間との関係
ペット
一般的に有尾類は温度変化に弱く、摂餌行動が鈍く、人工環境での長期飼育が困難な種が多い。また、現地で法的に保護されている場合も少なくない。しかし日本のアカハライモリやシリケンイモリは温度変化に強く、きわめて貪欲で、飼育に適し、個体数が多く特に保護されていなかったため、ペットとして日本のみならず欧米でも人気が高まった。餌も数日に一度、エアーもいらない、数十年生きるなど初心者でも簡単に飼える。ただし21世紀初頭の時点では先述のように保護地域も設定されるようになった。また、産地不明の飼育個体が逃げだしたり個体を遺棄したりすることによる地域個体群への遺伝子汚染が懸念されている。
研究対象
イモリ類は胚発生の実験材料としてもよく用いられる[2]。特に、シュペーマンが胚域の交換移植実験などを通じて、形成体
その他の文化
かつて日本では、イモリの黒焼きはほれ薬として有名であり、販売もされていた[9][10]。竹筒のしきりを挟んで両側に雄雌一匹ずつを分けて入れ、これを焼いたもので、しきりの向こうの相手に恋焦がれて心臓まで真っ黒に焼けると伝える。実際の成分よりは、配偶行動などからの想像が主体であると思われるが、元来中国ではヤモリの黒焼きが用いられ、イモリの黒焼きになったのは日本の独自解釈による。井原西鶴『好色五人女』巻2、落語『いもりの黒焼き』、映画『いもりの黒焼 (映画)』や『千と千尋の神隠し』などに、イモリの黒焼きが登場する。
脚注^ Yoshio Kaneko, Masafumi Matsui 2004. ⇒Cynops pyrrhogaster. The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.3. < ⇒www.iucnredlist.org>. Downloaded on 06 May 2015.
^ a b 蓮沼至 (2018). “アカハライモリ”