投票権を持つ映画芸術科学アカデミー会員は、大部分がハリウッドの業界関係者による編成であり、新聞記者や映画評論家など公平な立場で判断できる分野の会員が少ないのが特徴。各賞の投票についても、例えば「アカデミー監督賞」であればハリウッドで働く映画監督の会員がノミネート作品選定に投票するなど、賞に応じた業務に携わる会員が担当する(もっとも、作品賞のノミネートおよび各賞ノミネート発表後の本選の投票は全会員が行うことができるので、最終的には各部門に携わる者以外の意向が結果に反映される)[17]。 最終投票は授賞式の一週間弱前に締め切られ集計されるが、結果は厳重に封印されて、大手会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の金庫に保管され、結果書類は当日、事務所の職員2人が授賞式会場に直接持ち込む(生中継では、会場に入っていく会計事務所の職員が映されることもある)。賞の授与担当プレゼンターがステージで開封するまでは、外部へは一切知らされない[17]。 受賞結果について、当初は報道の関係上マスコミには事前通達してあったが、1939年に『風と共に去りぬ』が作品賞を受賞した際に、一部新聞が主宰者との協定を破って前日に抜け駆け報道をしたため、翌年よりPwCの管理するシステムとなり、今日に至る。 アカデミー賞はハリウッドの映画関係者が選考を行うことから、各賞の選出については、アメリカの国情や世相などが色濃く反映され、必ずしも芸術性や作品の完成度の高さでは選ばれない。例えばカンヌ国際映画祭などの著名な国際映画祭で大賞を受賞した作品が、アカデミー賞ではノミネートされないことがある。ゆえに、どうしても選出作品の足並みが揃ってしまう他の国際映画祭では見られない、独特の傾向と盛り上がりを見せる映画賞である[要出典]。 授賞式は毎年2月の最終もしくは3月の第1日曜日にハリウッドのドルビー・シアターで行われる。会場前を通るハリウッド大通りは、ドルビーシアターを中心に東はカフエンガ通りから西はラ・ブレア通りまで、東西計1マイル(1.6km)程度にわたり、授賞式当日午前からほぼ1日中、招待状を持つ関係者およびロサンゼルス市警察関係以外の車両は一切通行止めとなる。特に会場へ到着するリムジンなどの下車場所となる東側のハイランド通りとの交差点付近からシアター前までの通路は赤い絨毯で装飾されるため、一般に「レッドカーペット」とも呼ばれている。 出席は招待客のみで、チケットの販売は行われておらず、それ以外の客は出席できないので、15時頃までであれば、先述のハイランド通りとの交差点東側まで近寄ることはできるが、交差点手前50m程度の位置で警察官によるセキュリティチェックが行われ、ナイフなど不審物を持つ者は通過が許されない。また交差点付近各方向10m程度の幅はフェンスに設置された黒幕で覆われており、レッドカーペット付近を最短距離で直接見ることは難しい。なお15時以降からは招待客の到着が活発化するため、それ以上の交差点以降の立ち入り自体を一切禁止する。 演技部門のプレゼンター(賞の授与者)は、基本的に前年度の受賞者が反対の性の賞(前年の主演男優賞受賞者が翌年の主演女優賞)に対して行うことが慣例となっている。支払われるギャランティはなく、あくまでも無償奉仕である。 第64回のケビン・コスナー、第66回のクリント・イーストウッド、第67回と第72回のスティーヴン・スピルバーグ、第68回のロバート・ゼメキス、第69回のメル・ギブソン、第80回のマーティン・スコセッシ、第83回のキャサリン・ビグロー、第91回のギレルモ・デル・トロ、第93回のポン・ジュノのように近年は監督賞プレゼンターを前年度の受賞者が担当している。 スピーチは45秒以内と制限されている。これは、第15回に主演女優賞を受賞したグリア・ガースンが自分の生い立ちまで話し始めてしまい、実に5分半もスピーチしたためである。以来、時間制限が導入され、退出を促すBGMも行われているが、第73回のジュリア・ロバーツ[注 2]、第74回のハル・ベリー[注 3]、第94回に国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』監督の濱口竜介など、感激のあまり制限を無視する人もいる[注 4][18][19]。第90回ではスピーチが最も短かった人にKAWASAKIのジェットスキーとレイクハバスシティ旅行がプレゼントされた。 受賞者には受賞名が刻印されたオスカー像が贈られる。賞金や副賞はなく名誉のみが与えられる。ただしアカデミー賞効果で受賞作がヒットしロイヤリティ収入が増える、次回作での出演料が増える、といった形で結果的に受賞者の収入に影響が出る場合がある。 逆にノミネートされただけで賞を逃した人物には残念賞として、日本でいうところの福袋のようなものが与えられる。袋の中身は服飾品や旅行券、あるいは洗剤やシロップなど、その年によって異なる雑多な物品が入っており、その総額は数万ドル相当にも及ぶ。
情報管理
特色と現状
授賞式第81回授賞式
式典
受賞スピーチ
賞品
エピソード
平均的な授賞式の時間は約3時間半。最長記録は第72回の4時間3分。
授賞式の延期
第10回 - 大雨と洪水により式典が1週間延期された。
第40回 - 1968年4月4日、キング牧師が暗殺される。式典に出席予定だったルイ・アームストロング、シドニー・ポワチエらが葬儀に参列するため、2日延期された。
第53回 - 1981年3月30日、レーガン大統領の狙撃事件が発生。式典で大統領のメッセージを流す予定だったため1日延期された。
第93回 - 当初は2021年2月28日に予定していたが、世界規模で流行が拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で4月25日に延期することを2020年6月15日に発表した[8]。
第10回の授賞式で、舞台公演中だったために式典を欠席していたアリス・ブラディが助演女優賞を獲得した際、“代理人”と称する男性が壇上に上がりオスカー像を受け取ったが、この男性はブラディとは無関係で、そのまま像を持ち去ってしまったという。
第46回(1974年)授賞式の最中、全裸の男が壇上に乱入し、生放送が一時中断されるというハプニングが発生。司会のデヴィッド・ニーヴンが場を取り成したが、2002年の授賞式で主演男優賞に選ばれたエイドリアン・ブロディが、同賞プレゼンターのハル・ベリーと熱烈なキスをする場面が放送されたこと、あるいは2004年2月に第38回スーパーボウルにおいてジャネット・ジャクソンが生放送で歌っている最中に胸を露出する[注 5]といった不祥事があったため、2005年の中継からは5秒遅らせて放送されている。
第89回(2017年)作品賞の発表の際、作品賞のプレゼンターは『俺たちに明日はない』の50周年を記念してウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイがプレゼンターを務め、ステージに立った。
Size:195 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef